C.ルメールに、D.レーンに、そして川田将雅に…リーディング9位なのに“食われる側”。ママコチャ「テン乗り」スプリンターズS(G1)制覇でますます深まる哀愁
1日、中山競馬場で行われたスプリンターズS(G1)は3番人気のママコチャ(牝4歳、栗東・池江泰寿厩舎)が勝利。2着マッドクールとのハナ差の接戦を制し、新スプリント王に輝いた。
初の1200m挑戦となった前走の北九州記念(G3)で2着だったものの非凡なスプリント適性を示していたママコチャ。しかし、舞台はその頂上決戦となるスプリンターズS。G1どころか重賞勝ちさえなかっただけに、池江調教師も「現状でどこまでやれるかですね」と慎重なコメントに終始していた。
それでもママコチャが3番人気に支持されたのは、G1・3勝を誇る白毛の女王ソダシの全妹であることも然ることながら、やはり川田将雅騎手が騎乗していたことが大きい。川田騎手の勝負強さはもちろん、3番人気という高評価はリーディングジョッキーを配した陣営の「本気度」をファンが感じ取った結果ともいえるだろう。
「最後は際どかったですが『勝ってくれ』と思いながら、無事に勝ち切ってくれました」
その結果、ママコチャの初重賞制覇がG1という最高の結果を叩き出した川田騎手。特にゴール前、マッドクールの坂井瑠星騎手との追い比べをハナ差で制したことは、No.1ジョッキーの貫禄さえ漂う勝負強さだった。結果的に陣営は最高の選択をしたといえるだろう。
その一方で、ママコチャの“元主戦”になってしまった鮫島克駿騎手の哀愁は深まるばかりだ。
「いいタイミングで乗せてもらいましたし、これからさらに良くなりそうです」
今年5月の安土城S(L)。ママコチャをオープン初勝利に導いたのが、これが新コンビ結成初レースとなった鮫島駿騎手だった。
昨年、3連勝でオープン入りを果たしたものの、重賞で2連敗と壁にぶち当たっていたママコチャ。それまで主戦を務めた松山弘平騎手から鮫島駿騎手へスイッチしたのは、そんな時だった。だからこそ安土城Sの勝利は単純な賞金加算も然ることながら、再び勢いに乗るための重要な1勝だったに違いない。
その後、鮫島駿騎手とママコチャは北九州記念で2着と、さらなる賞金加算に成功。そういった意味では、ママコチャをスプリンターズS出走へ導いたのは「鮫島駿騎手の貢献」と言っても過言ではないはずだ。
しかし、本番の約2週前になって陣営が発表したのは現役No.1ジョッキーの招聘だった。
「今回のスプリンターズSはハナ差の接戦を制しての勝利だけに、『さすが優勝請負人』でしたね。川田騎手としてもNo.1ジョッキーの面目躍如といったところでしょうか。
ただ、結果が結果だけに『自分が乗っていれば』と思ってしまうのがジョッキーの性。鮫島駿騎手ももちろんレースを見守ったと思いますが、心情としては複雑でしょう。発表があった際は、てっきり(鮫島駿騎手が主戦の)トウシンマカオに騎乗するかと思ったのですが、こちらも横山和生騎手に乗り替わり(後に熱発で回避)。結局、この日の鮫島駿騎手は阪神で騎乗しています」(競馬記者)
また別の記者曰く、鮫島駿騎手とG1とのすれ違いは今回だけではないという。
「鮫島駿騎手とG1といえば、4月の天皇賞・春(G1)をC.ルメール騎手とジャスティンパレスが勝った際も大きな話題になりました。
というのも、本馬の元主戦は鮫島駿騎手で昨年の神戸新聞杯(G2)を勝って、菊花賞(G1)でも3着するなど活躍。それにもかかわらず、次走の有馬記念(G1)でT.マーカンド騎手に乗り替わると、そのままルメール騎手が主戦に。宝塚記念(G1)でようやく鮫島駿騎手に戻ってきたのですが、相手がルメール騎手とイクイノックスでは……。弱肉強食の世界と言ってしまえば、それまでかもしれませんが、なかなか厳しい境遇に立たされていますね」(別の記者)
記者は「弱肉強食の世界」と言うが、鮫島駿騎手は1日現在のリーディング9位という押しも押されもせぬトップジョッキーの1人だ。
本来であれば、“食われる側”ではなく食う側のハズ……。しかし、例えばこの春の桜花賞(G1)で6番人気2着と結果を出したコナコーストも、続くオークス(G1)であっさりD.レーン騎手に乗り替わりになるなど、特にG1戦線ではずっと食われる側に回ってしまっている印象だ。
「こうやって一気に頂点に立ちましたが、これから先も期待される馬だと思います。スプリントのレースを覚えていければ、もっといい形で走れるようになると思いますので、その辺も改善していけたらと思います」
レース後の勝利騎手インタビューでそう語った川田騎手。「改善していけたらと思います」という口ぶりからも、当面はこの新スプリント王を手放すつもりはないだろう。果たして、鮫島駿騎手のG1制覇はいつになるのだろうか。近いようで遠い……。
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