池添謙一「イジメですね」オルフェーヴルでも現役最強の座が陥落……かつてC.ルメールも皮肉った「不運」が3連勝で桜花賞(G1)に挑んだ逸材を襲う
「イジメですね」
2012年の11月、ジャパンC(G1)出走を前に当時の現役最強馬オルフェーヴルの主戦・池添謙一騎手は頭を悩ませていた。
三冠に加えて有馬記念(G1)も勝利するなど堂々の年度代表馬に輝いた前年と打って変わり、この年のオルフェーヴルはここまで5戦してわずか2勝。凱旋門賞(G1)で2着するなど、その実力は世界でもトップクラスだったが、如何せん取りこぼしが目立ち、守り続けた現役最強の座が少しずつ揺るぎ始めていた。
その主な原因が「枠運の悪さ」だった。連敗を喫した始動戦の阪神大賞典(G2)、天皇賞・春(G1)は連続して大外枠。6枠11番だった宝塚記念(G1)こそ勝利したものの、海を渡ってもその流れは消えず、フランスのフォワ賞(G2)と凱旋門賞も大外からのスタートとなってしまった。
そして迎えたジャパンCで、またも大外枠……。「決まったものは仕方ない」と腹を括った池添騎手だったが、「イジメですねえ」と思わず愚痴りたくなるのも無理はないだろう。
それもあろうことか、オルフェーヴルはこのジャパンCで三冠牝馬ジェンティルドンナに世代交代を許してしまう。現役最強馬の歯車が度重なる枠順の不運によって、大きく狂ってしまったことは言うまでもないだろう。
競馬は陸上競技のように“外枠”に考慮してスタート地点が変わったりはしない。従って、枠が外であればあるほど、必然的にゴールまで長い距離を走らされるというわけだ。
たかが数メートルのことだが、0.1秒を争う競馬で、この差が意外に大きいことは多くの競馬ファンも知る事実だろう。一昨年にサトノレイナスと桜花賞(G1)に挑んだC.ルメール騎手が、8枠18番に決まって「18番、ありがとうございます!」と皮肉ったことは有名なエピソードだ。
今年も、そんな「枠運の悪さ」に頭を悩ませられている馬がいる。10日の京成杯オータムH(G3)に出走するトーセンローリエ(牝3歳、美浦・小笠倫弘厩舎)だ。
「さすがに、この枠は厳しかったですね……」
今春の桜花賞に挑んだトーセンローリエは絶好調だった。3連勝中と理想的な形で本番を迎えたが、巡ってきた枠順は、まさかの大外枠。8枠18番から成す術もなく敗れた。無論、仮に枠に恵まれてもリバティアイランドら上位陣に割って入れたかはわからないが、それでも陣営にとっては悔いの残る一戦だったに違いない。
だが、これも競馬。鞍上の横山和生騎手も、最後には「でも、今日の経験は次に生きてくるはずです」と前を向いていた。
しかし、一息入れて仕切り直しとなった前走のクイーンS(G3)で、トーセンローリエはまたも大外枠からのスタート……。6着に敗れたレース後、鞍上の吉田隼人騎手も「この枠で、やりようがなかった」「最後は伸びてきていますが、やはり枠が応えました」と不運を嘆いている。
そして、迎えた今回の京成杯AH。逆襲を期すトーセンローリエを待っていたのは、3戦連続大外枠という残酷な現実だった。
「今回は大外とはいえ、11頭立てなので『そこまで不利ではない』という声もあります。ただ、トーセンローリエは気性面に課題のある馬。だからこそ馬込みでレースを運びたいのですが、そういった意味でも大外枠は輪をかけて“痛い”と思いますね。こればかりは仕方のないことですが、舞台の中山マイルは春にアネモネS(L)を勝った舞台。なんとか頑張ってほしいですね」(競馬記者)
記者曰く、馬自身は「順調に来ている」と陣営も手応えを感じているようで、状態自体は休み明けだった前走よりも上向いているという。
アネモネSで2着に負かしたコンクシェルが今夏、2勝クラス(不知火特別)を5馬身差で圧勝しているように、本来の実力さえ発揮できれば、ここでも上位争いはできるはず。不運を跳ね返すような力走を期待したい。
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