JRA 福永祐一「ええ素材や」G1・7勝馬の娘が小倉競馬「最速」の上がりタイムで快勝。秋華賞(G1)最大の惑星はクロノジェネシスとも共通点?

 先週5日、小倉9Rの筑後川特別(2勝クラス)は、福永祐一騎手が騎乗した1番人気ジェラルディーナ(牝3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)が勝利。国内外でG1・7勝を挙げたジェンティルドンナの娘が、前走マカオJCT(1勝クラス)からの連勝で、昇級戦も難なく突破した。

「ええ素材や――」

 福永騎手がレース後、そう口にしたのも頷けるほど、この日のジェラルディーナは強かった。

 芝1800mで行われた一戦。後方2番手から競馬を進めた福永騎手とジェラルディーナだったが、1000m通過は62秒0のスローペース。小回りで直線の短い小倉競馬場でもあるだけに、非常に厳しいレース展開を強いられることとなった。

 盤石の立ち回りで最後の直線を迎えた武豊騎手騎乗の2番人気ジュンブルースカイとは対照的に、ジェラルディーナは4コーナーでは1頭大外。一旦は万事休すかと思われたが、そこから信じられないような鬼脚を披露。先に抜け出したジュンブルースカイをラスト100mで抜き去ると、最後は1馬身半の差をつけてフィニッシュした。

「非常に強い競馬でした。2着のジュンブルースカイは昨年の東京スポーツ杯2歳S(G3・当時)で3着に入っており、決して弱い馬ではありません。それを並ぶ間もなく差し切り、最後は手綱を緩める余裕まで見せましたからね。あれだけの脚は小回りの小倉でそう見られるものではありません」(競馬記者)

 記者がそう話すのも納得だ。ジェラルディーナがマークした上がり3ハロン33秒1の切れ味は、今年行われた小倉芝1800m、全53レースの中でも最速。2位は中京記念(G3)でクラヴェルが記録した33秒5だが、こちらは3着であり、しかも直線では最内を付くクレバーな競馬で記録したものだった。

 今回の筑後川特別では、3ハロン目からゴール板まで一度もラップが落ちることのない、いわゆる“加速ラップ”が刻まれ、ラスト2ハロンは11秒5-11秒1。大外から突き抜けてクラヴェルの上がりを0秒4も上回ったジェラルディーナの末脚が、いかに突出していたのかが窺える。

 気になる次走だが、10月に行われる秋華賞(G1)を視野に調整されることが、所有するサンデーレーシングのホームページで発表された。2012年の秋華賞馬でもあるジェンティルドンナの娘が、同レース最大の惑星に浮上したといっても過言ではなさそうだ。

 ちなみに、ジェラルディーナは元々、母ジェンティルドンナと同じく栗東の石坂正厩舎の所属だったが、石坂師が今年2月に定年を迎えたため厩舎は解散。そのため転厩を余儀なくされ、現在は斉藤崇厩舎の管理馬となっている。

 斉藤崇厩舎の代表馬といえば現在グランプリ3連覇中、10月に行われる凱旋門賞(仏G1)に出走予定のクロノジェネシスが挙げられるだろう。

 同馬もデビュー戦で小倉の芝1800mを経験。同じく加速ラップが刻まれたレースで、2馬身差の快勝を収めている。ラスト2ハロンの11秒5-11秒1は、筑後川特別と全く同じタイムだ。3歳春まではG1で善戦止まりだったものの、ひと夏を越して馬体も成長。19年の秋華賞を制し、その後の活躍は御存知の通りである。

「この先、もっと良くなってくる――」

 福永騎手がコメントしたように、ジェラルディーナは今後、さらなる成長を遂げることができれば、厩舎の偉大な先輩であるクロノジェネシスに近づくことも、もしかしたら可能かもしれない。長い目で見守っていきたい1頭だ。

(文=冨樫某)

<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。

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