【エリザベス女王杯(G1)展望】女王ジェラルディーナVSリバティアイランド世代の遅れてきた大物! C.ルメール絶賛「キャリア4戦」ブレイディヴェーグに勝機あり!
12日、京都競馬場では秋の女王を決めるエリザベス女王杯(G1)が行われる。フルゲートは18頭だが、今年は15頭のエントリーに留まり、そのうちG1勝ち馬が1頭だけなら、リバティアイランド世代の3歳馬に勝機がありそうだ。
ポテンシャルの高さなら、C.ルメール騎手が「絶対に重賞レベルにある」と絶賛するブレイディヴェーグ(牝3歳、美浦・宮田敬介厩舎)がメンバー随一と言えるだろう。
キャリアは僅か4戦で、2勝2着2回。重賞は未勝利で、実績だけなら歴戦の古馬には大きく見劣る。しかし、初G1でいきなり1番人気に支持される可能性もあるという。
その理由が間違いなく一級品とされる秘めたる素質だ。昨年夏の新馬戦は惜しい2着に敗れたが、年明け2月の未勝利戦を6馬身差で快勝するなど、噂に違わぬ圧巻の走りを見せた。
さらに夏の1勝クラスで古馬牡馬相手に楽勝し、秋華賞(G1)で打倒リバティアイランドの有力候補に名乗りを上げた。デビューから休み休み使われていたブレイディヴェーグだが、実は新馬戦後、さらに未勝利戦後にそれぞれ骨折のアクシデントがあり、それを乗り越えての2連勝というのも価値が高かった。
この秋は、春のクラシック組も出走したローズS(G2)から始動。単勝2.1倍の1番人気に支持された。
いつも通りスタートで遅れてしまい、後方からの競馬となったブレイディヴェーグ。4角でも後方2番手という絶望的な位置取りだったが、直線で馬群を割って急追すると、勝ち馬とは1馬身半差の2着に食い込んだ。
その一戦でブレイディヴェーグに唯一先着したのは、レコード勝ちを収めたマスクトディーヴァだ。次走の秋華賞では、三冠を達成したリバティアイランドにゴール前で迫っただけでなく、3着ハーパーには2馬身半もの差をつけた。
このマスクトディーヴァを物差しにすれば、「ブレイディヴェーグ>ハーパー」という構図が浮かび上がってくる。遅れてきた大器が、3勝目をG1で飾るかもしれない。
そのハーパー(牝3歳、栗東・友道康夫厩舎)には、ブレイディヴェーグにないものがある。それが牝馬三冠レースで培った経験値である。
桜花賞(G1)4着、オークス(G1)2着、そして秋華賞3着……。3つのレース全てでハーパーはリバティアイランドに牛耳られているものの、その経験がいずれ結実するかもしれない。近3走で手綱を取ったルメール騎手は今回ブレイディヴェーグに騎乗。代わってクイーンC(G3)を勝利に導いた川田将雅騎手との2度目のタッグが実現した。
もともとハーパーは2000m戦でデビューしたように、陣営は中距離に適性を見いだしていた馬。2戦目からは桜花賞も見据えて、マイル路線に切り替えたが、2400mのオークスで2着したように、やはり主戦場は2000m以上になっていくだろう。
管理する友道厩舎といえば、「マラソン王国」と呼ばれるほど中長距離戦に強いことで有名。2200mの今回は、そんな厩舎力も後押ししてくれるはずだ。
前走の秋華賞はリバティアイランドとマスクトディーヴァに差をつけられたが、14kg増と大きなプラス体重もあった。叩き2走目に加え、距離も1ハロン延び、かつ外回りで行われるこのレースは最適の舞台設定といえるだろう。古馬より2kg軽い54kgで乗れることも強調できる材料の一つだ。
今年のエリザベス女王杯は、3歳馬のブレイディヴェーグとハーパーがある程度の人気を集めるだろう。ただし、2頭の立場はあくまでも挑戦者。そんな2頭に胸を貸す立場にあるのが、昨年の当レースを制したジェラルディーナ(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)である。
3歳時は牝馬三冠レースに出走すら叶わなかったジェラルディーナだが、3歳夏から秋にかけて条件戦を3連勝。古馬になってからは牡馬混合重賞で揉まれながら力をつけていった。
そして、その才能を開花させたのが、昨年の夏以降だった。夏のローカルで善戦を続けたジェラルディーナは、秋のオールカマー(G2)に続きエリザベス女王杯を中団後方から豪快に追い込んで制し、新女王の座に。さらに年末には有馬記念(G1)でも3着に入り、5歳となった今年は更なる活躍が期待された。
ただ、今年は大阪杯(G1)から4戦連続で馬券圏外とスランプに陥っている。昨年制したオールカマーでも6着に敗れ、1年前の勢いは完全に影を潜めているが心強い味方が現れた。それが2010~11年にスノーフェアリーで当レースを連覇しているR.ムーア騎手との新コンビ結成。世界の名手を背に連覇を果たし完全復活を遂げられるか。
過去10年で前走オールカマー組を上回る最多の4勝を挙げているのが府中牝馬S組だ。今年は上位3頭がそろって駒を進めてきた。
8度目の重賞挑戦となった前走で待望の勝利を収めたのはディヴィーナ(牝5歳、栗東・友道康夫厩舎)だ。今夏は中京記念(G3)と関屋記念(G3)で連続2着に惜敗していたが、前走キャリア初となる逃げの手を打って、これが見事に嵌った。
3歳秋以降はマイルを中心に使われており、約2年ぶりの2200m戦となるが、この距離延長がどう出るか。
府中牝馬S(G2)でハナ差及ばず2着に惜敗したのはルージュエヴァイユ(牝4歳、美浦・黒岩陽一厩舎)である。
2走前のエプソムC(G3)でも2着に敗れたが、そのときは2番手からの積極策。一方で、前走はスタートでやや不利があって後方からのレースとなり、直線で大外を追い込む形だった。この自在性が大きな強みとなるかもしれない。
そのルージュエヴァイユからクビ差の3着だったライラック(牝4歳、美浦・相沢郁厩舎)は、昨年の当レース2着馬(同着)だ。
2走前の宝塚記念(G1)でシンガリ負けを喫し、大きく評価を下げていたが、前走は+18kgと馬体重を大きく増やし、ふっくらと見せる好馬体。人気はなかったが、中団前目からレースを進めて、ディヴィーナとは0秒1差に好走した。ひと叩きされ良化が見込める今回は、昨年以上の着順にも期待が懸かる。
この他には、兄姉にサリオス、サラキアがいる超良血で、前走・新潟記念(G3)7着のサリエラ(牝4歳、美浦・国枝栄厩舎)、1年以上勝利から遠ざかっているが、前走のオールカマーでローシャムパークと0秒2差の4着に善戦したマリアエレーナ(牝5歳、栗東・吉田直弘厩舎)、2走前のマーメイドS(G3)でウインマイティー以下を退けて重賞初勝利を挙げたキセキの全妹ビッグリボン(牝5歳、栗東・中内田充正厩舎)なども優勝争いに加わってもおかしくない実力の持ち主だ。
ジェラルディーナがタイトルを防衛するのか、それとも3歳馬が古馬を蹴散らしてG1初制覇を遂げるのか。注目の一戦は、12日、15時40分に発走を迎える。
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