
和田竜二「止まっているわけではない」ディープボンドはなぜ伸びなかったのか? 阪神大賞典(G2)鞍上も気付けなかった「変則ラップ」のカラクリ

競馬ファン以外からも注目の集まったストライキにより、一時は開催すら危ぶまれた先週末の中央競馬。根本的な解決には至らなかったようだが、調教師を中心とした組合非加入者で何とか開催にこぎつけた。
ネットやSNSで賛否両論の意見が飛び交ったものの、東西で行われたステップレースは見応えある内容ではあった。
日曜阪神で開催された阪神大賞典(G2)は、天皇賞・春(G1)を視野に入れた有力馬が激突。大本命に推されたボルドグフーシュを破って勝利を掴んだのは、C.ルメール騎手との再コンビで臨んだ2番人気ジャスティンパレスだった。強い世代と評判の4歳馬が、世代交代を告げる好内容だったように思う。
これに対し、打倒4歳馬の期待を一身に集めたのが、2年前と昨年に同レースを制し、今年は3連覇を狙ったディープボンド(牡6、栗東・大久保龍志厩舎)だ。
ゴールドシップ(2013年~15年)以来の偉業達成となるはずだったが、前の馬を交わすどころか後続にも交わされて5着。4コーナー2番手と位置取りは悪くなかっただけに、得意の舞台で思わぬ敗戦を喫してしまった。この馬の実力を考えれば物足りなさもあり、本番での評価下落も予想される。
とはいえ、主戦の和田竜二騎手のコメントを振り返ると、このまま見限ってしまうにはまだ早計と感じられる部分があったことも確かである。なぜなら巻き返しを予感させるキーワードがいくつか含まれていたからだ。
「この馬場にしてはペースが遅すぎました。最後は止まっているわけではありません。上がりが速くて持ち味を生かせませんでした。次に向けてまた考えていきたいです。悪くなかったと思います」
こちらはレース後の和田竜騎手の言葉の一部を抜粋したものだが、ペースが遅かったことは事実であり、持ち味を生かせなかったという話にも説得力がある。敗れた割にそれほど悲壮感がなかったことは、本人も何とかなるという手応えがあったのだろう。
鞍上も気付けなかった「変則ラップ」のカラクリ
特筆すべきは今年の阪神大賞典が、結果的に「変則ラップ」のレースだった点だ。芝3000mのレースで道中のラップを1000mごとに分割してみたところ、64秒9-63秒3-57秒9で推移していることが分かる。
ちなみにラスト1000mのラップが57秒9だった年を調べてみたところ、ナリタトップロードが優勝した2002年が該当。つまり21年もの間、ここまでの激流はなかったということになる。そしてこれが、ディープボンドの凡走した理由のひとつとして大きな意味を持つのではないか。
ディープボンドは国内の芝で35秒を切るケースは非常にレア。昨年の阪神大賞典での34秒6が最速上がりという馬だ。今年の34秒7にしても過去2番目の速さ。和田竜騎手の「止まっているわけではない」と言葉にも説得力がある。
そう考えると、多少乱暴な物言いになるが、実は2番手でも後ろ過ぎたといえそうだ。イメージとしては昨年の天皇賞・秋(G1)に近いのかもしれない。
快速馬パンサラッサが超ハイペースで大逃げした一戦と何の関係があるのかという声も出るだろうが、このときは逃げた馬のみ速く、追い掛けなかった後続馬にとっては実質超スローでもあった。それは勝ち馬のイクイノックスが、上がり3F32秒7で突き抜けたことに表れている。
そして、このレースを切れ負けする格好で4着に敗れたのが、藤岡佑介騎手の騎乗が疑問視されたジャックドール。本馬も止まってはいないながら、究極の瞬発力で後れを取ったといえる内容だった。
馬場状態や開催条件に違いはあれども、これと似たような状況となっていたなら、切れる脚のないディープボンドが不甲斐なかったことも合点がいく。それこそ切れる脚のないパンサラッサが、大逃げという武器を手に入れて進化した例が参考になる。そこでひとつ思い当たるのは、フランスに遠征した21年のフォワ賞(G2)だ。本馬のキャリアで唯一逃げる競馬を試みた舞台で上がり3F33秒台をマークする珍事が話題になった。バテない切れないタイプにとっては、このように思い切った作戦もありなのではないか。
本番で対決が予想されるタイトルホルダーは高速ステイヤーだが、何が何でも逃げたいタイプでもない。ハナを主張してしまえば、無理には競り合ってこない可能性が高いだろう。外野の提案に過ぎないため、陣営に届くことはないかもしれないが、ステイヤー版のパンサラッサになれるイメージは、意外と合いそうな気もする。
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