JRA阪神JF(G1)ステルナティーアは「捨てるな」より捨てるが正解!? C.ルメール満点ジャッジも拭えぬレースレベルへの疑問
阪神競馬場で12日に開催される阪神JF(G1)は、来春のクラシックを占うにも重要な一戦だ。昨年優勝したソダシ、2着サトノレイナス、3着ユーバーレーベンは、今年の3歳牝馬路線でも主役の1頭として大いに盛り上げた。
今年の主役候補は、なんといっても無傷の3連勝で挑むウォーターナビレラだろう。デビューから2戦は吉田隼人騎手とのコンビで2連勝。前走から武豊騎手へと鞍上をスイッチして重賞初制覇も遂げている。
2019年の菊花賞(G1)をワールドプレミアで制して以降、G1勝利から遠ざかっている競馬界のレジェンドにとっても、連敗脱出を期待できる絶好のチャンスとなりそうだ。
これに対し、最大の強敵となりそうなのが、C.ルメール騎手とのコンビで出走を予定しているステルナティーア(牝2、美浦・木村哲也厩舎)である。
父ロードカナロア、母ラルケットという血統は、3歳秋に出走した2018年のマイルCS(G1)を優勝したステルヴィオの全妹にあたる。G1馬を兄に持つ期待馬は、8月新潟の芝1600m戦でデビュー。前後半の600mで4秒3もの落差があった超スローの展開ながら、32秒7の鬼脚で先行勢を交わし、2着馬には3馬身という圧倒的な差をつけて勝利を飾った。
続く2戦目のサウジアラビアRC(G3)こそ、コマンドラインから1/2馬身差の2着に敗れたものの、相手は来年のダービー馬候補と呼ばれている評判馬。牝馬限定戦のここでは能力上位といえるだろう。
美浦のWコースで行われた最終追い切りでは、ジャングルキング(3歳1勝クラス)と併せて、6ハロン84秒2~ラスト1ハロン11秒5の好時計をマーク。追切に騎乗したC.ルメール騎手も「コンディションはバッチリ」と太鼓判を押している。
その一方で、ステルナティーアには克服しなければならない最重要課題も残る。それは、ここまで使われた芝1600mの走破時計が、明らかに見劣っていることだ。勿論、レース展開やメンバーを考慮すると、額面だけで判断をすることは危険だが、2戦とも1分36秒台のレースだったことは引っ掛かる。
デビュー戦については、超スローを中団から上がり3ハロン最速の脚で突き抜けただけに評価は可能だが、むしろ懸念材料となるのは重賞のサウジアラビアRCの方である。
同重賞が開催された10月9日、同じ週に東京で行われた芝1600m戦には、2歳の未勝利戦があったのだが、勝ち馬のラズベリームースは1分33秒9で勝利している。これは1分36秒4のサウジアラビアRCを2秒5も上回る内容だった。
未勝利戦の前半3ハロン35秒4に対し、サウジアラビアRCのそれが37秒7であることは見逃せないとはいえ、問題なのは後半の4ハロンの方。超スローで脚が溜まっていたなら後半に余力が残っているはずなのだが、両レースとも46秒4というのはいかがなものか。
「このレースはどちらも見ていたので私も違和感があったのは覚えています。翌日日曜の新馬戦を勝ったラスールの勝ちタイムも1分35秒3でしたから。もしかしたら勝ち馬のコマンドラインもそれほど強い馬ではないのかもしれないと感じました。
勝ったことには勿論評価したいのですが、レースレベルが高かったのかとなると自信が持てませんね。ステルナティーアとクビ差の3着だったスタニングローズのその後も冴えませんし……」(競馬記者)
ちなみに3着スタニングローズと4着ウナギノボリは次走のデイリー杯2歳S(G2)にも出走して、それぞれ勝ち馬のセリフォスから大きく離された5着と7着に敗れている。
これがまだもう少し決定的な差でもついていれば、もう少し難しいのだが、クビ差の接戦だったことを考えると、過度な期待を持つには怖さが残る。
リーディングを独走するルメール騎手が評価しているだけに、「捨てるな」と言われそうだが、馬券的な妙味を考えると思い切って「捨てる」という選択肢もありそうだ。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。