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持っていないようで「実は」持っている!? 「黒歴史」を乗り越えた田辺裕信と「アノ馬」をめぐる2つの顛末

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 田辺騎手の不遇を象徴する馬が、現ダート界のチャンピオンと目されるコパノリッキーだ。昨年初頭から今年の帝王賞までは武豊騎手が騎乗していたが、もともとは田辺騎手がG1の頂へ押し上げたお手馬。2014年のフェブラリーSを最低人気ながらアッと驚く逃走劇で制し、その後もかしわ記念→JBCクラシックとタイトルを順調に獲得していった。だがJRAG1競走2勝目を狙ったチャンピオンズCを出遅れて敗北。続く帝王賞でもホッコータルマエの後塵を配して2着に敗れたところから、2人の関係は破綻をきたした。たった2度の敗北が両者の関係を壊したあたり、まさしく騎手に厳しい現代競馬の過酷さを体現した出来事。と言えるだろう。

 一度は他人の馬になった、いわば”自分を振ったオンナ”と再びタッグを組むことになったのは今年のマイルCS南部杯。レース当日は武豊騎手が京都大賞典のキタサンブラックに騎乗予定があり、元のパートナーである田辺騎手にお鉢が回ってきた。この”都合のいい”ともとれる乗り替わり劇にも思うところはあったかもしれないが、そんなことはおくびにも出さない見事なエスコートで、約2年ぶりの勝利。だが、同じく武豊騎手がアウォーディーを選択したためコンビ継続となったJBCクラシックでは、揉まれ弱いコパノの弱点を知り尽くした当の武豊騎手&アウォーディーに執拗にいじめられ、直線で力なく後退する惨敗を喫した。

 コパノリッキーをめぐる約2年間の顛末は、まさに田辺騎手にとって”黒歴史”と言われても差し支えない代物。こんな目にあったらファンの間で”持っていない”とささやかれるのも、残念ながらしょうがない面もあるかもしれないが……。

 だが、ちょっと待ってほしい。確かにコパノとの関係は順風満帆とはいかなかったかも知れないが、それを十分に補える幸運を田辺騎手は手にしているのだ。

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