KONAMI麻雀格闘倶楽部・前原雄大「卒業」に秘められた思いを告白。「100m歩くのに10分もかかった」盟友・佐々木寿人にさえ明かさなかった満身創痍の3年間
実は前原は2018年のMリーグ開幕当初から、すでに満身創痍だったという。
昨シーズンのMリーガー30人中16人が所属するなど、前原を含め約700名の麻雀プロが所属している日本プロ麻雀連盟。Mリーグが幕を開けた2018年、当時の前原はその日本プロ麻雀連盟の頂点・鳳凰位を2連覇中だった。他にも麻雀グランプリMAXなど数々のタイトルを獲得するなど、麻雀界全体でもその存在は際立っていた。
だからこそ前原がMリーグのドラフトで指名を受けたことは、ごく自然な流れともいえる。だが、その一方で前原本人には「自分がMリーグに参戦して良いのだろうか」という思いがあった。
というのも、タイトル戦を勝ち抜くことで対局数が増えていき、極度の過密日程となった中で持病の椎間板ヘルニアの悪化に加えて狭窄症を発症したからだ。狭窄症は脊髄が圧迫されて、腰の痛みや脚のしびれなどの症状を起こすと言われているが、Mリーグ初年度の最も酷い時は「100m歩くのに10分もかかった」というほど症状は深刻だった。
「病院を回って色々手を尽くしたんですけど、手術を受けても根治しないことがわかって……他のチームだったら、たぶん(Mリーグに)行かなかったでしょうね」
それでも前原が参戦を決意したのは、指名されたのがKONAMI麻雀格闘倶楽部であり、佐々木寿人や高宮まりと共に闘いたいという強い意思があったからだ。
「サポーターは僕らが勝っても負けても温かい言葉をくれますし、スタッフも朝早くからMリーグの試合が終わるまで、ずっと頑張ってくれている。選手だけじゃなく、そんな全員でファミリーになったのがKONAMI麻雀格闘倶楽部というチームなんです」
満身創痍の中、掛け替えのないファミリーに囲まれてMリーグ初年度を闘った前原。だが、ここでまたも悲劇が襲う。シーズンのある試合で、カンした際に嶺上牌を取らずに打牌してしまったことで少牌(手牌が13枚より少なくなってしまう状態)してしまった。
原因は、試合前に狭窄症の痛みを抑えるために打っていた神経ブロック注射(痛みがある場所の神経の近くに局所麻酔薬を注射)だった。「どうしてもボーッとするじゃないですか」との言葉通り、強い麻酔は同時に感覚や思考能力を奪ってしまう。その結果、大ベテランの前原らしからぬミスに至ってしまったのだ。
「私のエラー。私のミスでゲームを壊してしまって大変申し訳なく思っております。私個人ということではなく、Mリーグファン、KONAMIファンに大変申し訳なく思っております」(当時のコメントより)
それでも前原は、ファンはもちろん、チームメイトにさえ自身の状態を明かさなかった。すべての事情を飲み込んで、ただ頭を下げ続けた。その一方で、二度とこういったミスを繰り返さないために、ブロック注射など試合に影響が出る治療をすべて絶った。
「痛いのはしょうがない。試合が始まると集中して(痛みを)忘れることができた」と悲壮な決意で以降のシーズンを闘った。