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エルコンドルパサーVSグラスワンダー「逆襲」なるか。リュウノユキナ種牡馬入りに見る2頭のライバル関係

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ダート快速馬の種牡馬入りに大きな意味が

 1日、ダート短距離で活躍したリュウノユキナ(牡9歳、大井・坂井英光厩舎)が現役を引退し、種牡馬入りすることがわかった。

 2022年のJBCスプリント(G1)2着など、惜しくもG1制覇には手が届かなかったリュウノユキナだが、東京スプリント(G3)など重賞3勝を挙げた。

 特筆すべきは2021年にジャニュアリーS(OP)を勝利してから、昨年のJBCスプリントで3着に敗れるまでの安定感だ。19戦で馬券に絡めなかったのは、2021年のJBCスプリントと海外遠征となったリヤドダートスプリント(G3)のみ。好位からしぶとく脚を使い、常に上位を賑わせる走りは、馬券を買う競馬ファンにとって頼もしい存在だった。

 G1を勝てなかった種牡馬として厳しい状況が待っているかもしれないが、2016年のJBCスプリントを勝ったダノンレジェンドに今年249頭の種付けが集まるなど、ダートの短距離馬の需要は年々高まっている印象だ。リュウノユキナも、そんな流れに乗っていきたい。

 またリュウノユキナの種牡馬入りには、もう1つ大きな意味がある。名馬エルコンドルパサーの血が繋がったことだ。

最強馬エルコンドルパサーの血

 海外の購入馬、いわゆるマル外全盛の時代だった90年代。エルコンドルパサーは1999年の年度代表馬に選出されるなど歴史的な名馬であり、同時に史上最強馬の1頭として今なお名が挙がる存在だ。

 NHKマイルC(G1)やジャパンC(G1)の勝利も然ることながら、本馬を語る上で欠かせないのが、フランスの凱旋門賞(G1)で歴史的な激闘を見せたことだろう。

 武豊騎手が夢と語り、日本競馬が今も最大の目標に掲げる世界最高峰の舞台で、エルコンドルパサーは勝ったモンジューから半馬身差の2着と堂々の戦いを演じた。今や、日本馬が世界を股にかけて活躍することが当たり前の時代になったが、その火付け役と言って良い存在だ。エルコンドルパサーの走りは、日本の競馬界に世界と戦う野望と勇気を与えた。

ちなみに1999年、欧州を転戦したエルコンドルパサーは日本で一度も走らずに年度代表馬に輝いた。そういった意味でも、日本競馬に革命をもたらした1頭と言えるだろう。

 そんなエルコンドルパサーだが、残念ながら種牡馬としては現役時ほどの実績を残すことができなかった。2002年に腸捻転によって他界し、わずか3世代しか後継を残すことができなかったからだ。

 その3世代の中からダート王のヴァーミリアンやアロンダイト、菊花賞馬のソングオブウインドなどの活躍馬を輩出した辺りはさすがの一言だが、現在、その血はいつ途絶えてもおかしくない危機に瀕している。

 そんな中でヴァーミリアン産駒、つまりはエルコンドルパサーの血を引くリュウノユキナの種牡馬入りが決まったことは、ファンにとってこの上なく嬉しいことに違いない。繋養先となるアロースタッドによれば、オーナーサイドの強い思いで種牡馬入りが決まったそうだ。

 エルコンドルパサーを語る上でもう1つ欠かせないのが、同世代のライバル・グラスワンダーの存在だろう。

ライバル・グラスワンダーの存在

 エルコンドルパサーが1999年の年度代表馬なら、同年の特別賞を受賞したのがグラスワンダー。もし世界を股にかけて活躍した前者がいなければ、年度代表馬になったのは後者だったかもしれない。

 この両雄が実際に矛を交えたのは、実は1998年の毎日王冠(G2)の一度だけ。それでも2頭がライバルと言われるのは、その因縁の深さゆえだ。

 最初に世代をリードしたのは、グラスワンダーだった。無敗の4連勝で朝日杯3歳S(現フューチュリティS・G1)を制し、最優秀3歳牡馬(現2歳)を獲得。当時、マル外にはクラシック挑戦の権利がなかったが、クラシックそのものがグラスワンダーへの挑戦者を決める戦いと言われるほどズバ抜けた存在だった。

 しかし、グラスワンダーは翌春のNHKマイルCを目指す過程で骨折。絶対王者が戦線離脱となった中で現れたのがエルコンドルパサーだった。ちなみに件の毎日王冠では前者が無敗4連勝、後者が無敗5連勝という状況で激突している。この時はグラスワンダーが故障明けの本調子でなかったこともあって、1つ年上のサイレンススズカが勝利。エルコンドルパサーが2着、グラスワンダーは5着に敗れた。

 その後、エルコンドルパサーが主戦場を海外へ移したこともあって2頭の再戦は叶わなかったが、種牡馬になってからは大きく差がついた。

 わずか3世代しか残すことができなかったエルコンドルパサーに対して、グラスワンダーはスクリーンヒーローら活躍馬を輩出。そのスクリーンヒーローが2015年の年度代表馬モーリスを輩出し、そのモーリスからもピクシーナイトが昨年に種牡馬入りするなど、脈々とその血が受け継がれている。

 一方のエルコンドルパサーは苦戦が続く中で、リュウノユキナが種牡馬入りを果たした。現役時代、最後まで連対を外すことがない安定感が光ったエルコンドルパサーに対して、グラスワンダーは幾度となく復活を遂げた怪物だった。2頭の種牡馬生活が現役時代とは、まるで真逆のような展開になっているところも興味深い。

「1頭でも多く繁殖牝馬が集まることを期待しています」とは、アロースタッドを運営するジェイエス事務局のコメントだ。果たして、エルコンドルパサーの逆襲はあるのか。リュウノユキナに掛かるファンからの期待は思いの外大きいに違いない。

GJ 編集部

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