かつてのダービー馬に武豊が意外な進言!?奇跡の復活へ目指すべき新境地とは
5頭のG1馬を含む豪華メンバーが激突した今年の札幌記念(G2)、結果はご存じのようにジャックドールが勝利。クビ差の2着に食い下がったパンサラッサを含むG1馬たちをねじ伏せて重賞2勝目を手にした。
ただし今回の札幌記念はあくまでも秋の大舞台に向けた前哨戦であり、今回のレースだけで勝負付けが済んだとは言えない面もある。パンサラッサ、ソダシを筆頭に敗れた面々も各々、秋に向けて何らかの収穫を得ることができたレースだったように思える。
一方で5頭のG1馬の一角として札幌記念に出走したマカヒキ(牡9歳、栗東・友道康夫厩舎)にとっては、秋への収穫とは対照的に散々なレースとなってしまった。
マカヒキは後方3番手の位置からレースを進めていたが、勝負所で後方勢が前に詰め寄る中で終始おいていかれる形に。結果的に15着のアイスバブルから6馬身の差をつけられる最下位での入線となり、6年前に日本ダービー(G1)を制した際の威光は全く感じられない走りであった。
9歳を迎えたシーズンも重賞戦線に果敢に挑む姿には感服するが、マカヒキが現役を続ける間に、かつてクラシックで戦ったライバル・サトノダイヤモンドは6月に産駒がデビュー。加えて同馬は大人気ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)にも登場し、数多くのファンにその名が知れ渡っている。こうしたサトノダイヤモンドの充実したセカンドキャリアの歩みを踏まえると、マカヒキが戦ってきた月日の長さを感じさせられる。
昨年の京都大賞典(G2)では約5年ぶりとなる復活勝利を挙げて感動を呼んだマカヒキであるが、その後は2桁着順の大敗が続いている状況。長い間現役を続けるマカヒキにはファンからも「とにかく無事にレースを終えてほしい」「もう休ませてあげてほしい」とその身を案じる声が出走の度に挙がっている。
武豊騎手が意外な進言!?
9歳という年齢や近走の成績を考えれば、競走馬としての旬が過ぎてしまっているのは明らか。いよいよターフを去る決断を下されても不思議ではないだろう。そんなマカヒキの今後であるが、札幌記念で騎乗した武豊騎手がレース後に気になるコメントを残している。
「3コーナーから付いていけなかった。今なら、もう少し距離があった方が良さそう」
道中の反応の鈍さに、名手は距離延長での転戦を進言。武騎手は過去にも3度マカヒキの手綱を握っており、最後にコンビを組んだ19年のジャパンC(G1)では4着と好走に導いている。3年前の“良い頃”のマカヒキを知るレジェンドの進言とあれば、その説得力も増すところだ。
一般論として、競走馬はピークを過ぎてから年を重ねるごとにトップスピードが衰えていくと言われている。今回は武騎手も語っていたように1000m通過が59.5秒という2000m戦で追走に苦しんだ部分があったが、ペースが緩む長い距離のレースであればマカヒキが再び輝く可能性はあるかもしれない。
武騎手が語る“もう少し”の距離がどれ程のものを指すのかはわからないが、仮にマカヒキが長距離路線を目指すとすれば、復活を期待できる材料はある。
3000mを超えるような長距離のレースでは、全体の流れが緩み速いスピードを要求されないこともあってか高齢馬でも通用するケースが多い。特にJRAの重賞で最も長い3600mの距離を戦うステイヤーズS(G2)では、比較的年長馬の好走が目立っている。
近年では19年のアルバート、16年のファタモルガーナがそれぞれ8歳ながら2着に好走。トウカイトリックは12年に10歳ながら勝利を挙げ、その前年の9歳時には3着、翌年の11歳時には2着に食い込み3年連続での好走を果たしている。
元々マカヒキは3歳春に過酷な府中2400mを制して世代の頂点の座を勝ち取って見せた馬である。年を重ねてスピードが衰えた現状でも長距離路線でならば通用する可能性は秘めているだろう。
今後は昨年も制した京都大賞典へ向かうのか、はたまた新境地を目指し、長距離路線を歩むのか。9歳を迎えた今なお戦い続ける歴戦の猛者・マカヒキがもう1度輝きを放つ未来に期待したい。