持っていないようで「実は」持っている!? 「黒歴史」を乗り越えた田辺裕信と「アノ馬」をめぐる2つの顛末
競馬の世界は勝負の世界。常に結果を求められるのが当たり前で、騎手に直接の原因がなくとも、馬を勝たせることが出来なければ、たとえトップジョッキーでも簡単に乗り替わりを宣告される厳しい業界だ。
そんな競馬界で最近、とりわけ”持っていない”と言われているのが、関東の実力派ジョッキー・田辺裕信騎手。
今年の安田記念では大本命モーリスを相手に単勝36.8倍、8番人気の伏兵ロゴタイプで芸術的な逃げ切りを披露し、大番狂わせを演じたほか、現時点で71勝を挙げ全国リーディング7位に入るなど活躍。昨年からM.デムーロ・C.ルメールの2外国人騎手が日本で通年騎乗することになり、武豊騎手や岩田騎手といった多くのトップジョッキーが軒並み勝鞍の減少を余儀なくされている状況で、過去最高を更新するかという勢いで勝ち星を量産しているのは立派の一言につきる。生え抜き騎手不遇の時代にあって、関東騎手界の未来を背負って立つ存在といっていい。
上記のような活躍を見せる田辺騎手。競馬ファンにとっても注目の存在だが、その実力は重々承知ながらも、同時に”地味”、”中堅どころ”というイメージも拭いきれない。その原因は、ある意味ジョッキーにとって最も大事な”運”が欠けていると思われているせいだろう。
田辺騎手の不遇を象徴する馬が、現ダート界のチャンピオンと目されるコパノリッキーだ。昨年初頭から今年の帝王賞までは武豊騎手が騎乗していたが、もともとは田辺騎手がG1の頂へ押し上げたお手馬。2014年のフェブラリーSを最低人気ながらアッと驚く逃走劇で制し、その後もかしわ記念→JBCクラシックとタイトルを順調に獲得していった。だがJRAG1競走2勝目を狙ったチャンピオンズCを出遅れて敗北。続く帝王賞でもホッコータルマエの後塵を配して2着に敗れたところから、2人の関係は破綻をきたした。たった2度の敗北が両者の関係を壊したあたり、まさしく騎手に厳しい現代競馬の過酷さを体現した出来事と言える。
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