「悲しいです」悲運の“裏切り女王”の遠い春…G1で1番人気2回、2番人気2回、3番人気1回「大器」の待たれる完全燃焼
4日に行われた安田記念(G1)は、4番人気のソングライン(牝5歳、美浦・林徹厩舎)が勝利。昨年に続く連覇を飾り、改めて現役最強マイラーの称号を手にした。
これで前走のヴィクトリアマイル(G1)に続く、3つ目のタイトルを手にしたソングラインは、歴史的な名マイラーの仲間入りを果たしたと言って良いだろう。今年で5歳になる牝馬だが、今なおその能力に衰えは感じられない。
初重賞勝ちが3歳秋の富士S(G2)だったように、どちらかといえば遅咲きのイメージのある本馬だが、3歳春には悔しい思いをしていることでも有名だ。
ソダシが勝利した2年前の桜花賞(G1)では、レース後に池添謙一騎手が「今日はあの不利がすべて」と悔しがるほど道中で大きな不利を受けて15着に大敗。次のNHKマイルC(G1)では、シュネルマイスターにハナ差で敗れたものの2着とG1級の実力があったことを示している。
あれから2年が経った今回の安田記念は、そのソダシやシュネルマイスターを従えての勝利。ソングラインの関係者だけでなく、ファンにとっても感慨深い1勝になったはずだ。古馬になって本格化し、若かりし頃の鬱憤を晴らした格好だ。
一方で、この大器の雪辱はいつになるのだろうか。この安田記念が7度目のG1挑戦となったナミュール(牝4歳、栗東・高野友和厩舎)である。
「悲しいです」悲運の“裏切り女王”の遠い春…
「また不利を受けてしまいました……」
2番人気に推されながらも7着に敗れた前走のヴィクトリアマイルは、レース後に横山武史騎手が「不完全燃焼」とバッサリ。「あのような不利を食らっては力を発揮できない。落馬に至らなくてよかったです」と感情を露わにするほどの不利があった。
そんなアクシデントがあっての安田記念だっただけに、人気こそ9番人気まで下降したものの、逆襲を期待していたファンは少なくなかったはずだ。
しかし、結果はまたも不利を受けての16着。横山武騎手も「悲しいです」と人馬の不運を嘆く他なかった。
G1で1番人気になること2回、2番人気も2回、3番人気が1回。これだけ見ると「どんな名馬か」と思うに違いない。だが、これは紛れもないナミュールの“足跡”である。
本馬にとって、唯一の重賞勝利となるチューリップ賞(G2)の歴代勝ち馬には、古くはエアグルーヴ、テイエムオーシャン、ウオッカにブエナビスタ、2010年以降でもハープスターやソウルスターリング、ラッキーライラックといった名牝の名がズラリと並ぶ。無論、勝ち馬のすべてが後に頂点にたどり着いたわけではないが、これだけを見てもナミュールがG1を勝ってもおかしくないだけのスケールを秘めていることは明らかだろう。
「前走のヴィクトリアマイルもそうでしたが、直線の長い東京の芝1600mはナミュールにとってG1制覇を狙うならベストの舞台だったと思います。それだけに度重なる不利に泣いてしまったことは、本当に残念という他ありません。
よく不利を受けてしまう馬は、受ける側にも問題があると言われますが、ナミュールは1番人気に推された阪神ジュベナイルF(G1)でも不利を受けています。
前日にC.デムーロ騎手が『重賞を勝てる馬。日曜に分かります』とV宣言するほど自信があったレースでしたが、スタートで出遅れると、道中では他馬と接触して行き場をなくす不利。最後の直線でも進路を探すのに苦労した結果4着……これには元JRA騎手の安藤勝己さんもTwitterで『力負けやない』と不完全燃焼を強調していました」(競馬記者)
秋華賞(G1)2着、オークス(G1)3着というG1実績のあるナミュールだが、肝心のマイルG1では不完全燃焼のレースが続いている。初めてG1で1番人気になった阪神JF以降、人気以上の好走を見せたのはオークスの4番人気3着だけ。そういった意味では、ずっとファンの期待を裏切り続けていることになってしまう。
「間隔が詰まる点を心配していましたが、良い状態に持ってきてくれた陣営に感謝したいです。前回は不利を受けて参考外。今日も道中は良い感じに運べましたが……」
一体、いつになれば「参考外」ではないレースに巡り合えるのか。G1を勝つことが簡単でないことは言うまでもないが、せめて完全燃焼できた大器の姿が見たい。
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