前年No.1が急上昇!? 期待ハズレの汚名返上へ「宿命の好敵手」スワーヴリチャードとの争い白熱! キズナVSエピファネイアとの共通点とは
種付料7.5倍! 昨年、大ブレイクを果たしたスワーヴリチャード
競馬界に限らず、プロ野球界、プロサッカー界、はたまた会社内の出世争いに至るまで成功と失敗が存在する世界にサクセスストーリーは付き物だ。
例えば、1992年にドラフト4位でオリックス・ブルーウェーブ(現:オリックス・バファローズ)に入団した鈴木一朗選手、つまりイチロー選手の年俸は430万円だった。それがわずか8年後の2000年には5億3000万円(推定)と100倍以上の年俸アップに成功している。
さすがに、そんなイチロー選手と比較はできないが、今年の競馬界にも堂々のジャンプアップを果たした種牡馬がいる。初年度産駒が2年目を迎えたスワーヴリチャードだ。
大阪杯(G1)、ジャパンC(G1)のG1・2勝を引っ提げ、2020年に種牡馬入りしたスワーヴリチャードの最初の種付料は200万円だった。その後3年間の変動はなかったが、昨夏にデビューした初年度産駒が大活躍。2歳リーディングサイヤーでキズナ、エピファネイアに続く3位に躍進すると、2024年度の種付料は7.5倍アップの1500万円と発表された。
強きの価格設定も、約1か月で満口の人気ぶり
「初年度産駒からホープフルS(G1)史上初の牝馬による勝利を飾ったレガレイラが登場するなど、新種牡馬の中で群を抜く活躍を見せたスワーヴリチャードですが、わずか半年程度の成績で種付料が1500万円まで上昇したことには驚きました。
ちなみに種付料1500万円はエピファネイア、コントレイルと並ぶ3位タイという超高額。関係者の間では『さすがに強気すぎないか』という懸念もあったのですが、発表から約1か月程度で満口になるなど、生産界の反応は上々。産駒はスピードタイプが多いですし、やはり早期からしっかり活躍できることが大きな魅力になっているようです」(競馬記者)
今月で初年度産駒のデビューから1年になるスワーヴリチャードだが、上々の……いや、想像以上の好スタートを切ったと言っていい。
ただ、その一方で最近になって、その名を聞く機会が減っていることは少し気になる点だ。
彗星のごとく現れた超高級種牡馬の現在地
昨年の6月以降だけで25勝を挙げるなど、新種牡馬として大きな輝きを放ったスワーヴリチャード。しかし、今年はここまで(以下5月終了時)11勝と、その失速ぶりは小さくない。特に代表産駒となるレガレイラが果敢に牡馬クラシックに挑戦したものの皐月賞(G1)6着、日本ダービー(G1)5着と人気を裏切ってしまったことは記憶に新しいところだ。
その大きな要因となっているのが、距離適性の限界だ。マイル以下のレースが中心の2歳戦で大暴れしたスワーヴリチャードだが、2000m以上のレースが増加する3歳戦になって、産駒が距離の壁にぶち当たるシーンが増えている。
ちなみに芝2000m以上は41戦して、わずか3勝。アドマイヤベルのフローラS(G2)制覇は大きな1勝となったが、距離が2400mに延びたオークス(G1)では9着に惨敗。レース後には横山武史騎手が「適性は2000mくらいかも」と気になるコメントを残している。
「産駒のデビューから1年が経って、じょじょに種牡馬スワーヴリチャードの輪郭が見えてきました。現役時代は主に2000m以上のレースで結果を残していたスワーヴリチャードですが、産駒はマイルを中心に活躍。距離の限界がある産駒も目立っている一方で、実は今年は1400m以下でも未勝利と、極端に短い距離への対応にも苦しんでいます。もしかしたら例えばダイワメジャーのように、ベストな距離適性の幅が狭い種牡馬なのかもしれません。
一方で、芝以上に深刻なのがダートでの成績。昨年も4勝だけでしたが、今年はここまで44戦してわずか1勝。どうやらダートはからっきしのようで、それが勝ち星の伸び悩みの大きな原因になっています。もちろん、まだ1年が終わっただけなので、今後様々なタイプが登場すると思いますが、2歳新馬戦も始まったので、そろそろ再び存在感を示しておきたいですね」(別の記者)
その一方で記者曰く、ここにきて評価を上げているのが、スワーヴリチャードと同じく昨夏に初年度産駒がデビューしたレイデオロのようだ。
昨年のNo.1新種牡馬レイデオロが汚名返上の活躍
「昨年の新種牡馬の主役だったレイデオロですが、2歳リーディングでは11位とスワーヴリチャードに大きく水を開けられる結果になりました。
しかし、2000m以上のレースが増える3歳戦になって徐々に存在感を発揮。ここまで16勝は、すでに昨年の14勝を上回っています。まだ代表産駒がすみれS(L)勝ちのサンライズアースと重賞勝利こそありませんが、昨年はその重賞に挑戦することすらできませんでしたからね……。勝ち星の数だけならスワーヴリチャードを上回っていますし、どうやらエピファネイアのように長い距離で真価を発揮する産駒が多いだけに、これからが楽しみな存在です」(同)
実際に、先月の千葉サラブレッドセールにて全体2番目の高値となる9240万円でレイデオロ産駒のキャンディネバダの2022を落札した「ベラジオ」の林田祥来氏が自身のXで「父レイデオロに対して色々意見はあるみたいですが……」とポストしていたように、一部の競馬ファンからは早くも「期待ハズレ」「失敗作」といった厳しい評価が下されていたレイデオロ。
しかし、長い距離が増えたここに来てようやく真価を発揮し始めた経緯には、記者の話す通りどこかエピファネイアと重なるところがある。
ちなみに昨年の2歳リーディングでスワーヴリチャードを上回ったキズナとエピファネイアが2013年の日本ダービーで1、2着を分け合ったライバル同士なら、レイデオロとスワーヴリチャードも2017年の日本ダービーで1、2着を分けた因縁の間柄だ。
今春、キズナ産駒のジャスティンミラノが皐月賞を、エピファネイア産駒のダノンデサイルが日本ダービーを制したように、現役時代だけでなく、生涯に渡ってライバル関係が続いている両雄。レイデオロとスワーヴリチャードも、いつか種牡馬界の覇権を懸けて争うような好敵手に成長することを期待したい。
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