「やってしまった」絶好調D.レーンに迫る暗い影…JRA「新ルール」に適応できず、来年の日本参戦を懸けた薄氷のラストウィークへ
先週、日本の“ダービージョッキー”になったD.レーン騎手が今週も絶好調だ。
4日、5Rの新馬戦(芝1600m)はボンドガール(牝2歳、美浦・手塚貴久厩舎)が勝利。デビュー戦を白星に導いた若き豪州の天才騎手は「競馬の仕方も、初めてとは思えないほどです」と相棒を絶賛している。
昨年のクラシックを賑わせたダノンベルーガの半妹で、所属はソールオリエンスなどで今を時めく手塚貴久厩舎。兄の2歳時はデビュー勝ちだけだったが、早期デビューに成功した妹は2歳戦を大いに盛り上げてくれそうだ。
来週の騎乗で今回の短期免許期間を終えるレーン騎手にとっては、後ろ髪を引かれる思いに違いない。この日の新馬戦と同じ1600mの桜花賞(G1)はもちろん「新馬とは思えないくらいにマナーがプロフェッショナル」とボンドガールの落ち着きも褒めていただけに、さしずめ「来年のオークス(G1)で会いましょう」といったところだろうか。
なお、レーン騎手は1番人気のバスターコールに騎乗した次の新馬戦も勝利して、今年30勝に到達。4月から2か月足らずの参戦でリーディングトップ10に迫るなど、驚異的な勢いで勝ち星を量産している。勝率、3着以内率といったところはリーディングトップの川田将雅騎手に匹敵する数値だ。
来週の騎乗を最後に一時帰国することは日本のファンだけでなく、関係者にとっても痛手だろう。デビュー戦を快勝したボンドガールを始め、有力馬を抱える多くの陣営が豪州の名手の再来日を心待ちにすることになるはずだ。
しかし、その一方で「来年、レーン騎手は日本で見られないかも」という話が浮上しているから驚きだ。
「実はレーン騎手の制裁点が『ヤバいこと』になってまして……。短期免許で騎乗する外国人ジョッキーは期間中の制裁点が15点に到達すると、本来3か月間である来期の短期免許期間が2か月に短縮。30点になると短期免許自体が認められないことになってしまいます。
レーン騎手はすでに24点で、来年は最大でも2か月間しかJRAで短期免許を受けることができません。それだけでなく、もし30点を超えると仮にボンドガールが桜花賞やオークスに出走しても騎乗できないことになってしまいます」(競馬記者)
レーン騎手といえば、ソダシとのコンビで参戦した先月のヴィクトリアマイル(G1)でスタート直後に斜行。被害を受けたナミュールの横山武史騎手が「不完全燃焼です。あのような不利をくらっては力を発揮できない。落馬にまで至らなくてよかった」と不満を露わにするなど、後味の悪いレースになってしまったことを覚えているファンも多いはずだ。
だが、レース後にJRAから下された処分は騎乗停止などではなく、過怠金5万円。その一件だけで制裁点が15点を超えるはずはないだけに、豪州の名手に一体何が起こっているのだろうか。
「レーン騎手の主な制裁はムチの使用によるものです。これまでは連続10回まで使用が認められていましたが、今年から5回にルール変更。(レーン騎手の母国)豪州と大きな違いがあるため、関係者の間では来日前から懸念されていたのですが、2か月足らずで5回もオーバーしてしまうなど、案の定大苦戦しています。このままあと1回、ムチで制裁を受ければ30点に到達することになるはずです」(同)
JRAは昨秋、本年度の競馬開催日割案を発表する際、これまで10回まで認められていた連続したムチの使用を連続5回までとすることを発表。世界基準に歩調を合わせた格好だが、ジョッキーたちへの影響が懸念されていた。
「レーン騎手にとって、5度目のムチ制裁を受けてしまったのが先月27日でした。葉山特別(2勝クラス)で1番人気だったカナテープに騎乗していたのですが、最後は2番人気のモズゴールドバレルとの競り合いに。
ムチを使いながら必死に抵抗したレーン騎手でしたが、5回を超えて6発目を打った際、明らかに『やってしまった』というようなアクションがありました。結果的に、最後はクビ差負け。もし昨年同様10回までOKだったら、結果は変わっていたかもしれませんね」(同)
「直線はスペースができるまで時間がかかりましたが、素晴らしい瞬発力で抜け出してくれました」
この日、見事なデビュー勝ちを決めたボンドガールへの賛辞を惜しまなかったレーン騎手。コメント通り、最後の直線でややスムーズさを欠いたが、土壇場でのムチの使用はきっちりと5回で止めていた。
今後の日本参戦を懸けた“薄氷の騎乗”は、あと1週だ。
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