【菊花賞】元JRA安藤勝己氏もドゥレッツァに「世代最強」のジャッジ…暴走に見えたラップに巧妙な罠! C.ルメール「神騎乗」でライバルを翻弄

皐月賞馬もダービー馬も「遅れてきた大物」の前になす術もなく敗れ去った。
牡馬クラシックのラスト一冠、菊花賞(G1)を制したのは、C.ルメール騎手とのコンビで出走した4番人気のドゥレッツァ(牡3、美浦・尾関知人厩舎)だった。
大外の8枠17番から果敢にハナを奪うと、16頭を引き連れて変幻自在のレースでライバルを圧倒。逃げた馬に最速上がり3ハロン34秒6の脚を使われては、後ろの馬が手も足も出なかったのは仕方ないか。
今年の春二冠は皐月賞(G1)をソールオリエンス、日本ダービー(G1)をタスティエーラがそれぞれ優勝。23年ぶりに皐月賞馬とダービー馬が菊花賞で対決したことでも話題を呼んだ。前者が3着、後者が2着に食い込んで意地は見せたものの、3馬身半差をつけられては相手が悪かったというしかあるまい。
C.ルメール騎手「神騎乗」でライバルを翻弄

中間も最終追い切りも絶好調という感じだったドゥレッツァが潜在能力の高さを見せつけたレースだったことは確かだが、パートナーの力を余すところなく出し切らせたルメール騎手の騎乗もまた素晴らしかった。
ルメール騎手曰く「1周目は静かな騎乗」をするつもりだったが、ハナに立ったのは馬が元気で出が良かったのでプランを変更したとのこと。ただロケットスタートを決めた訳でもなく、そのままハナを取り切ったのはルメール騎手の好判断だ。
普通の騎手なら好位に取りついたままだったかもしれないが、大外の17番枠から1周目の3コーナーを回ったところで距離のロスが最も少ない最内へと潜り込むことに成功。この時点で淀の長丁場で外々を回らされるリスクはなくなった。
その一方で、脚を使った前半の1000mは60秒4とやや速め。まだ2000mも残っていることを考えれば、このペースで飛ばしては最後までスタミナが持たない。見方によっては“暴走”と受け取ったファンもいただろう。
しかし、ここからが京都の長距離G1である菊花賞と天皇賞・春で計5勝を挙げる名手の真骨頂といえる絶妙なペース配分。ハナに立ってから12秒9→13秒1→13秒0→12秒8→12秒3とペースの緩んだタイミングに溜めを作った。最初の1000mが60秒4に対し、次の1000mは64秒1と息を入れている。ここでマイペースに落としたことにより、もう一伸び出来るだけのゆとりが生まれたはずだ。
そして勝利を決定づけたのはラスト1000mの激流である。それまでの緩い流れから徐々にレースのペースは上がり12秒1→11秒6→11秒7→11秒4→11秒8。64秒1のスローから一気に58秒6へと激変したため、後続の騎手は“追い掛けても追い掛けても差が縮まらない不思議な感覚”に陥ったのではないか。
しかも追い出しを待つ余裕もあったため、最後の直線に入る前のルメール騎手は、「進路を探すだけの作業」に終始していた。勝ちを焦ったリビアングラスが先頭に立ち、外からまくってきたサヴォーナが並び掛けるも、それが精一杯。ダービー馬タスティエーラが2着に追い上げたとはいえ、両馬の着差は3馬身半。ただただドゥレッツァの強さばかりが目立つ結果となった。
「横山典弘騎手とセイウンスカイが、当時の世界レコードで優勝した1998年菊花賞の再現といえる圧勝でした。神騎乗といっていいのは、ルメール騎手の手綱捌き。パートナーに無理をさせたのはハナに立つまでの区間だけで、後はインでじっとしていただけ。
でも動いていないように見えて、実は緩急自在にライバルを翻弄していたんです。自身は最短距離のインでロスなく脚を溜めながらペースを操り、他の騎手がどこで上がっていけばいいのか、どのタイミングで仕掛けたらいいのかを迷わせました。
ペースを急激に緩めたタイミングで横山典騎手のトップナイフ、それを追い掛けた池添謙一騎手のサヴォーナが上がっていきましたが、追いついたあたりでドゥレッツァが再加速。相手は道中で先に動いて外々を回らされている訳ですから、脚が残らなかったのも納得です」(競馬記者)
3000mというマラソンレースだけに、ピタリとインにつけてマイペースで走っていた馬と、外々を振り回された馬とでは、走った距離にも大きな差があったのではないか。
「3~4コーナーの手応えは良く、いい結果を出せると思いました。直線向いてからまた加速して、勝てると思いました。この馬はずっと良くなってきました。強いメンバーの中でGIを勝つことができましたし、今回は3000mでしたが2000mや2400mでもG1レベルでいい結果を出せると思います」
会心の勝利をそう振り返ったルメール騎手が、中距離G1でも勝ち負け可能と評したドゥレッツァ。管理する尾関調教師は「レースぶりも、勝ち方も、ルメール騎手の騎乗も素晴らしかった」「アグレッシブな競馬で、ビックリしました」と名手の神騎乗を絶賛した。
レースプランは任せる作戦だったようだが、レース後にルメール騎手と話した際に「スタートも良かったのでこういう競馬をしました、ビックリさせてごめんなさい」といわれたようだ。
これには元JRA騎手の安藤勝己氏も「普通はあれで3000mなんか保たない」「文句なしの完勝で、使わんやろけどJCで勝負になる」「世代最強は遅れてきた大物」と自身のSNSで発信していたように驚きを隠せなかったほど……。
ルメール騎手が凄過ぎただけに、今回の圧勝劇を鵜呑みにすることはできないかもしれないが、「最も強い馬が勝つ」と評される菊花賞馬に恥じないレースだったことは間違いない。
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