
「騎乗馬未定」から逆転の日本ダービー(G1)滑り込み! 昨年3着・田辺裕信と4着・川田将雅が見せた手腕とプライド

「向正面での選択をミスしました。着差が着差だけに、そこの選択を間違えなければ勝てていたかもしれません」
6日、京都競馬場で行われた京都新聞杯(G2)で2着に終わったダノントルネードの鞍上・西村淳也騎手はそう悔しがった。
2番人気で2着と、最低限の仕事は果たしたといえる結果。だが、目標となる日本ダービー(G1)への出走は黄色信号が灯ったままだ。現在の出走ボーダーは、収得賞金1600万円でマイネルラウレアとシャザーンが18番目の枠を争っている状況。1500万円のダノントルネードが頂上決戦の舞台に立てるかは他力本願となっている。
その一方で、しっかりとミッションを完遂させたのが、リーディングジョッキーの川田将雅騎手だ。
「これで賞金を加算できてダービーに向かえますから、褒めてあげたいですね」
騎乗した1番人気のサトノグランツもまた、ダノントルネードと同じく勝たなければダービー出走は厳しいというギリギリの立場だった。決して簡単なシチュエーションではなかったが、最後は1着から4着までタイム差なしという接戦を勝ち切っての重賞制覇。まさにリーディングジョッキーの貫禄を見せつけるような勝負強さだった。
「最後は3着リビアングラスも合わせて3頭が横一線になる競馬でしたが、川田騎手がサトノグランツの首をグイッと一押し。西村淳騎手が最後まで手綱とムチを併用していたことに対して、川田騎手はムチを使わずに姿勢を低くして両手で馬を押し続けていました。
競輪のゴール前もそうですが、こういった接戦では最後の“ハンドル投げ”がモノをいうことも珍しくありません。西村淳騎手の騎乗も本人が悔やむほど悪くなかったように見えましたが、最後は経験の差が出たのかもしれませんね。
川田騎手としても、皐月賞(G1)で騎乗したダノンタッチダウンがNHKマイルC(G1)へ進んだ影響もあって、ダービーではこれといった騎乗馬が決まっていなかった状況。しっかりと自分の手でお手馬を“(出走)枠”に入れてくる辺りは、さすがに役者ですね」(競馬記者)
そんな京都新聞杯が行われた数分後、今度は東京競馬場を舞台に日本ダービーの優先出走権を懸けた争いが行われた。最後のトライアル・プリンシパルS(L)を制したのは、パクスオトマニカと田辺裕信騎手だ。

「ダービーの優先権は1着だけなので勝ててホッとしています」
前走のスプリングS(G2)では、スタートで出遅れてしまい5着に終わったパクスオトマニカだったが、この日は田辺騎手の「スタートも良く、本来の形で運べました」との言葉通り、ハナに立って自分の形に持ち込んだ。
そこからは田辺騎手の絶妙なペース配分が光った。好スタートから敢然とハナを主張すると、徐々にペースダウン。前半1000m通過62.4秒は、まさに術中にハメたと言っても過言ではないスローペースだ。余力十分の逃げ馬に上がり3ハロン33.6秒で上がられては、後続に成す術はなかった。
「先月の皐月賞で、スプリングSを勝ったベラジオオペラの横山武史騎手がソールオリエンスに騎乗した関係で、代打として抜擢されたのが田辺騎手でした。
しかし、ハイペースに巻き込まれて結果は10着……。ベラジオオペラが横山和生騎手との新コンビで日本ダービーへ挑戦することが発表されたのは、プリンシパルSの数時間前だったと思いますが、ここでしっかりと代わりのダービー切符を掴んでくる辺りは、さすが田辺騎手ですね」(別の記者)
「申し訳ないです」
ダノントルネードのためにも勝たなければならないレースを惜しくも落としてしまった西村淳騎手は、レース後にそう肩を落とした。それは同時に自身初のダービー挑戦、そして初のG1制覇が遠退いてしまったことも意味している。
一方で、騎乗馬未定という厳しい状況を自らの手腕で好転させた田辺騎手と川田騎手は、昨年の日本ダービーで3着アスクビクターモア、4着ダノンベルーガと共にあと一歩で悔しい思いをした2人でもある。役者がそろった感のある今年の日本ダービーも、熱い戦いが待っていそうだ。
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