川田将雅、C.ルメールも認めた「9戦連続」1番人気の大物がカムバック。新進気鋭の指揮官に託された超新星の復活はホンモノか、フロックか
復活を遂げた元エリートが大混戦に殴り込み
21日に開催されるサマーマイルシリーズ第2戦・中京記念(G3)は混戦が予想されている。
1番人気は昨年のマイルCS(G1)で4着だったエルトンバローズに落ち着きそうだが、ハンデは当然トップの59キロ。前走の安田記念(G1)で8着など、今年は惨敗続きだけに絶対的な信頼は置けない。2番人気以降はエピファニー、セオ、ニホンピロキーフ、アルナシームといった名が挙がるが、どの馬も一長一短……オッズが大きく割れることは間違いないだろう。
そんな大混戦だからこそ注目したいのが、“帰ってきた”ボーデン(セン6歳、栗東・上原佑紀厩舎)だ。
今から3年前の1月末、全国の競馬ファンが度肝を抜いた。東京・芝1800mで行われた3歳未勝利戦をボーデンが圧勝。昨年までオープンで活躍していたトゥーフェイスに6馬身差という大差も然ることながら、勝ち時計1分45秒2は、東京競馬場で行われた3歳戦においてJRA史上最速だった。
この東京・芝1800mでは2週後に共同通信杯(G3)が行われたが、この年の年度代表馬に輝くエフフォーリアの勝ち時計が1分47秒6といえば、ボーデンの時計の“異常さ”が少しは伝わるかもしれない。まさに「超」がつく新星が現れた瞬間だった。
破格のパフォーマンスで全国の競馬ファンの注目を集めたボーデン。ここから、ちょっとしたフィーバー現象が起こった。格上挑戦となった次走のスプリングS(G2)で1番人気に支持されたことはもちろん、9戦連続で1番人気に支持されたのだ。しかも、その内5戦は1.1倍を含む単勝1倍台と、圧倒的な支持を集めている。
約2年ぶりの勝利にあった「2つ」のポイント
しかし、ボーデンはそんな周囲の期待に応えることができなかった。
スプリングSで3着に敗れると、そこから4連敗……。2勝クラスは突破したものの3勝クラスで8連敗と完全に壁にぶち当たった。当然連続1番人気は途切れ、2年前の6月が最後の1番人気である。
いつしか競馬ファンからも忘れられた存在になったボーデン。そんな元エリートに再び注目が集まったのが、今年5月に行われた前走の錦S(3勝クラス)だ。
馬券圏内さえない8連敗中という現状に加えて、4か月の休み明けにもかかわらず、馬体重はマイナス18キロ。かつて9戦連続1番人気に推されたボーデンだったが、人気はキャリア最低の12番人気、単勝は54.9倍とほぼ“空気”といった扱いだった。
だが、出遅れからほぼ最後方を進んだ最後の直線で、持ち前の末脚がついに爆発。鞍上の団野大成騎手が「カラ馬がいてスムーズではなかった。切り替えてから馬が諦めずに頑張ってくれた」と振り返ったにもかかわらず、上がり3ハロン最速の33.3秒は同2位と0.7秒も差をつける出色の破壊力だった。
約2年の時を経て待望の4勝目を飾ったボーデンだが、大変身のきっかけは2つあった。1つは去勢手術を行ったセン馬になったこと、そしてもう1つは木村哲也厩舎から新進気鋭の上原佑紀厩舎に転厩したことだ。
今年が開業2年目になる上原佑調教師は、ダイワメジャーなどを手掛けた上原博之調教師の息子である。まだ34歳という若き指揮官は初年度から16勝を挙げる活躍、今年もすでに11勝と昨年の勝ち星を上回るのはほぼ確実だ。
去勢手術明けという決して簡単な状況ではなかったが、見事な立て直し。マイナス18キロの馬体重にも「馬体が絞れて動きの質が上がった」と逆に手応えを感じていたようだ。
「今回は3年前のラジオNIKKEI賞(G3)以来の重賞挑戦となりますが、3頭併せ馬で行われた1週前追い切りでは2頭に先着を許す一見平凡な走り。ただ上原佑調教師の手応えは『先頭を走らせて後ろから突かれる感じ。折り合いは良くなった』と上々な様子でした。
今回は穴馬の1頭になることが予想されますが、去勢効果の本領発揮はこれから。追い切りの内容でさらに人気がなくなれば、ますます美味しい存在になるかもしれませんね」(競馬記者)
記者曰く、今回のポイントは前走の京都1600mから小倉1800mに替わることだという。小回りコースで自慢の末脚をどれだけ発揮できるかということだが、陣営は「操縦性が上がっている」と期待を寄せる。前走の復活勝利に導いた団野騎手を確保できた点も小さくないだろう。
かつては川田将雅騎手やC.ルメール騎手からも、その素質に期待を寄せられていたボーデン。果たして、9戦連続1番人気の元エリートの復活はホンモノか、フロックか。出走権を確保していた3歳春の皐月賞(G1)はフレグモーネで無念の回避、6歳秋のマイルCSで今度こそG1の舞台に立ちたい。
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