【高松宮記念】トウシンマカオ&ビッグシーザー「絶滅寸前」超特急サクラバクシンオーの血に巡ってきたチャンス。雨予報は因果か、それとも
14年前、雨に泣いたショウナンカンプの仔
「こういう馬場はかわいそうでした」
スプリント王決定戦・高松宮記念(G1)を3週後に控えた2010年のオーシャンS(G3)。1番人気に推されたショウナンカンプの仔ショウナンカザンは、15着グランプリエンゼルから遅れること10馬身差の最下位に敗れた。
未勝利を脱出するのに10戦を要したショウナンカザンだったが、遅咲きの多いプリンスリーギフト系らしく、徐々にそのスピードが開花。コツコツと自己条件を勝ち上がると、スワンS(G2)4着、阪神C(G2)5着を経て、シルクロードS(G3)2着とついに重賞で連対を果たした。
迎えたオーシャンS(G3)は、そんなショウナンカザンにとって、またとない重賞制覇のチャンスだった。サクラユタカオー、サクラバクシンオー、ショウナンカンプと日本競馬が培ってきたスピード血統の申し子が、ここで重賞を勝利してG1制覇、そして種牡馬になってその血を紡いでいく――。
そんなロマン派の応援もあったのか、ショウナンカザンは重賞連勝中だったキンシャサノキセキを抑えて1番人気に支持された。
しかし、先述した通りショウナンカザンは、まったく本来の力を出せないまま16着の最下位に沈んでいる。生憎の雨に脚を取られ、これには名手・藤田伸二騎手も「ハミが掛かろうというところでノメってしまって……」と手の施しようがなかった。
類稀なるスピードを誇るプリンスリーギフト系だったが、最大の弱点が「雨」だったのだ。
これでリズムを崩したのか、ショウナンカザンは続く高松宮記念でも16着に大敗。結局7歳まで走り続けたが、種牡馬入りどころか、重賞さえ勝てずに引退してしまった。
また、ショウナンカザンの父ショウナンカンプもその後G1連対馬を輩出したものの、これといった後継種牡馬を残すことができずに種牡馬を引退している。
ショウナンカンプに替わってビッグアーサーが台頭
ショウナンカザンのオーシャンSから6年後、高松宮記念を制したサクラバクシンオー産駒のビッグアーサーが種牡馬入りし、その血は辛くも紡がれることとなった。プリンスリーギフト系はもう世界規模でも絶滅寸前であり、日本はその貴重な血がつながる数少ない国として知られている。
そんな中、今週末の高松宮記念はプリンスリーギフトの血を引く一族からすれば「大一番」と言っても過言ではないだろう。ビッグアーサーから非凡なスピードを受け継いだトウシンマカオとビッグシーザーは、十分にこのレースを勝てるだけの実力馬だからだ。
ちなみに親子4代でJRAのG1に勝利した例はグラスワンダー、スクリーンヒーロー、モーリス、その産駒となるピクシーナイト、ジェラルディーナ、ジャックドールしかいない。
果たしてサクラユタカオー、サクラバクシンオー、ビッグアーサーのサイアーラインを継ぐトウシンマカオとビッグシーザーは、高松宮記念を勝利して、プリンスリーギフトの血をさらに後世に残せるだろうか。
何の因果か、今週末は雨予報。できる限り、良い馬場コンディションでレースが行われることを祈るばかりだ。
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