今村聖奈「再登板」に現実味も賛否!? 快挙の裏で残した負の遺産…主戦騎手には同情の声も
21日、小倉競馬場で行われた北九州記念(G3)は、単勝オッズ164.3倍で大金星を挙げたボンボヤージが激走する大波乱。フルゲート18頭が出走したレースで、16番人気という超人気薄で勝利した。
騎乗した川須栄彦騎手との相性も良く、これでコンビ4勝目。前走で大敗を喫していたとはいえ、小倉の芝1200mという条件も、過去に2勝を挙げていた得意条件だった。430キロ台の小柄な馬が、51キロの斤量で走れたことも大きかったのではないか。
ただ、ほぼノーマークの馬に後塵を拝した上位人気馬も、総崩れというほど凡走した訳ではない。
内から末脚を伸ばした3番人気タイセイビジョンが2着に入り、4コーナー入り口で外へ大きく膨れる不利のあった1番人気ナムラクレアは3着。今回ばかりは勝ち馬のコンビにうまく乗られてしまったというしかないだろう。
その一方、2番人気に支持されたテイエムスパーダ(牝3、栗東・五十嵐忠男厩舎)の7着については、少々残念な結果に終わったといえそうだ。
同馬は前哨戦のCBC賞(G3)を、ルーキーの今村聖奈騎手とのコンビで優勝した。好スタートを決めて迷わずハナを奪い、3馬身半の差をつけて圧勝しただけでなく、1分5秒8(良)の勝ち時計でJRAレコードを更新。自身の重賞初騎乗だった今村騎手の記念すべき重賞初勝利ともなった。
テイエムスパーダの本来の主戦である国分恭介騎手としては、ハンデの関係で騎乗が叶わなかっただけに、再び出番が回ってきた北九州記念で先輩の意地を見せたかったところだろう。
しかし、鞍上の思いとは裏腹に前回同様の逃げを打ったものの7着。これには本人も「スピードを生かす競馬をしましたが、条件が替わって、ポジション争いが厳しかったです」と振り返るしかなかった。
そこで注目したいのは、国分恭騎手の「条件が替わって」という言葉である。
まず、明確な違いとしては、同じハンデ戦でも斤量が48キロから51キロへと、3キロの増量があったことだ。3キロも違えば、快速揃いのスプリント戦でスタートダッシュに大きく影響したはずである。
だが、それよりも痛恨だったのは、馬場状態の変化だったのではないだろうか。
「夏競馬の開幕週に行われたCBC賞は、土日含めて3つのレースでレコードが出たような超高速馬場。最終週の中京記念(G3)でさえ、ベレヌスが逃げ切ったように、とにもかくにも前々で競馬をした馬の好走が目立つ、逃げ先行勢に圧倒的有利な状態でした。
これに対し、2週間の中休みを経て開催された北九州記念当日に、逃げ馬が勝ったレースは1つのみ。中間の雨もあって前回ほどの前残りする、高速馬場ではなかったことが分かります」(競馬記者)
国分恭騎手には同情の声も
このように、前回と今回の馬場状態の違いを把握できていたなら、軽ハンデと前残りする馬場を味方にCBC賞を逃げ切ったテイエムスパーダの苦戦は、ある程度想像が出来たかもしれない。
とはいえ、今村騎手の騎乗したCBC賞の圧勝が、あまりにもインパクトが強かったこともまた事実である。
同じ逃げでも前半600mのラップは、31秒8と32秒8と大きな開きもあり、国分恭騎手の逃げが弱気に映ったファンもいたかもしれないが、北九州記念の勝ち時計も同じようにCBC賞から1秒1も遅い1分6秒9なのだから許容範囲という見方も可能だ。
そう考えると、ネットの掲示板やSNSで一部のファンから今村騎手の再登板を期待する声が出ていることは、国分恭騎手に同情せざるを得ない。
とはいえ、主戦に戻って連勝したならともかく、負けた後ならG1騎乗条件となる31勝をクリアした今村騎手の起用にも現実味を帯びてくる。スプリンターズS(G1)に出走してくるようなら、その背中には誰の姿があるだろうか。