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ナリタブライアン「単勝100万円」おじさん登場も一瞬で沈黙、競馬初心者が目撃したウインズ渋谷の大惨事

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 JRAは25日、かつて三冠馬ナリタブライアンなど多くの名馬を管理していた大久保正陽元調教師が、21日に亡くなったことを発表した。87歳だった。

 大久保正調教師といえば、武豊騎手とのコンビでBNW時代の一角を担ったナリタタイシンや、1992年に9番人気で宝塚記念(G1)、15番人気で有馬記念(G1)を制し、グランプリ春秋制覇をやってのけたメジロパーマーを管理していたことでも知られている。

 もう30年くらい前の話になるが、おじさんにとってはついこの前のよう。いまだに鮮明なイメージが残っているのは、当時まだ競馬初心者で何もかもが新鮮に感じていたからだろうか。

 先生の代表馬として真っ先に名前が挙がる名馬は、やはりナリタブライアンということで、今回は少し脱線して当時の思い出話をひとつ紹介してみたい。あくまで私個人のエピソードのため、そのあたりは我慢していただければ幸いだ。

競馬初心者が目撃したウインズ渋谷の大惨事

 ブライアンが三冠を達成した1994年当時、東京の大学に通っていた私は、悪友から教えられた競馬に夢中だった。現在53歳の武豊騎手もまだ25歳。関東では岡部幸雄元騎手がトップに君臨していた時代である。

 現在でこそネット投票ですぐに馬券を購入できるが、その頃はまだまだ紙馬券が主流の時代。新宿や後楽園、渋谷の場外馬券売り場に足繁く通っていた。日本ダービー(G1)を5馬身差で圧勝したブライアンの三冠が確実視されていたこの年、私と友人はウインズ渋谷で合流した。勿論、秋緒戦の京都新聞杯(G2)に出走するブライアンが目当てだ。

 3連複や3連単の発売もなく、馬券を買うのは馬連が中心。ダービー2着のエアダブリンも出走していたが、休み明けのセントライト記念(G2)を1番人気で完敗したばかり。連勝中の上がり馬スターマンもいたが、実績的に見劣る存在。ブライアンの断然人気は火を見るより明らかだった。

 とはいえ、他にこれといった馬もいなかったのでブライアンからエアダブリンとスターマンに流した馬連を購入し、後はレースの開始を待つだけだったのだが、パドックで各馬の映像が映し出されたあたりで勝負師が登場したのだ。

「ブライアンの単勝を100万買った」

 そう豪語した初老の男性に周りの馬券オヤジたちの視線が一気に集まった。ブライアンが断然人気でも単勝オッズが1.1倍なら10万円の黒字が出る。貧乏学生だった我々には無縁の勝負であり、羨ましさと怖さを感じる金額だ。

 なぜそう感じたかというと、ブライアンの単勝は売れ続け、レース直前には元返しの1.0倍になりそうだったからである。残念なことに我々の予想は的中し、100万円の大勝負をした彼には、「最高の結果でもお金が戻ってくるのみで負けたら大損」という最悪の状況が待ち受けることになった。

 しかし、競馬の神様はときにあまりにも残酷なことをする。

 レース結果をご存じの方も多いだろうが、夏負けの兆候を見せていたブライアンは本調子になく、スターマンの前にクビ差2着で敗れてしまった。馬連的中に胸を撫で下ろした我々が振り返ったとき、100万円勝負おじさんの姿はすでになく、絶対的な王者の敗戦を目撃したファンのどよめきだけが残っていた。

 ギャンブルの怖さを痛感した我々は、払い戻しを済ませて近所の居酒屋で恐怖体験の話を肴に盛り上がったものの、おじさんの今後を心配しつつ、何とも言えない後味の悪さを感じたのも事実だ。話の最中に友人がふとこんなことを思い出した。

「そういえば、あのおじさんさ。オールカマー(G2)でもビワハヤヒデとウイニングチケットの馬連を10万円買っていたのと同じ人だわ」

 あ、言われてみればそうだったかもしれない。確かこの時の枠連(8頭立てで馬連の発売はなし)の払戻は130円だったから10万円で3万儲けていたのか。おじさんからすれば、「夢よ、もう一度」といったところだったのだろうが、そううまい話は何度もないもの。

 初心者からすっかり古参となった現在でも、「競馬に絶対はない」ということを教えてくれた人生の大先輩の姿が、どんなに自信があっても大金を賭けない現在のスタイルに多大な影響を及ぼしていることは確か。

「相手が勝ち誇ったとき そいつはすでに敗北している」

 これは某マンガのキャラクターの残した名言だが、競馬においても忘れないようにしたい。

高城陽

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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