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吉田豊「1人でG1優勝賞金超え」の悲しい現実、10回勝っても届かない賞金…伝統のレースに迫る「転生」のタイミング

吉田豊「1人でG1優勝賞金超え」の悲しい現実、10回勝っても届かない賞金…伝統のレースに迫る「転生」のタイミングの画像1
吉田豊騎手

 恐れていたことが現実になった。いや、遅かれ早かれ避けられなかったことだろう。

 パンサラッサがサウジC(G1)を制した先週末。日本馬が初優勝する歴史的快挙に世界中が沸いた。SNSでもパンサラッサとサウジCがトレンドを独占し、ファンの関心の高さを証明。世界最高賞金「約13億円」といわれるビッグレースで掲示板に5頭中4頭も日本馬が入ったことも驚きを呼んだ。

 国内のダートで惨敗した1戦しかないパンサラッサを世界的なダートのG1に出走させた矢作芳人調教師の慧眼も素晴らしいが、見事に大役を果たした吉田豊騎手の巧みなペース判断も光る快勝だった。愛弟子の坂井瑠星騎手も、同日の1351ターフスプリント(G3)を管理馬のバスラットレオンで逃げ切ったように乗れる若手だが、旧知の仲であるいぶし銀のベテラン騎手をあえて起用したところも、G1で乗り替わりが多い競馬界でファンの支持を集めている。

 一方、日本馬が初優勝した今年のサウジCに対し、閑古鳥が鳴くこととなったのは、JRAが誇るダートの2大G1のひとつであるフェブラリーS(G1)だ。

 本レースは1984年に前身となるフェブラリーハンデキャップとして創設された伝統あるダート重賞。94年にそれまでのG3からG2へ昇格し、レース名もフェブラリーSに改称された。そして97年に初めて中央競馬のダートG1となり、国際競走に指定された2007年からは、外国馬の出走も可能になった歴史を持つ。

 しかし、国際競走とは名ばかりで今年出走したシャールズスパイト(9着)が、顔見せ程度に参戦したのが外国馬の初来日。日本のトップクラスはというと、国内ダートの最高峰レースに見向きもせずにサウジアラビアに向かっている。フェブラリーSを快勝したレモンポップの走りは見事だったものの、戦前からレースレベルの低下を危惧する声が出たのは、必然の流れだった。

 ではなぜフェブラリーSが、このような事態に陥ったのかという話になるのだが、最大の理由は賞金的な格差と栄誉の違いと考えられる。

伝統のレースに迫る「転生」のタイミング

 開催時期が被る2月下旬のサウジカップデーとともに、3月下旬にもドバイワールドC(G1)が行われるのだから、ダート路線の馬が海外に目を向けるのは当然。芝スタートのマイル戦の上に1着賞金も1億2000万円に過ぎないフェブラリーSは、約13億円のサウジCや約9億円のドバイワールドCにはかなわない。

 それもダートの一線級が勝てなかったサウジCで芝路線を歩んでいたパンサラッサやジオグリフがあっさり好走する嬉しい誤算のオマケまでついた。来年以降は必ずしもダートで実績のある馬でなくても通用するという見方もされるはずだ。

 ただでさえ招待レースで陣営の負担も少なくなる上に、サウジアラビアの場合は騎手の配分も10%(日本は5%)と高い。ちなみに吉田豊騎手が獲得すると思われる約1億3000万円は、フェブラリーSの1着賞金1億2000万円を1人で超える。出走馬にしても5着以上でこれを上回るのである。

 これでは国内のG1に出る意味がないと思われても仕方がないだろう。既にネットの掲示板やSNSでは「フェブラリーSは終わった」「同時期の海外レースが魅力的過ぎる」「もう2月の開催はやめた方がいいのでは?」と存在価値を疑問視する意見もあった。

 パンサラッサの勝利で来年以降もこういった傾向に拍車が掛かることは容易に想像できるため、JRAとしてもフェブラリーSの見直しを迫られることになりそうだ。賞金増額で競争力を高める目論見もあっただろうが、現実的にはもはや手の施しようがないところまで追い詰められた感もある。

 このまま有名無実の状況が加速するようなら、近い将来に開催時期の変更やG1の看板を下ろすという選択肢も出てくるのではないか。

高城陽

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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