C.ルメール「大ヒンシュク」のピースサインから4年…25年目苦労人ジョッキーが“因縁の相手”の代打で重賞チャンス
27日、新潟競馬場では新潟2歳S(G3)が行われる。前日最終オッズ4.4倍の1番人気に支持されているのは、無傷2連勝で戴冠を狙うアスコリピチェーノ(牝2歳、美浦・黒岩陽一厩舎)だ。
5頭が10倍を切る混戦模様を呈している一戦で、ダイワメジャー産駒のこの馬が1番人気に推されているのは、初戦の鮮やかな勝ちっぷりが要因の一つだろう。
6月24日の東京2歳新馬(芝1400m)でC.ルメール騎手を背にデビューしたアスコリピチェーノは、直前の追い切りで2歳離れした素軽い動きを披露。単勝1.7倍の圧倒的1番人気に支持され、レースを迎えた。
五分のスタートを切ったアスコリピチェーノだったが、行き脚がつかず道中は中団やや後方の位置取り。直線の長い東京とはいえ、4角で11番手、残り400mを切った辺りでも先頭からはまだ8~9馬身ほどの差があり、万事休すと思われた。
ところが、ルメール騎手がうまく外に切り替えて、前方に視界が広がると、アスコリピチェーノは一気にギアアップ。鞍上のムチが1発、2発と飛ぶと、あっという間に先行集団を交わし去り、最後は手綱を抑える余裕も見せて、2着に2馬身半の差をつけての完勝だった。
レース後、「瞬発力があり、最後はいい脚で使いました」とルメール騎手が納得の表情を見せると、管理する黒岩調教師も「血統的に気負うところがあるかと思いましたが、落ちつきがあり、実戦でも普段通りに走っていました」と手応えをつかんだ様子。ルメール騎手の「距離は1600mでも大丈夫」という後押しもあり、7月中旬には新潟2歳Sを目標にすることが陣営から発表された。
ところが今週末は札幌でワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)が開催中。初戦の手綱を取ったルメール騎手はJRA代表の一人として選出されたため、新潟では騎乗できないことになってしまった。
そこで陣営が白羽の矢を立てたのが、騎手生活25年目を迎えた43歳のベテラン北村宏司騎手である。
“因縁の相手”の代打で重賞チャンス
1999年に藤沢和雄厩舎所属としてデビューした北村宏騎手は、これまでダンスインザムード(06年ヴィクトリアマイル)、スピルバーグ(14年天皇賞・秋)、キタサンブラック(15年菊花賞)とのコンビでJRAのG1を3勝。2013~14年には2年連続で年間100勝超えも果たした関東のトップジョッキーの一人だった。
ところがまさに脂が乗り切り、これからという時に度重なるケガに襲われてしまう。
15年12月には左膝関節捻挫を発症し、同月の有馬記念(G1)に挑むはずだったキタサンブラックとのコンビをあえなく解消。翌16年の春に復帰したがケガが再発し、10日足らずで手術のため再び4か月の休養を余儀なくされた。
その後も、19年と21年に落馬負傷で、それぞれ約5か月戦線離脱を経験。度重なるケガの影響もあってか、本来の実力を発揮できなかった昨年は自己ワーストの9勝にとどまっている。
ちなみに19年3月の落馬は、ルメール騎手のレース中の斜行が原因。重傷を負った北村宏騎手の容体を知らなかったルメール騎手は、当日のメイン競走オーシャンS(G3)をモズスーパーフレアで制した際、勝利インタビューで“ピースサイン”をしたことは、ファンの間でも物議を醸した。
今回、奇しくもルメール騎手の代打という形でアスコリピチェーノの手綱を託された北村宏騎手。今年はすでに昨年を上回る23勝をマークし、この夏の新潟開催では8月12日に6週間ぶりの勝利を挙げると、先週末は土日に1勝ずつ、そして26日(土)には3か月ぶりに1日2勝の固め打ちと好調を維持している。
幾多もの苦難を乗り越えようやく完全復活が近づいてきたといえるだろう。いま、北村宏騎手が見据えるのは、18年8月の関屋記念(G3)以来、5年ぶりの重賞制覇だけだ。
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