【桜花賞(G1)展望】2歳女王リバティアイランドに武豊のライトクオンタムが挑戦状!
9日、阪神競馬場では牝馬クラシック初戦の桜花賞(G1)が芝1600mを舞台に開催される。
今年は2歳女王の1強ムードも漂うが、過去10年の1番人気馬は「1-3-1-5」とイマイチ。人気に応えたのは2014年のハープスターまで遡らなければいけない。9年前、そのハープスターの鞍上にいたのは、今年の大本命リバティアイランド(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)に騎乗する川田将雅騎手だった。
昨年末の阪神ジュベナイルF(G1)を川田騎手とのコンビで制したリバティアイランドは、“怪物”ドゥラメンテの産駒。父を彷彿とさせる強烈な末脚が最大の武器だ。
昨夏の新潟で初陣を飾ったが、そのレースで叩き出した上がり3ハロン時計は驚愕の31秒4。2歳新馬による超スローな展開だったとはいえ、他馬とは搭載しているエンジンが違うところを見せつけ、その時点で牝馬クラシック候補の最右翼に名乗りを上げた。
そのまま連勝街道を歩むかと思われたリバティアイランドだが、2戦目のアルテミスS(G3)でまさかの黒星を喫してしまう。単勝オッズ1.4倍の圧倒的人気を集めた一戦は、直線でなかなか進路が開かず。最後はスムーズに外を伸びたラヴェルの後塵を拝した。
そして迎えた2歳女王を決める一戦でも1番人気に推されたが、単勝オッズは2.6倍にとどまった。道中ちょうど中団の位置を取ると、川田騎手はアルテミスSの失敗も踏まえて勝負所で外々を通る安全策。4角で先行集団を射程に入れると、直線長くいい脚を使って、2着馬に2馬身半差をつけた。
前走後はノーザンファームしがらきで調整が進められ、本番の1か月前に栗東に帰厩。大一番に向けて坂路・CWコース併用で追い切りを重ねている。
前走後の勝利騎手インタビューで川田騎手が「気持ち良く走りさえしてくれれば」とコメントしていたが、リバティアイランドにとって最大のライバルは他でもない本馬自身だろう。ぶっつけ本番で臨む今回も、この馬のリズムで走ることができれば戴冠の可能性は極めて高い。
ただし、アルテミスSの例を持ち出すまでもなく、枠や馬場、展開などに左右されるのが競馬の難しいところ。逆転があるとすれば、キャリア2戦ながらどんな競馬にも対応できそうなライトクオンタム(牝3歳、栗東・武幸四郎厩舎)がその筆頭候補だろう。
名種牡馬ディープインパクトが残した数少ない最終世代の1頭が、デビューから2連勝を飾って牝馬クラシック第1弾に駒を進めてきた。
昨秋にC.ルメール騎手を背に東京の新馬戦を逃げ切って初陣を飾ったライトクオンタム。2戦目のシンザン記念(G3)で武豊騎手に乗り替わってクファシルに次ぐ2番人気に支持された。しかし、スタートで出遅れ、道中は7頭立ての5番手を追走。直線で外に出されると、逃げ込みを図ったペースセッティングをゴール前で捉えた。初戦とは違い控える競馬で牡馬相手に結果を残したことで評価を一気に上げている。
ただ、その日の馬場は外伸びで、トラックバイアスが味方した面も否めない。また、2戦とキャリアは浅く、多頭数競馬も経験していないため、フルゲートで揉まれた時に脆さを見せる可能性もゼロではないだろう。
鞍上の武騎手は桜花賞を通算5勝している名手。ただし、ダンスインザムードで制したのが最後で、05年以降は4度の2着があるものの15連敗中と6勝目が遠い。弟・幸四郎師との兄弟G1制覇をディープインパクトのラストクロップで飾ることができるか。
リバティアイランドとライトクオンタムに続く3番手集団は混戦模様。どの馬が2頭の間に割って入ってもおかしくはないが、前走で見せた勝ちっぷりからハーパー(牝3歳、栗東・友道康夫厩舎)が浮上する。
昨年11月の阪神芝2000mでデビューしたハーパーは、初戦で1番人気を裏切って2着に敗れたが、その後2連勝中。2戦目で阪神芝1600mに距離を短縮すると、2番手から直線抜け出して初勝利を収めた。
3戦目のクイーンC(G3)では初の関東遠征を敢行。未勝利戦を勝ったばかりで6番人気の評価だったが、上位3頭がタイム差なしでゴールする激戦を制した。
その前走は道中中団やや前目の5~6番手を追走。手綱を取った川田騎手は「前半からずっと良い形にはならず、苦しい形で進んでいく道中だった」と振り返ったように、密集した馬群の中で終始窮屈な競馬を強いられた。
直線では加速したところで前の馬がよれて急ブレーキをかける大きな不利もあった。それでも、残り300mで進路を見つけるとドゥアイズ、モリアーナという実績馬に競り勝つ勝負根性を披露している。
今回手綱を取るのは、初コンビのC.ルメール騎手。これまで福永祐一現調教師、D.イーガン騎手、川田騎手と全て異なる鞍上を背に好走しており、3歳牝馬特有の乗り難しさはないはず。アーモンドアイ、グランアレグリアという名牝2頭を桜の女王に導いたルメール騎手が3度目の勝利を味わうか。
クイーンCでハーパーと接戦を演じたのがドゥアイズ(牝3歳、栗東・庄野靖志厩舎)だ。クビ差で競り負けた前走も含めてデビューから5戦連続で馬券圏内を確保。勝ち鞍は1つしかないが、勝ち馬と最も着差が開いたのは3着の阪神JFで、0秒4差だった。
ラヴェル(牝3歳、栗東・矢作芳人厩舎)は2歳新馬、アルテミスSともにスタートで出遅れながらも連勝。しかし、3連勝を懸けて臨んだ阪神JFでは大外枠で致命的な出遅れをしてしまい、11着に敗れた。
トライアルをスキップして本番というローテーションはリバティアイランドと同じ。前走の大敗で人気落ちは必至だが、大本命馬に唯一土を付けた馬だけに軽視は禁物だ。
最重要トライアルのチューリップ賞(G2)で切符を手中に収めた3頭にも注目したい。
前哨戦では武騎手を背に好発を決め、マイペースで逃げ切り勝ちを収めたモズメイメイ(牝3歳、栗東・音無秀孝厩舎)。今回は他に逃げ馬もいて易々とは逃げられなさそうだが、3戦3勝のマイル戦なら勝機は十分ある。
そのモズメイメイにハナ差に迫ったコナコースト(牝3歳、栗東・清水久詞厩舎)は、デビュー戦を勝利した後はエルフィンS(L)、チューリップ賞で連続2着に好走。エンジンのかかりが遅い弱点を克服できれば上位争いを演じる力はある。
そのコナコーストとクビ差の3着だったのは、エフフォーリアの半妹ペリファーニア(牝3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)だ。キャリア1戦だったことを考えれば上々の内容で、兄が克服できなかった関西遠征で結果を出したのは大きい。引き続き横山武史騎手とのコンビで大一番に臨む。
この他には、この世代の牝馬では唯一重賞2勝を挙げているキタウイング(牝3歳、美浦・小島茂之厩舎)、フィリーズレビュー(G2)を制したシングザットソング(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)、昨夏の札幌2歳S(G3)を制したドゥーラ(牝3歳、栗東・高橋康之厩舎)なども侮れない。
また、デビュー2戦目の阪神JFで2着したシンリョクカ(牝3歳、美浦・竹内正洋厩舎)は除外対象の1番手だったが、リバーラが右前蹄を痛めたため回避。何とかゲートインにこぎつけそうだ。
G1・2着馬が除外危機という異常に高い出走ボーダーラインを潜り抜けてきた18頭で迎える今年の桜花賞。発走時間は15時40分を予定している。
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