元日本レコード保持者が歴代2位「超遅」で高松宮記念V!「カナロア×バクシンオー」究極スプリンターが7歳で遂げた進化
26日、雨中の中京競馬場で行われた第53回高松宮記念(G1)は、団野大成騎手が騎乗したファストフォース(牡7歳、栗東・西村真幸厩舎)が優勝。12番人気の低評価を覆し、人馬ともに初のG1制覇を遂げた。
「こちらが思った以上に進みも良くて、どこかで一息入れたいと思っていたのですが、4コーナーまで上手いことその形になりました」
レース後、団野騎手はそう語ったが、道中は終始ファストフォースを押っ付け気味で勝負所の手応えも決して良くは見えなかった。しかし、直線で馬場が一番いい真ん中に持ち出されると、残り1ハロンを過ぎたところで先頭に。最後はナムラクレアの追撃を1馬身差でしのぎきった。
7歳にしてG1制覇を果たしたファストフォースだが、競走馬として歩んできた道のりは決して平坦ではない。
デビューしたのは遅れに遅れて3歳の6月。同世代のライバルたちがすでに日本ダービー(G1)で死力を尽くした後だった。阪神のデビュー戦で13頭立ての12着に敗れたファストフォースは、6戦未勝利のまま地方に移籍することになった。
脳裏には引退もちらつく中、陣営は地方・門別での出直しを決意。4歳春にダートで4戦3勝の好成績を残したファストフォースは、中央に再転入後は芝のスプリント路線に活路を見いだした。
4歳の夏に自己条件を2連勝すると、5歳夏には3勝クラスからCBC賞(G3)に格上挑戦。全くのノーマークだったが、52kgの軽ハンデと高速馬場を味方に逃げて重賞勝利を飾ったのだ。
「この時のCBC賞は小倉で開催されたのですが、とんでもない高速馬場でした。前残りも顕著で、ハナを取り切った鞍上の作戦が見事に的中。1分6秒0の日本レコード(当時)というオマケ付きでした。当時は父ロードカナロア、母の父サクラバクシンオーという日本競馬を代表する名スプリンター2頭の血が日本レコード樹立を後押ししたともいわれましたね」(競馬誌ライター)
次走の北九州記念(G3)でも2着に食い込んだファストフォース。その後もスプリント重賞で何度か馬券圏内に好走したが、G1では歯が立たなかった。
そんなファストフォースに転機が訪れたのは昨年の秋。団野騎手とのコンビ結成がきっかけで、控える競馬を試すようになっていた。年齢から来るズブさもあって、それまで貫いていた先行押し切りのスタイルから徐々に脱却を図ったことも、高松宮記念激走の伏線だったといえるだろう。
ちなみに極悪の不良馬場で記録した高松宮記念の走破タイムは1分11秒5。これは同じく不良馬場で行われた9年前の1分12秒2に次ぐレース史上2番目に遅い時計だ。2年前に自身がマークしたCBC賞の勝ち時計と比べると、なんと5秒5も遅かった。
かつて超高速馬場で日本レコードを樹立したスピード馬が、極悪馬場でG1を制覇するとは誰が想像しただろうか。今年の高松宮記念は競馬の奥深さを教えてくれるレースでもあった。
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