
皐月賞(G1)負かした騎手の頭を叩く「前代未聞」の挑発が物議…M.デムーロが最も愛したネオユニヴァース、最強馬と評したドゥラメンテ

リバティアイランドが圧勝劇を見せた桜花賞(G1)が終わり、今週は牡馬のクラシック皐月賞(G1)が開催。今年の牡馬路線には抜けた馬がおらず、重賞の勝ち馬が目まぐるしく変わったこともあり、大波乱の結果となっても不思議ではないという下馬評も出ているほどだ。
どの馬が勝ってもおかしくない状況だが、レース展開に大きな影響を及ぼす、騎手に注目してみたところ、騎乗を予定している中で最多となる皐月賞4勝を挙げているM.デムーロ騎手の存在が目に付いた。
中でも特に話題を呼んだのは、ネオユニヴァースとのコンビで初めて優勝した2003年の皐月賞だろう。
この年はスプリングS(G2)で大本命に推されたサクラプレジデントを負かしたネオユニヴァースが1番人気となり、直接対決で敗れたサクラプレジデントが2番人気。オッズ的にも2頭が他馬をリードし、事実上の二強状態となっていた。
「前代未聞」の挑発が物議…
実際、レースでも先に抜け出したサクラプレジデントを中団から脚を伸ばしたネオユニヴァースが交わして優勝。人気通りの決着となった訳だが、ゴール板を過ぎてからのデムーロ騎手の行為が物議を醸した。なんとデムーロ騎手が田中勝春騎手の頭をポカッと叩き、勝ったのは自分という挑発行為をしてしまったからである。
事の真相については、『netkeiba.com』で連載しているデムーロ騎手のコラム『Road to No.1』の中で、「僕、まだ若かったね(苦笑)。イタリアはあんまり先輩とか後輩とか関係ないから、ついついそのノリで……」と振り返っていたものの、公営ギャンブルとはいえスポーツとしての側面もある競馬に相応しくない行為と見られたのもやむを得ない。
この前代未聞といえる振る舞いを“若気の至り”とする見方もあるが、礼儀やマナーが特に重視される日本では、快く思わないファンも少なくなかったはずだ。デムーロ騎手としては「俺とネオユニヴァースが一番強い」という想いが爆発してしまったように、後にもネオユニヴァースのことを「一番愛してる馬」と評している。
これに対し、「競走馬としての強さでいえば上」と評したパートナーは、「日本も海外も含めて、これまでに乗った馬の中で一番強い」ドゥラメンテである。
2015年の春クラシック二冠を制した本馬との出会いは、初コンビを組むことになった皐月賞。前走の共同通信杯(G3)には、石橋脩騎手が騎乗していたものの、行きたがる馬を無理に抑え込んだ影響もあり、先に抜け出した福永祐一騎手(現調教師)が騎乗したリアルスティールに出し抜けを喰らう格好で惜敗していた。
そういった経緯もあり、皐月賞当日は弥生賞(G2)を勝って3戦無敗のサトノクラウン、前走で不覚を取ったリアルスティールに続く3番人気での出走。少なくともこの段階での評価は、それほど高くはなかった。
しかし、いざレースが終わるとドゥラメンテの強さばかりが目立つワンサイド。15頭立てで行われたこの年、後方3番手から徐々に進出したドゥラメンテは、最終コーナーで7番手までポジションを上げる。突然外へ大きく膨れて煽りを受けたライバルもいた中、1頭だけモノが違う上がり3F33秒9の豪脚で突き抜けてしまったのだ。
馬名に相応しい「荒々しい」走りにデムーロ騎手も「信じられない」という表情。レース後に「怖かった」「すごく強い馬」「どこでも勝てる」と興奮気味に語ったのも頷ける。そしてデムーロ騎手の言葉通りにダービーも圧勝して二冠馬へと輝いた。
ちなみにこのときの皐月賞3着は後に菊花賞(G1)を制し、7冠馬となったキタサンブラック。現在、現役最強馬との呼び声も高いイクイノックスの父だが、ドゥラメンテとの直接対決で3戦3敗と、一度も先着することが出来なかった。
脚元の故障が原因で現役を引退したドゥラメンテは、種牡馬となっても大活躍をした。初年度産駒のタイトルホルダーが、G1・3勝を挙げ、翌年には牝馬二冠のスターズオンアースも輩出。昨年のホープフルS(G1)を優勝したドゥラエレーデ、阪神ジュベナイルF(G1)を制し、先日の桜花賞を圧倒的な強さで制したリバティアイランドもまたドゥラメンテの産駒である。
母系に名牝エアグルーヴの名前が入るダイナカール一族という血統的な魅力からも、ディープインパクトやキングカメハメハに引けを取らない期待を集めながら、2年前の夏に9歳の若さで天国へと旅立ったのは、あまりにも残念だった。
歴史に残る二冠馬2頭の背中を知るデムーロ騎手は、今年の皐月賞にショウナンバシットと参戦する。下馬評はそれほど高くはないが、2004年の皐月賞を当時10番人気のダイワメジャーで大穴を開けた手腕は要警戒だ。
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