
「どんなもんだい!」「してやったりの配合」西山茂行オーナー、秋の重賞路線へ「スプリンター」ネロの産駒が“低評価”に反発!
「ブラッドスポーツ」と呼ばれる競馬において、血統は非常に重要だ。特に「距離適性」については血統で語られることも多い。
たとえば、稀代のスプリンター・サクラバクシンオーの産駒は、現役時代の父と同様に距離に限界があった。JRAの平地重賞42勝のうち実に40勝がマイル以下。残り2勝は1800mで、2000m以上の距離で重賞を勝つことはできなかった。
キタサンブラックやドゥラメンテのような距離万能型の種牡馬も中にはいるが、短距離血統の種牡馬がクラシックディスタンスで活躍する産駒を出す確率はかなり低いのが現実である。
しかし、そんな固定観念を打ち砕く存在が誕生しようとしている。
3日、東京競馬場で行われたのは芝2400mの稲城特別(1勝クラス)。JRAでは、この日から3歳馬と古馬の混合戦がスタートし、このレースに出走した4頭の3歳馬が上位4番人気までを独占していた。
そんな中、3歳馬の中で最低評価の4番人気だったのがニシノレヴナント(セ3歳、美浦・上原博之厩舎)だ。
レースは序盤からゆったりとした流れ。ニシノレヴナントと大野拓弥騎手はしっかり折り合いをつけて中団の外目4番手を追走した。3~4コーナーでジワリと3番手に進出すると、最後の直線は同じく中団から競馬を進めたアームブランシュとの一騎打ち。残り200mを切ったところでニシノレヴナントが先頭に立つと、そのまま押し切って最後はアームブランシュに半馬身の差をつけた。
驚いたのはニシノレヴナントの父がネロだったことだ。
「スプリンター」ネロの産駒が“低評価”に反発!
ネロは2010年代に主にスプリント路線で活躍。G1勝利はないが、16-17年の京阪杯(G3)を連覇したほか、千直のアイビスサマーダッシュ(G3)2着、交流重賞の東京盃(G2)2着など、芝ダート問わず1200m以下の短距離を主戦場にしていた。
そんなネロ産駒のニシノレヴナントは芝1800mでデビュー。初戦は6着に敗れると、ダートや芝の1600mも使われたが勝ち上がることができなかった。次は父が活躍した1200mと思いきや、デビュー5戦目に陣営が決断したのは、思いもよらぬ距離延長だった。
ニシノレヴナントは今年2月に東京・芝2400mの未勝利戦を“一発回答”で勝利。スピード自慢で鳴らしたネロの産駒が長距離戦を勝利したことは、ちょっとした話題にもなった。その後は果敢に青葉賞(G2)に挑戦したが、最後の直線で致命的な不利もあって9着。改めて自己条件の1勝クラスから出直しを図ったのが今回である。
出直しの一戦で2勝目を挙げたレース、会心の勝利を見届け「どんなもんだい!」とツイートしたのは、他でもないニシノレヴナントを所有する西山茂行オーナーだった。
リンク先の自身のブログに「デュプリシトの3×4のレアなクロス。してやったりの配合です」と記した西山オーナー。ニシノレヴナントの血統表を見ると、サンデーサイレンスの3×4に加えて、確かにデュプリシトの3×4のクロスがある。
「デュプリシトは、西山牧場が1980年代後半にアメリカから輸入した繁殖牝馬で、ニシノフラワーの母としても知られています。実はニシノレヴナントの3代母がニシノフラワー、そして西山オーナーの所有馬でもあるネロの母ニシノタカラヅカの母がデュプリシトなんです。
西山オーナーは『狙ってデュプリシトの3×4のクロスを作りました』『辿れば2400勝てる血筋です』ともツイート。青葉賞後のブログには『秋には重賞戦線へ』と意気込みを綴っています。ただし、ニシノレヴナントはセン馬のため、セントライト記念(G2)や神戸新聞杯(G2)といったトライアルには出走できても、本番の菊花賞(G1)には出走できません。
長距離レースは数も限られるため、有言実行には一戦一戦が非常に重要。そういう意味でも稲城特別を好内容で勝利した意味は大きいと思います」(競馬誌ライター)
生粋のスプリンターだったネロの産駒が長距離重賞を賑わす未来はあるのか。今後も“西山オーナーの結晶”ニシノレヴナントの動向には注視したい。
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