大本命モーリスは「何故」敗れたのか。昨年から懸念されながらも、マスコミ内に留まった「明確な敗因」とは
実はこの”悪癖”は今に始まったことではない。昨年の安田記念も勝つには勝ったが、結果的にはヴァンセンヌにクビ差まで迫られた紙一重の勝利だった。ただ、初のG1挑戦ということもあって、まだモーリスのポテンシャルを測りかねていたこと。そして、あの時はまだ本格化していなかったのではないかという意見が、今年になっても昨年の安田記念の印象を曇らせていた。
だが、実際には昨年の安田記念でもモーリスの手前替えは、決してスムーズではなかった。無論、早め先頭という苦しい競馬になったこともあるが、最後で伸びを欠いでヴァンセンヌに迫られた原因の一つは、まず手前替えにあると考えて良いだろう。
昨年の安田記念に、今回の2本の追い切り。モーリスが左回りの競馬場で戦う際に、その手前替えがスムーズでないことは堀調教師を始めとした陣営はもちろんのこと、メディアでも気付いている人は何人もいただろう。
ただ、それでもあまり表に出なかったのは「それでもモーリスなら勝てる」と多くの人が信じていたからだ。
結果的にその思いが”思い上がり”となってしまった今年の安田記念。ロゴタイプにつけられた着差は1・1/4馬身差。そして何よりもモーリスの上がり3ハロンは、逃げたロゴタイプの「33.9秒」よりも遅い「34.0秒」。表面上は完敗である。
ちなみに「34.0秒」は何の見せ場もなく早々に脱落したリアルスティールと、-21kgで走れる状態ではなった香港のコンテントメントを除けば、最も遅い上りである。そして、その結果が3着フィエロとはハナ差、4着サトノアラジンとはさらにクビ差まで追い詰められた薄氷の2着だったということだ。
繰り返しになるが、今回のモーリスは慣れない東京競馬場での調整を強いられ、レース中にも著しく折り合いを欠いた。敗戦はそういった様々な要因が複合的に重なった結果である。
だが、それでも京都なら押し切れたかもしれないと思うのは筆者だけではないはずだ。モーリスがマイルCS(G1)や香港の2走、つまりは”右回り”で見せた強さは紛れもない本物だったのだから。
今後、モーリスが左回りに問題を抱えていることは、徐々に浸透するかもしれない。仮に秋の天皇賞に進むようなら、間違いなく大きくクローズアップされることだろう。ただ、逆に述べれば、堀調教師がこの問題をそのままにしておくはずもない。
いずれにせよ、負けはしたがモーリスが今の競馬界を牽引する一頭であることに変わりはない。今回の敗戦は陣営にとってショックだろうが、どうか今後もチャレンジ精神に溢れたローテーションを選択していただき、競馬界を盛り上げてほしい。
(文=浅井宗次郎)
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