
【秋華賞】リバティアイランド超えの豪脚も「動きたい時に動けなかった」。WASJ優勝&重賞5勝「絶好調」岩田望来、それでも遠いJRA・G1は40連敗

ゴール直後、前を行く女王の姿を確認して敗北を悟った岩田望来騎手は、馬上で深く首を垂れてうなだれた。自身にとって節目となる40回目のG1挑戦は、またも悔しさとともに終わった。
「チャンスはあると思ってます」
秋華賞(G1)前の共同会見の席で、女王リバティアイランドを前に岩田望騎手はそう力強く語った。「ローズS(G2)のように自分の競馬をすれば、張り合えるだけの脚を持っている」と話す根拠は、日本レコードを更新したトライアルで深めた自信だ。
三冠女王リバティアイランド超えの豪脚も…
実際に、秋華賞でマスクトディーヴァと岩田望騎手が記録した上がり3ハロン33.5秒は、リバティアイランドのそれを上回るメンバー最速だ。だが、上がり3ハロン最速=勝利とはならない。事前から「4コーナーから左に張ってしまう」と懸念していた弱点を露呈し、抜群のエスコートを見せた川田将雅騎手とリバティアイランドに決定的な差をつけられてしまったことは大きな敗因になった。
岩田望騎手といえば、岩田康誠騎手を父に持つ言わずと知れた競馬界のサラブレッドだ。デビューイヤーに37勝を挙げて新人王に輝いた2世ジョッキーは、2年目に勝ち星を倍増させる76勝。あっという間にリーディング上位騎手の仲間入りを果たした。
しかし、その一方で肝心の重賞レースで結果が出ない。平場では新人離れしたセンスの良さを見せるも、大きなレースになると途端に存在感を失う。デビューからの重賞連敗はいつしか100の大台が見え、大レースで抜群の勝負強さを誇る父と比較されるたびに「息子の方は勝負弱い」と囁かれた。

徐々に風向きが変わり始めたのは、デビュー4年目となった昨年だ。ロータスランドとコンビを組んだ京都牝馬S(G3)で重賞初制覇を飾ると、勢いそのままに高松宮記念(G1)でも2着に健闘。秋にはJBCレディスクラシック(G1)をヴァレーデラルナで勝ち、交流重賞ながらG1初制覇も飾っている。勝ち星も初の100勝超えを果たした。
そして迎えた今年、岩田望騎手はさらに加速した。ここまで重賞5勝を挙げる活躍を見せると、初出場となったワールドオールスタージョッキーズで総合優勝。中央G1勝利も時間の問題と思われた中で迎えたのが、今回の秋華賞だった。
だが、目の前の壁はあまりにも高かった。
「春はテレビ越しに『凄い馬だな』と見てるだけの立場。そんな馬と牝馬三冠の最後に一緒に走れるのは、凄く光栄なこと。彼女(マスクトディーヴァ)の今の力を出し切って、二冠馬に立ち向かって行ければと思います」
レース前にそう語っていた辻野泰之調教師も、実は岩田望騎手と似た境遇の持ち主だ。64年ぶりに牝馬ながら日本ダービー(G1)を勝ったウオッカなど、数多くの名馬を手掛けた角居勝彦厩舎の厩務員として競馬界入りした辻野調教師は、その後、調教師として厩舎の後を継ぐことに。
角居元調教師と血のつながりはないものの、成功者のDNAを継ぎ、デビュー当初から活躍して当然と思われていた点、そして偉大な先人と比較される重圧と闘っている点は岩田望騎手と変わらない。辻野調教師もまた、年を重ねるごとに着実に成績を伸ばしてはいるもののG1制覇に手が届いていないのだ。
レース後に、川田騎手が「本当にとてもいい内容で走ってくれていたと思います」と振り返った通り、この日のリバティアイランドを負かすことは極めて難しかったに違いない。そういった意味では、岩田望騎手とマスクトディーヴァもまた精一杯のレースをしたのかもしれない。
だが、それでも勝てないのがG1であり、岩田望騎手が超えなければならない壁だ。「思ったより後ろのポジションで、動きたい時に動けませんでした」と敗因を悟っている以上、進化する余地は残されている。岩田望騎手と辻野調教師、偉大なDNAを継ぐ2人の戦いはまだ始まったばかりだ。
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