JRA阪神JF(G1)武豊「ダービーへ行きましょう」力強さに股間を覗き見?ウォーターナビレラに懸かる最強牝馬候補の「後継」ミッション!

武豊騎手

 12日、阪神競馬場では2歳女王を決める阪神JF(G1)が行われる。

 注目はデビューから無傷で3連勝中のウォーターナビレラ(牝2歳、栗東・武幸四郎厩舎)だ。

 武幸調教師と武豊騎手の兄弟による初めてのG1挑戦だけに話題性にも事欠かず、8日現在の『netkeiba.com』の単勝予想オッズでは1番人気に支持されている。

 そのウォーターナビレラの生産は北海道・浦河町にある伏木田牧場。明治時代に創業された老舗牧場である。

 太平洋戦争直後から昭和50年代ごろにかけて多数の活躍馬を輩出した同牧場だが、昭和末期から平成にかけて低迷。1986年(昭和61年)にロンスパークが鳴尾記念(当時G2)を勝って以降、重賞勝利から遠ざかり、先月のファンタジーS(G3)をウォーターナビレラが勝つまで、実に35年もの空白期間があった。

 現在、同牧場の代表を務めるのは6代目の伏木田修氏。実は先々代の伏木田達男氏は、馬主としてG1ウイナーを所有した経験がある。

 その馬の名前はファインモーション。99年にアイルランドで生まれ、生後数か月の時に、後に同馬を管理することになる伊藤雄二元調教師に発掘され、日本へ輸入された名牝だ。

 父は欧州の大種牡馬であるデインヒルという良血馬で、当然競走馬としての活躍が見込まれていた。だが、実は低迷する伏木田牧場を支える繁殖牝馬としての期待の方が大きかったという。

「デビュー前から注目度は高く、2歳暮れの新馬戦では単勝1.1倍の断然人気に支持されました。武豊騎手を背に2着に4馬身差をつける逃げ切り勝ちを演じましたが、当時の外国産馬にはクラシック出走権がなかったため、春を全休しました。

夏の北海道シリーズから松永幹夫騎手が手綱を取り、連勝街道を歩むと、再び武豊騎手とのコンビで秋華賞(G1)を制覇。続くエリザベス女王杯(G1)でも古馬を全く寄せ付けず完勝しました。当時は史上最強牝馬とまで言われていましたね」(競馬誌ライター)

 主戦の武豊騎手は、今年10月の『Number Web』(文藝春秋)の『[特別インタビュー]武豊が愛した女王たち』というインタビュー記事でファインモーションの強さを物語るエピソードを明かしている。

「デビュー前のファインモーション(’99年生まれ、父デインヒル、母ココット、栗東・伊藤雄二厩舎)にまたがったときに、その力強さに思わず鼻息を荒くしてしまい、伊藤調教師(’07年に勇退)に『先生、これでダービーに行きましょう』って言っちゃったことがあります。先生は少しあきれたような顔をされて、素っ気なく『牝馬だけどな』という返事。慌てて馬から下りて、ファインモーションのまたぐらを覗き込んでしまったことを思い出します」

 詳細は本記事をご覧いただきたいが、武豊騎手が牡馬と牝馬の違いについて語るエピソードとして、真っ先にファインモーションの名前を挙げている。それだけ牡馬勝りの馬だったということだろう。

 そんなファインモーションは、3歳秋にエリザベス女王杯を勝利後、有馬記念(G1)へ出走するも1番人気の期待を裏切り5着に敗れてからリズムを崩してしまう。古馬になってG2を2勝したが、結局3度目のG1勝利には届かず。5歳秋に引退し、伏木田牧場で繁殖入りしたのだが……。

「初年度からキングカメハメハが交配されたように繁殖として大きな期待がかけられていました。しかし、その後も受胎することはなかったといいます。なんでも医学的に受胎することは無理と言われたとか……。結局、当初の最大の使命とされた繁殖牝馬にはなれず、今は伏木田牧場で功労馬として余生を過ごしています」(同)

 そんなファインモーションとは血のつながりこそないウォーターナビレラだが、同牧場に現れた待望の活躍馬である。当時のファインモーションには出走する資格すらなかった来春の牝馬クラシックを狙うためにも、2歳女王の座は譲れない。

 そしてまだまだ先の話だが、ファインモーションが叶えられなかった繁殖牝馬として伏木田牧場を支えていくというミッションもいずれ担うことになるだろう。

 ウォーターナビレラはファインモーションと同じように無傷のままG1制覇を達成できるのか。その答えはまもなく出る。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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