【愛チャンピオンS(G1)展望】日本のシンエンペラーがディープインパクト産駒の愛国馬オーギュストロダンに挑む
14日、アイルランドのレパーズタウン競馬場で愛チャンピオンS(G1)が行われる。日本の競馬ファンにはあまり馴染みのないレースだが、凱旋門賞(G1)や英チャンピオンS(G1)、米ブリーダーズCなどの前哨戦的な位置付けにあり、毎年ハイレベルな強豪が集う欧州最高峰のレースの1つだ。
2019年には日本のディアドラが挑戦して4着。今年は凱旋門賞を目指すシンエンペラー(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)がここをステップにする見込みで、すでにJRAの馬券発売も決まっている。さっそく展望していこう。
中心は、日本の競馬ファンからも熱い視線を集めているオーギュストロダン(牡4歳、愛・A.オブライエン厩舎)だ。
言わずと知れた昨年の英・愛ダービー馬であり、愛チャンピオンSのディフェンディングチャンピオンでもあるオーギュストロダン。他にもブリーダーズCターフ(G1)やプリンスオブウェールズS(G1)など、G1・6勝はこのメンバーでも断トツの存在だ。
ただ、オーギュストロダンが日本でも高い知名度を誇っているのは、本馬がディープインパクト産駒である点が大きいだろう。凱旋門賞馬ソットサスの弟であるシンエンペラーが日本を代表して、ディープ産駒の愛国馬オーギュストロダンに挑むという夢のような構図は、まさに日本競馬の進化の象徴といえるのではないだろうか。
昨年は、ここを勝ってブリーダーズCターフに進んだオーギュストロダン。今秋はジャパンC(G1)挑戦も予定されているだけに、まずはここで貫録を示しておきたい。
ただし、強豪がひしめく欧州競馬で2年間も頂点に立ち続けるのは至難の業。オーギュストロダンも前走のキングジョージ6世&QES(G1)で5着に敗れたことで、その威信に陰りが見え始めている。
現地で、そんな前年王者以上の評価を集めそうなのが、遅れてきた大物3歳馬エコノミクス(牡3歳、英・W.ハガス厩舎)だ。
ここまで4戦3勝ながら、英ダービー(G1)の前哨戦となるダンテS(G2)で6馬身差の圧勝を飾っているエコノミクス。英ダービーは見送ったものの、復帰戦となった前走のギヨームドルナノ賞(G2)も2馬身差で完勝しており、そのポテンシャルは底知れない。
今回が初のG1挑戦となるが、ハガス調教師は「どうなるか見てみよう。ステップアップの準備はできている」と強気な姿勢を崩さない。すでに英チャンピオンにも登録を済ませており、ここをステップに欧州中距離界の頂点を見据えている。
アルリファー(牡4歳、愛・オブライエン厩舎)も出走してくれば、日本の競馬ファンから高い注目を集めるはずだ。
前走のベルリン大賞(G1)を5馬身差で圧勝した実力も然ることながら、アルリファーが日本の競馬ファンに注目されているのは、すでに武豊騎手とのコンビで凱旋門賞に挑戦することが内定しているからだ。
これは、今夏に武豊騎手と親交の深いキーファーズ代表の松島正昭オーナーが共同所有することが決まったためであり、武豊騎手も「チャンスあるんちゃうかな」と意欲的だ。出否の正式な発表はまだだが、近年でもソットサス、ファウンド、ゴールデンホーンなどが当レースを挟んで凱旋門賞馬となっている。
最後に、やはり日本のシンエンペラーにも触れておきたい。
矢作調教師によって、フランスのオーガストイヤリングセールにおいて約2億8000万円で落札されたシンエンペラー。凱旋門賞馬ソットサスの弟ながら、日本の芝に適応できるかが注目されたが、矢作調教師の「日本競馬に適合する」との言葉通り、ここまでホープフルS(G1)と弥生賞ディープインパクト記念(G2)で2着、日本ダービー(G1)でも3着するなど堂々の戦いぶりを見せている。
これまで6戦2勝とやや勝ち味に遅い点は見受けられるが、仮に血統の額面通り欧州で真価を発揮できるなら、もう一段高いパフォーマンスが期待できる。矢作調教師×藤田晋オーナーといえば、すでにフォーエバーヤングが世界的な活躍を見せており、その流れに続けるかも注目だ。
他にも愛ダービー馬のロスアンゼルス、一昨年の勝ち馬ルクセンブルク、イスパーン賞(G1)を勝ったアンマートなど26頭がエントリー。毎年、10頭以下で行われるレースだけにまだ不確定な面も大きいが、シンエンペラーは優勝候補の一角としてレースを迎えることになるはずだ。
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