「追い切り代わり」のノーステッキ大楽勝、ソングライン凌ぐ瞬発力! グランアレグリアやサリオスもデビューした注目舞台に来年のクラシック候補が早くも登場
ソングラインの勝利で幕を下ろした東京競馬場の5週連続G1開催。好レースの続いた春G1も残すところは25日に行われる宝塚記念のみ。今週末から函館開催もスタートし、本格的な夏競馬へと突入していく。
現役最強イクイノックスの参戦表明により、もうひとつ盛り上がりに欠けるメンバー構成だった宝塚記念(G1)の楽しみも増えた。もし出走すれば、本馬と昨年の日本ダービー(G1)以来の対決を期待されたドウデュースの春全休は残念だが、今秋は国内に専念するとのこと。順調なら天皇賞・秋やジャパンC、有馬記念などのG1でドリームマッチが実現しそうだ。
トップクラスの実力馬たちの動向が気になる一方で、未来のスターホース候補たちがデビュー勝ちを飾ったことにも触れておきたい。
一昔前は早い時期にデビューする馬は、比較的早熟系の短距離が多く、クラシックを期待されるような大物のデビューは秋のイメージが強かったものの、近年は比較的早い時期から実力馬が使われる傾向も見られるようになりつつある。
過去10年、6月1週の東京でデビュー勝ちを決めた後のG1馬を例に出すと、イスラボニータ(2013年)、ステルヴィオ(17年)、グランアレグリア(18年)とサリオス(19年)、2週目以降でもメジャーエンブレム(15年)、アエロリット(16年)、ユーバーレーベン(20年)、ジオグリフ(21年)など枚挙に暇がないほどだ。
そして、今年も2頭の超大物候補がデビュー戦を圧勝したのだから、これらの傾向を踏まえると自ずと期待は大きくなる。
来年のクラシック候補が早くも登場
最もインパクトの強い勝ち方をしたのは、3日の土曜東京5Rの芝1600m戦を9馬身差で楽勝したシュトラウス(牡2、美浦・武井亮厩舎)だ。
ハナを奪ったブシンをスピードの違いで交わして先頭に立つと、後はそのままマイペースの一人旅。残り400mでD.レーン騎手が促すと、懸命に追い上げを図る後続との差は見る見る内に広がり、鞭が一度も入ることなくほぼ馬なりでゴールしてしまった。まるで追い切り代わりのような圧勝劇にレーン騎手も「直線では余裕がありましたし、良い勝ち方だったと思います。ポテンシャルが高く良い馬です」と高い評価を下した。
東京・芝コースの2歳新馬戦で2着馬に9馬身以上の差をつけたのは、ノーザンプリンセスが10馬身差をつけた1993年11月以来となる30年ぶりの快挙。不良馬場でマークした上がり3ハロンは34秒5で2位の35秒8を1秒3も上回った。
課題があるとすれば、前半行きたがる仕草を見せたように前進気勢の強さだろう。父モーリスは日本と香港でG1を6勝した名馬なら、母ブルーメンブラットもマイルCS(G1)を制した名牝。気性面の成長が求められるものの、奥手の両親から早い時期にここまでの強さを見せる産駒が生まれたのは驚きだ。もし晩成タイプだったとしたら、とてつもない大物となる可能性すらあるのではないか。
また、安田記念の行われた日曜東京5Rの芝1600m戦を快勝したボンドガール(牝2、美浦・手塚貴久厩舎)も将来性を感じさせる勝ち方だった。
レースはスローペースで逃げたチェルヴィニアをゴール前で捉えて3/4馬身差の勝利と派手さはなかったものの、最後の直線で前を行く2頭が邪魔になり、一旦進路を外に切り替えるロスがありながらの差し切り勝ち。着差以上の力の差を感じられただけでなく、上がり3ハロンのタイムも33秒0と非常に優秀だ。
負かした相手のチェルヴィニアは、C.ルメール騎手とのコンビで単勝1.8倍の大本命に支持されたチェッキーノ産駒の良血。そんな相手を楽々交わし去ったのだから価値があるだろう。条件は違えども33秒0の上がりは、安田記念を圧勝したソングラインの33秒1をも上回る。後者が良馬場まで回復していたことを思えば、稍重でのマークは素晴らしい。
シュトラウスは牡馬でボンドガールは牝馬ということもあり、もし実現するとしても2頭の直接対決はまだまだ先のことかもしれないが、クラシックを意識できるだけのパフォーマンスだったように思う。
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