
何故、セラフィックコールの「豪脚」は不発に終わったのか…元JRA安藤勝己氏が指摘する「弱点」が意外に深刻なワケ
3日に中京競馬場で行われたチャンピオンズC(G1)は、1番人気のレモンポップ(牡5歳、美浦・田中博康厩舎)が貫禄の逃げ切り勝ち。2017年のゴールドドリーム以来、史上4頭目の統一ダート王に輝いた。
「距離も枠も明らかに不利でしたけど、この馬には関係なかったです。すごい馬です」
勝利騎手インタビューで主戦の坂井瑠星騎手がそう称えた通り、この日のレモンポップはまさに王者の走りだった。スタートから果敢にハナに立ってライバルたちを牽引すると、最後の直線では食い下がるドゥラエレーデを競り落として独走。最後はウィルソンテソーロが強烈な末脚で追い込んできたが、1馬身1/4差は完勝と言って良いだろう。
その一方で、貫禄を見せつけた1番人気馬に対して、2番人気に推されたセラフィックコール(牡3歳、栗東・寺島良厩舎)には厳しい結果が待っていた。
今年2月のデビューから5連勝。特に重賞初挑戦となった前走のみやこS(G3)では、上がり3ハロン第2位に0.7秒差をつける“異次元の末脚”で差し切り勝利。スタートに難こそあるものの、その爆発力は明らかにG1級であり、G1初挑戦ながら2番人気に推されたのは順当な評価と言えた。
しかし、今回のチャンピオンズCでは、いつも通り後方からレースを進めたものの自慢の末脚が不発に終わって10着……。同じように、後方からレースを進めて2着に追い込んだウィルソンテソーロの上がり3ハロン36.6秒から1.1秒も遅い、同37.7秒は自己ワーストだ。
この結果には、主戦のM.デムーロ騎手も「3、4コーナーも馬なりで上がっていけたけど、伸びなかった。外々を回った分なのかな」と肩を落とすばかり。寺島調教師も「厳しいペースで集団で行く格好になった」と馬を庇ったが、期待された末脚が不発だった明確な原因は明かされないままだった。
セラフィックコールは何故、本来の伸びを欠いたのか――。レース後、そこに一石を投じたのが、元JRA騎手のアンカツこと安藤勝己氏だ。
安藤氏は自身のXを更新し「セラフィックコールは中京だと厳しい脚質。3走前の東京も危うかったし、右回りの走りのほうがいい」と、舞台となった中京が左回りだったことを主な敗因に挙げている。
確かに、デビュー5連勝したセラフィックコールだが8馬身差(新馬)、4馬身差(1勝クラス)、3馬身半差(3勝クラス)、3馬身差(みやこS)で圧勝した右回りと比べて、左回りだった八王子特別(2勝クラス)は勝つには勝ったがハナ差の接戦だった。
元JRA安藤勝己氏が指摘する「弱点」が意外に深刻なワケ
「アンカツさんも『3走前の東京も危うかった』とおっしゃられていますが、(3走前の東京の)八王子特別では1コーナーで外に膨らんでしまうなど、全体的に走りに集中し切れていない様子でした。それが思わぬ接戦を強いられた原因だと思います。
まだキャリア3戦目だった上に、初の関東遠征の影響もあったと思っていたのですが、アンカツさんの言うように左回りに難があるとすれば納得できますね」(競馬記者)
例えば、左回りの東京競馬場でG1を6勝したウオッカや、日本ダービー(G1)とジャパンC(G1)を勝ったジャングルポケットに代表されるように、競走馬の中には右回りと左回りでパフォーマンスが大きく上下する馬がいる。セラフィックコールの場合は、右回りでこそ真価を発揮するタイプなのかもしれない。
だが、仮に安藤氏の推測が当たっていれば、セラフィックコールの「今後」に小さくはない暗雲が立ち込めるかもしれない。
「もしセラフィックコールが左回りを苦手にしているのなら、少し困ったことになるかも。というのも、例えばJRA・G1のフェブラリーSとチャンピオンズCは共に左回り。交流重賞でも大井のG1こそ右回りですが、かしわ記念(G1)の船橋や南部杯(G1)の盛岡は左回りです。
さらに言えば、セラフィックコールが来年のターゲットにしてもおかしくないサウジC(G1)やドバイワールドC(G1)、ゴドルフィンマイル(G2)といったところも左回り。ダート馬にとって左回りがダメだと、かなり選択肢が限られてしまうだけに心配ですね」(別の記者)
そんなセラフィックコール陣営にとって、来年のJBC開催の舞台となる佐賀競馬場が右回りであることは救いになるかもしれない。
チャンピオンズCの敗戦で新たな課題が浮上したセラフィックコール。能力は明らかにG1を狙えるものがあるだけに、まずは“左回り苦手説”を克服したい。
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