JRA安田記念(G1) “ゴールドシップの許嫁”が挑む大舞台、孝行娘がめざす自身初・厩舎初のビッグタイトル
6月5日、東京競馬場では春のマイル王決定戦・安田記念(G1)が行われる。
1年前にこのレースを制したダノンキングリーと、昨秋のマイルチャンピオンシップ(G1)を制したグランアレグリアがともに現役を引退。新星の登場が待たれる芝マイル路線の中で、牡馬の強豪を相手に初のG1制覇に挑むのがロータスランド(牝5歳、栗東・辻野泰之厩舎)だ。
同馬は、昨夏のサマーマイルシリーズを制した快速牝馬。秋は富士S(G2)とマイルCSで二桁着順に惨敗したが、年明け初戦の京都牝馬S(G3)ではしっかりと立て直して復活の白星を掴んだ。
さらに距離を短縮して挑んだ高松宮記念(G1)でも2着と善戦。短距離界のニューヒロイン候補として注目を浴びている。
アメリカから持ち込まれた同馬を生産したのが、獣医師の吉田直哉氏が牧場主を務めるウィンチェスターファーム。もともとは馬主の小林英一HDから「弊社が所有するゴールドシップの種牡馬事業を支援したい」という話を受けたのが発端で、血統面や馬体などを見て選ばれた若駒が後のロータスランドだった。
言わば“ゴールドシップの許嫁”として日本にやってきた格好だが、競走馬としての能力も優秀。2019年の9月にマイル戦でデビュー勝ちを果たすと、2戦目のもみじS(OP)は2着に敗れたが、勝ち馬が後の3歳マイルG1馬・ラウダシオンだったことを考えれば価値ある2着だったと言えるだろう。
“ゴールドシップの許嫁”が挑む大舞台
3戦目で阪神JF(G1)に挑んだ後は半年の休養を挟み、3度目の挑戦で1勝クラスを突破してからはトントン拍子。2勝クラスを勝った直後に格上挑戦となった米子S(L)でオープンの壁を突破し、中京記念(G3)の5着を挟んで関屋記念(G3)で重賞初制覇。夏のマイル王に輝いたのは上述の通りである。
引退後の大きな使命を前にして、5歳春の時点ですでに2億円以上の賞金を稼いでいる孝行娘。馬主孝行のみならず、管理する辻野泰之厩舎には関屋記念で開業初の重賞勝利をもたらし、今年2月の京都牝馬Sでは岩田望来騎手にキャリア初の重賞勝利をプレゼントした。
前走の高松宮記念は外から伸びて前を行く馬をとらえるも、内を抜けてきたナランフレグにクビ差で惜敗。初G1勝利とはならなかったが、これがキャリア初の1200m戦だったことを思えば大健闘と言える。
その点、今回は【4-1-0-3/8】のマイル戦。キャリア6勝中4勝を挙げている得意舞台に戻っての前進に期待が膨らむ。
本来は牝馬限定の戦いになるヴィクトリアマイル(G1)も視野に入っていたが、疲労や中間に気負う面を見せたことも考慮してここをスキップ。間隔を空けて安田記念を目指すこととなった。
牡馬混合となるだけに、当然ながら相手も強くなるが、陣営からは「ヴィクトリアマイルを使わなかったのは正解」という声が挙がっており、「現時点で90%以上。レースには100の状態で出走できる」という頼もしいコメントも。相手強化よりも、時間をとったことによる上積みを前向きに捉えている。
さらに後押しとなりそうなのが、週中の雨予報。同馬は稍重以下の道悪の成績が【3-2-0-0/5】でオール連対という“道悪の鬼”なのだ。
ヴィクトリアマイルは良馬場の高速決着となっただけに、回避の決断がこんなところでも味方となるか。担当する橋本助手も「常に週間の天気予報を見ている」と恵みの雨に期待を寄せている。
孝行娘が挑む大一番。課せられた大きな使命を前に、自身初の、そして厩舎初のG1タイトルを掲げることができるか。ロータスランドの挑戦から目が離せない。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。
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