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武豊とトゥザヴィクトリー「幻想」の終焉…世界を驚かせた2着から22年、ドバイワールドCに戻ってきた「当たり前」

武豊とトゥザヴィクトリー「幻想」の終焉…世界を驚かせた2着から22年、ドバイワールドCに戻ってきた「当たり前」の画像1
撮影:Ruriko.I

 25日深夜、ドバイのメイダン競馬場で行われたドバイワールドC(G1)は、日本のウシュバテソーロ(牡6歳、美浦・高木登厩舎)が勝利。昨秋から続く連勝を5に伸ばし、世界の頂点に立った。

 1996年の第1回ドバイワールドCにライブリマウントが挑戦してから27年間、実に延べ45頭の日本馬が世界の頂点に挑戦した。過去にヴィクトワールピサが勝利した例があるが、ダート開催ではこれが日本初勝利。ウシュバテソーロのオーナーサイドからは「勝てば凱旋門賞(仏G1)と思っていた」と、早くもさらなるビッグプランがぶち上がっている。

 ただ、高木調教師が「1着でゴールした瞬間は、最高の気持ちでした」と感無量のコメントを残している通り、今回の勝利も芝の世界最高峰・凱旋門賞制覇と並ぶ紛れもない歴史的な1ページと言えるだろう。

 日本競馬にとって悲願となっているフランスの凱旋門賞と同じく、ドバイワールドCもかつては惨敗の歴史だった。

 日本のダート界の頂点に立った現役最強馬が何度も挑戦したものの、悉く壁に跳ね返された。中には本来の力を全く発揮できず、信じられないような大敗を喫したことも珍しくない。これは凱旋門賞でもしばしば見られるケースでもある。そんな中でのウシュバテソーロの勝利は、まさに偉業と言えるはずだ。

 ただ一方で昨年、一昨年も日本から唯一参戦したチュウワウィザードが3着、2着と善戦するなど、惜しい結果が続いていた。今年にしてもテーオーケインズが4着、クラウンプライドが5着に善戦しており、掲示板(5着以内)を日本勢3頭が占めたということになる。

 そういった意味で、今回の結果はドバイワールドC挑戦の歴史の集大成ともいえるが、長く苦戦を強いられてきた日本のダート馬たちが、何故ここに来て上位争いを演じられるようになったのだろうか。

ドバイワールドCに戻ってきた「当たり前」とは

 1つのヒントとして、今年のドバイワールドCには出走馬15頭の半数を超える8頭の日本馬が参戦したが、極端に明暗が分かれている。詳細は下記の通りだ。


ウシュバテソーロ 4番人気→1着
テーオーケインズ 8番人気→4着
クラウンプライド 10番人気→5着


パンサラッサ 2番人気→10着
ジオグリフ 5番人気→11着
カフェファラオ 9番人気→12着
ヴェラアズール 7番人気→13着
ジュンライトボルト 6番人気→15着
※人気はJRAの馬券発売に基づくもの

 今年挑戦した8頭はG1勝ちのないクラウンプライドこそ10番人気だったが、すべて一定のチャンスがある強豪ばかりだった。しかし、ここまではっきり明暗が分かれたことには実力や運以外の要素があるのかもしれない。

「人気を下回って惨敗してしまったパンサラッサ(ドバイターフ)、ジオグリフ(皐月賞)、ヴェラアズール(ジャパンC)は、いずれも芝G1の勝ち馬。一定のダート適性はあったのかもしれませんが、やはり本領発揮は芝でこそという気がします。前の馬から23馬身も遅れる最下位だったジュンライトボルトはノーカウントでもいいと思いますが、この馬もかつては芝で3勝クラスを勝ち上がってオープン入りした馬です。

一方で、テーオーケインズやクラウンプライドは、デビューから一貫してダートを使われてきた真正のダート馬。ウシュバテソーロこそ芝で走っていましたが、2勝クラスを勝ち上がるのが精一杯の存在でした。直近の活躍を見れば、ダートで本領発揮できたのは明らかです」(競馬記者)

 一見ドバイワールドCがダートで行われている以上、当たり前の話にも聞こえる。ダートのレースなのだから、芝適性よりもダート適性を持った馬が上位に来るのは当然だからだ。

 だが一方で、前出の記者からはかつてのドバイワールドC好走の鍵を握っていたのが「芝適性だった」という興味深い話が聞けた。

「日本の競馬関係者に強烈なインパクトを与えたのが、第6回(2001年)の武豊騎手とのコンビで挑戦したトゥザヴィクトリーによる2着でした。

当時、ダートのトップホースが軒並み掲示板にも載れずに大敗していた中で、2着という結果はまさに奇跡的。何せ、次に日本馬がドバイワールドCの掲示板に載ったのは2006年のカネヒキリ(4着)で5年も掛かりましたからね。

しかし、一方でトゥザヴィクトリーは芝のG1馬(エリザベス女王杯)。直前のフェブラリーS(G1)で3着に敗れていたように、決して日本を代表するダートの実力馬とは言えない存在でした」(同)

 記者曰く、トゥザヴィクトリーがドバイワールドCで当時の日本最先着となる2着に善戦した背景には、時計の速さがあったという。

 本馬が2着した際の勝ち馬キャプテンスティーヴが記録した2:00.40は、昨年末にウシュバテソーロが勝った東京大賞典(G1)の2:05.0より4.6秒も速い。というよりも、当年の皐月賞(G1)の勝ち時計が2:00.3(アグネスタキオン)だったことを踏まえると、当時のドバイワールドCの勝ち時計は日本のダートよりも芝の方が近かったことになる。

 トゥザヴィクトリーが好走できた要因の一つには、日本の芝に近いドバイ特有の時計の速さがあったというわけだ。

「ただ、当時のドバイワールドCは今のメイダンではなく、ナドアルシバ競馬場で行われていました。メイダンのダートで行われるようになったのは2015年からですが、以降9回の開催で勝ち時計が2分2秒を切ったのは2018年と2021年のみ。一方でナドアルシバは14回の開催で11回が該当。同じダート2000mのレースですが、時計の出方には明らかに違いがあります。

そういった意味で、2015年以降のドバイワールドCはある意味『別物』になったといえるでしょう」(同)

 ちなみにウシュバテソーロが歴史的勝利を飾った今年のドバイワールドCの勝ち時計は2:03.25。これは昨年の帝王賞(G1)の2:03.3とほぼ変わらないタイムだ。

 つまり、近年のドバイワールドC好走の鍵はかつての芝適性ではなく、ダート適性にシフトしたと考えるべきだ。これは今年挑戦した日本馬8頭の明暗からも明らかだろう。同時に来年以降の日本のダートトップホースたちの活躍を示唆するものでもあるはずだ。

GJ 編集部

GJ 編集部

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