【フェブラリーS】「元お手馬」のG1勝利に胸中は複雑?重賞初勝利で学んだ判断力の重要性…「鞍上強化」のお手本騎乗が今後の糧になるか
18日に行われたフェブラリーS(G1)を制したのは、11番人気の伏兵ペプチドナイル(牡6歳、栗東・武英智厩舎)。重賞初勝利でG1タイトルを掴むとともに、コンビを組んだ藤岡佑介騎手に6年ぶりとなるG1勝利をプレゼントした。
3番人気に支持された前走の東海S(G2)は馬群の中で苦しい競馬となり6着。手綱を取った藤岡佑騎手も「一番難しいところに入った」と悔いが残る結果に終わった。この反省を生かした今回は見事な手綱捌きで修正。これには本人も「前走はうまくいかなかったんですが、今日はスムーズに運べたのがよかった」と振り返った。
2走前のベテルギウスS(L)ではトップハンデの59kgを背負い、G1・3着の実績馬ハピを下して勝利。今回は軽視されたとはいえ、ポテンシャルの高さは証明済みだった。
その一方、控える競馬でG1を制したペプチドナイルだが、昨年は逃げて強い競馬をしていたことも事実。昨夏の函館で大沼S(L)とマリーンS(L)を連勝したが、いずれも後続を寄せ付けない大楽勝を飾っていた。
ペプチドナイルとの出会いが重賞初勝利を呼び込んだ?
しかし、札幌のエルムS(G3)では、ハナを主張した他馬に譲る格好で13着に大敗。当時、重賞初勝利のかかっていた富田暁騎手にとってはほろ苦い結果に終わった。
これには富田騎手も「強気にハナに行くべきだった」と悔いを残したが、継続騎乗となったその後のみやこS(G3)とカノープスS(OP)では、逃げる競馬を貫いた。残念ながら勝利は得られなかったものの、14番人気の大穴テイエムスパーダで逃げ切り勝ちを決めたセントウルS(G2)で生きたはずだ。
当時の富田騎手が逃げなかったことを敗因に挙げていたように、ファンの多くもペプチドナイルは逃げてこそという先入観を持っていただろう。
ただ、藤岡佑騎手へと乗り替わった元お手馬が、逃げない競馬でG1を制したことについては富田騎手も胸中複雑だったかもしれない。藤岡佑騎手はポジションよりもペプチドナイルのリズムを優先するスタイルで潜在能力を引き出すことに成功。若い富田騎手にとっては今後に繋がる経験になったのではないか。
また、フェブラリーSが厩舎初のG1勝利だった武英師は、富田騎手が「ヒデさんがいなければ今の僕もいない」と語るほどに慕う存在。その縁もあっての騎乗機会だったと思われるが、報いることはできなかった。
自身は同日の裏開催となった小倉大賞典(G3)でダンディズムに騎乗して8着。同馬も富田騎手と相性のいいパートナーではあるが、大敗後に継続騎乗を任されたペプチドナイルで結果を残せていれば、もしかしたらフェブラリーSでのコンビも実現していた可能性はある。
結果的に“鞍上強化”がペプチドナイルのG1勝利へつながった訳だが、27歳の富田騎手もこれからの伸びしろをまだまだ残している。この経験を糧とし、さらなる活躍に期待したい。
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