矢作厩舎「スキル発動」にファン大興奮、パンサラッサだけじゃない秋競馬の存在感

 

 今週末のマイルCSから暮れのホープフルSまで、G1レースが7週連続で開催される中央競馬。ちょうど中盤に差し掛かったタイミングだが、パンサラッサの大逃げで話題となった天皇賞・秋(G1)から2週間が過ぎた。

 往年のサイレンススズカを思わせる1000m通過57秒4のラップにも大きな注目が集まったが、ファンを興奮の渦に巻き込んだ徹頭徹尾の逃げには、止まればそれまでよといった「鋼の意思」を感じられた気持ちのいいものでもあった。

 そんな矢作芳人厩舎だが、秋競馬で目に見えて存在感を発揮している。

 同厩舎は調教師の全国リーディングでも11月13日現在で51勝を挙げてトップ。秋の重賞でもラヴェルでアルテミスS(G3)、ユニコーンライオンで福島記念(G3)を制するなど絶好調だ。

 そして何より最近の矢作厩舎で拘りを見せているのが、「徹頭徹尾」で逃げるスタイルである。

パンサラッサだけじゃない秋競馬の存在感

 実際、天皇賞・秋からアルゼンチン共和国杯(G2)、武蔵野S(G3)、福島記念と続いた4つの重賞で逃げ馬が大活躍した。

 アルゼンチン共和国杯のキングオブドラゴンこそ、最後の直線で内ラチに激突するという想定外のアクシデントも発生したが、天皇賞・秋(パンサラッサ、7番人気・2着)、武蔵野S(バスラットレオン、7番人気・3着)、福島記念(ユニコーンライオン、10番人気・優勝)と4つの内、3つで馬券圏内に食い込んだ。

 人気馬での好走ならまだしも、すべてが人気薄の伏兵での健闘。これまでも逃げを打つケースはあったが、最近は特に逃げるスタイルで結果を残している。

 勿論、人気がないからこそ、他馬のマークが薄くなるメリットがありそうだが、内容としてはスローペースに落としこんで雪崩込みを図るものではなく、自ら率先してハイペースを演出しての好走が大きな特徴といえるだろう。

 では、あえて逃げの手に出ることで、どのようなメリットが得られるのか。ファン目線で推測してみたい。

 まず絶対に先頭を譲らないという強い意志を見せることで、ライバル馬の騎手に競りかけても共倒れになるだけと思わせることが可能だ。また、単騎で先頭に立つことで道中を揉まれないで走ることも出来る。

 さらに、周りに他馬がいないことで馬場のいいところを選んで走れるコース取りも可能となり、進路を塞がれたり、ぶつけられて平常心を失うリスクも軽減される。そして何より脚を余して負けるケースがほぼないことだ。

 馬券を購入する側からしても不完全燃焼ではなく、全力を出し切っての負けではないなら諦めもつきやすい。簡単に思いついた点だが、どうだろうか。

 今年の競馬もまだ1か月半残っている。重賞レースで矢作厩舎の逃げ馬が出走してきた際には、「大逃げスキル」の発動する可能性が高いため、積極的に狙ってみると面白いかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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