岩田康誠「男泣き」の日本ダービー制覇から12年。3度目の正直、息子・岩田望来が意外な形で掴んだダービー切符

羽田盃馬アマンテビアンコが東京ダービーを回避
19日、羽田盃(G1)を制した白毛馬アマンテビアンコ(牡3歳、美浦・宮田敬介厩舎)が骨瘤のため、正式に東京ダービー(G1)の出走を見送ることがわかった。所属するシルク・ホースクラブが公式HPで発表している。
今年から誕生したダート三冠戦線に激震が走った。1冠目にあたる羽田盃覇者の戦線離脱……。芝で言い換えれば、来週の日本ダービー(G1)で主役を務める皐月賞馬ジャスティンミラノが回避するようなもの。関係者にとっても痛恨であり、ファンにとっても残念なニュースに違いない。
だが、泣く者がいれば笑う者がいるのが勝負の世界。アマンテビアンコの東京ダービー回避という大きな動きが、思わぬところで波紋を広げている。

1年に1回、たった18人までしか挑戦することができない日本ダービー騎乗という狭き門。岩田望来騎手は、その当落線上にいた。
昨年の朝日杯フューチュリティS(G1)で16番人気のアスクワンタイムに騎乗して15着に終わった岩田望騎手。その後、ホープフルS(G1)、弥生賞ディープインパクト記念(G2)、スプリングS(G2)といった皐月賞(G1)と関連の深いレースで悉く騎乗馬なし。牡馬クラシック開幕戦の皐月賞に騎乗できないことは仕方のない状況だった。
そんな岩田望騎手に、京都新聞杯(G2)を勝って日本ダービーに駒を進めるジューンテイクの騎乗依頼が舞い込んできた。だが、その扱いは“補欠”……。というのもジューンテイクの主戦は藤岡佑介騎手であり、もう1頭のお手馬ミスタージーティーが日本ダービーの抽選を突破した場合に限り、岩田望騎手がジューンテイクに騎乗できるからだ。
1/2の抽選とはいえ、懸かっているのは栄えあるダービー騎乗。それもジューンテイクには、父のキズナが京都新聞杯を勝ってダービー馬に輝いたように、前哨戦の勝ち馬としての勢いもある。これが通算3回目の日本ダービー騎乗の若手騎手にとって、その心情は察するに余りあるものだっただろう。
だが状況は、意外な形で動いた。
意外な形で掴んだダービー切符
アマンテビアンコが東京ダービーを回避したことで、4枠しかなかったJRA所属馬の出走枠が1つ空いた。そこに繰り上がったのが、日本ダービーにも登録していたサトノエピックである。
6戦2勝のサトノエピックだが、2勝は共にダート。前走のユニコーンS(G3)2着で収得賞金の加算には成功したものの、東京ダービーの優先出走権が与えられるJRA所属馬は上位1頭(2着以内)のみ。サトノエピックは補欠1番手という立場だったのだ。芝の経験もある同馬だが、最高成績は2歳未勝利戦の2着。突如、舞い込んできたダートの頂上決戦の挑戦権を選択しない理由はなかった。
その結果、最後18番目の椅子を巡って抽選対象だったミスタージーティーとサンライズアースは揃って、日本ダービーへ出走できることに。関係者にとっても喜ばしい限りだろうが、まさに当落線上にいた岩田望騎手もその1人に違いない。
「馬上で男泣きしている父を見て、かっこいいなと思いました」
アスクワイルドモアと共に日本ダービー初参戦を決めた2年前、『デイリースポーツ』の取材を受けた岩田望騎手はそう語っている。脳裏に描かれているのは騎手になる前の2012年、父の岩田康誠騎手がディープブリランテで制した日本ダービーだ。「本当にすごいことをやったんだなと」と、息子は見慣れぬ父の姿に心を打たれたそうだ。
先週のヴィクトリアマイル(G1)では、単勝208.6倍のテンハッピーローズと津村明秀騎手がG1初制覇。どんな形であろうと、出る以上はチャンスがあるのが競馬だ。“棚ボタ”上等「最も運が良い馬が勝つ」といわれる頂上決戦で、運を掴んだ若武者が大暴れする。
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