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年度代表馬の「1年ぶり復活劇」が誰の印象にも残らなかった理由…芸術的な神騎乗だった岡部幸雄×皐月賞馬に見事な逆転勝利も

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ソールオリエンス 撮影:Ruriko.I

完璧な競馬をしたジェニュインが、まさかの完敗…

 25日に開催される今年の中山記念(G2)には、前年の皐月賞馬ソールオリエンスが出走することで注目を集めているが、今から28年前の1996年中山記念も前年の皐月賞馬が出走することで注目を集めた。

 1995年の皐月賞馬ジェニュインは、前走の有馬記念(G1)こそ人気を裏切ったが、皐月賞優勝だけでなく、日本ダービー(G1)でも2着。秋には古馬を相手に天皇賞・秋(G1)でも2着するなど、紛れもない現役屈指の存在だ。この中山記念でも堂々の1番人気に推されていた。

 15頭立て、芝1800mのレースで2枠3番からスタートしたジェニュインは、先行集団を見るような形でインに潜り込む。ロスのない内々でしっかりと脚を溜め込んだ本馬は、4コーナーで先頭集団の直後に付けると、最後の直線ではわずかに空いた最内のスペースを強襲。関東の大ベテラン岡部幸雄騎手の騎乗は、芸術的といえるほど完璧なものだった。

 鮮やかなイン強襲で、馬群から抜け出したジェニュイン。だが、誰もが皐月賞馬の勝利を確信したのも束の間……。「サクラ」を象徴するピンクの勝負服が豪快に1番人気馬をぶち抜くと、最後は1馬身3/4差をつけてゴールしてしまった。

 9番人気の伏兵サクラローレルである。

 最終的に、この年の年度代表馬に輝くサクラローレルだが、当時はまだ無名……いや、競馬ファンから「忘れ去られた存在」と言った方が正確だろう。

 前年の今頃、サクラローレルはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。3連勝で中山金杯(G3)を制し、単勝1.5倍に支持された目黒記念(G2)でも2着と賞金加算に成功。これまで脚元の不安で出世が遅れていたが、春のG1戦線に向け「遅れてきた大物」としてその名を挙げるファンも少なくなかった。

 しかし、春の天皇賞を目指して栗東入りした際、調教中に両前脚骨折のアクシデントに見舞われる。一時は安楽死処分も検討されるほどの重傷だったが、関係者の懸命な努力もあって現役続行を選択。迎えた中山記念は、実に1年1か月ぶりの復帰戦だった。

 サクラローレルのセンセーショナルな走りは本来、この年の天皇賞・春(G1)を彩る中心的なトピックスとなるはずだった。しかしながら、この「遅れてきた大物」の復活劇はファンの印象には強く残らなかった。

土曜の阪神に約6万人が…

 何故なら、彼らは「伝説の土曜日」で、すでにお腹一杯だったからだ。

 土曜日の売上を伸ばしたいJRAの施策の一環で1996年の阪神大賞典は中山記念の前日、異例の土曜開催となった。そして、あろうことか、そこで一昨年の年度代表馬ナリタブライアンと、昨年の年度代表馬マヤノトップガンが激突したのである。

 土曜の阪神に約6万人が詰めかける異常事態を招いたこのレースは、これまで数多くの媒体で紹介されているため詳細は割愛させていただく。しかし、少なくともこの年の天皇賞・春のトピックスは、この1レースに集約されていた。

 大方の競馬ファンがナリタブライアンVSマヤノトップガンの第2ラウンドと見ていた1996年の天皇賞・春。だが、ご存じの通りこのレースを制したのは、一昨年でも、昨年でもなく、この年の年度代表馬サクラローレルだった。

 あれから28年。今週末25日に行われる今年の中山記念で皐月賞馬ソールオリエンスは、奇しくもジェニュインと同じ2枠3番に入った。皐月賞1着、ダービー2着、秋こそ前者が菊花賞3着、後者が天皇賞・秋2着と分かれたが、年末の有馬記念で人気を裏切って惨敗するなど、2頭の軌跡は不思議なほどに似ている。

 果たして、今年の中山記念から前年の皐月賞馬を圧倒するような「遅れてきた大物」が出現するのだろうか。少なくとも勝ち馬の名は記憶に刻んでおきたい。

GJ 編集部

GJ 編集部

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