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蛯名正義「まず負けないだろう」の強気も返り討ち…1番人気譲った川田将雅は「まだ信用されていないんだな」…フローラS(G2)圧勝で挑んだ夏至祭の記憶

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蛯名正義「まず負けないだろう」の強気も返り討ち…1番人気譲った川田将雅は「まだ信用されていないんだな」…フローラS(G2)圧勝で挑んだ夏至祭の記憶の画像1

 牡牝のクラシックレースが終了し、30日の天皇賞・春(G1)を控え、今週末は春のG1開催も中休み。休み明けには怒涛の6週連続G1開催が待っている。センテニアル・パーク京都競馬場として生まれ変わった京都のマイラーズC(G2)も楽しみだが、オークストライアルのフローラS(G2)も注目のレースである。

 フローラS組からはレディパステル(2001年)、サンテミリオン(2010年・同着アパパネ)、ユーバーレーベン(2021年)と3頭が樫の女王へと上り詰めた。桜花賞(G1)を規格外の走りで圧勝したリバティアイランドで断然の雰囲気が漂いつつあるが、今年も距離延長を味方に一矢報いる素質馬が潜んでいるかもしれない。

 オークス(G1)と好相性のフローラSだが、不思議なことに本番で1番人気に推された馬はなぜか未勝利。一応3頭中2頭が3着以内に入っているが、その中で唯一馬券圏外に惨敗したのが、2012年のミッドサマーフェアだった。

 実際、フローラSで見せた同馬のパフォーマンスは、先行馬が粘り込む展開を中団から上がり3ハロン33秒4の鬼脚で突き抜ける強い内容。前走の君子蘭賞(500万下・当時)に続く連勝だっただけに、ファンが期待したのも頷ける。

 しかし、ミッドサマーフェアにとって最大の不運だったのは、よりにもよって同世代にジェンティルドンナという怪物がいたことだろう。

 周知の通り、この年のオークスを5馬身差の大楽勝で飾ったジェンティルドンナは、秋の秋華賞(G1)も制して三冠牝馬となっただけでなく、次走のジャパンC(G1)であのオルフェーヴルすら倒した歴史的な名牝である。

 本馬の後々の活躍を知っていれば、単勝1倍台の大本命に推されても当然といえる実力の持ち主なのだが、3番人気で出走したように当時はまだ絶対的な存在ではなかったことも事実だ。

 実際、騎乗停止中だった岩田康誠騎手の代打として手綱を任された川田将雅騎手はレース後、「ヴィルシーナとミッドサマーフェアをマークして2頭のことだけを考えていきました。3番人気だったのは乗り替わったこともあるし、まだ信頼されていないんだなと思いました」とコメント。リーディングを独走する現在ならまだしも、当時はまだ売り出し中の若手騎手だったことが、ファン心理に影響した可能性を振り返っている。

 これに対し、13着に惨敗したミッドサマーフェアの蛯名正義騎手(現調教師)は、連勝時と同じようなポジションから伸び切れなかった敗戦に首を傾げざるを得なかった。「何の不利もなく流れに乗れていたので、まず負けないだろうという気持ちでした」という敗戦の弁からも戦前の手応えと異なる結果に納得していない気持ちが伝わってくる。

 ただ、当時の蛯名騎手が「前走よりも走りのバランスが悪く、躓くような走りでした」と気にしていたことも、レース中で多少なりとも関係していた可能性はある。それは、後にミッドサマーフェアが左前繋靱帯炎を発症していたことで明らかとなった。

 とはいえ、スターの階段を駆け上がっていったジェンティルドンナと、故障から復帰後に1勝も挙げることなくひっそりとターフを去ったミッドサマーフェアとの明暗は、両馬が繁殖牝馬となってから、さらに開いたともいえる。

 2012年度の年度代表馬にも選出された女王は、産駒のジェラルディーナが昨年のエリザベス女王杯(G1)を制し順風満帆な一方で、ミッドサマーフェアはまだこれといった活躍馬を出せずにいる。

 今となっては比較するのも酷な2頭だが、フローラSが行われる時期になると、ふと夏至祭のことを思い出すのであった。

高城陽

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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