JRA苦渋の無観客継続も、世界のビッグレースは対応様々。凱旋門賞(G1)とは対照的に、アメリカのクラシックレースは大観衆動員か
JRAでは2月29日から始まった無観客競馬が依然として続いている。当初は、今週末の15日から新潟競馬場のみ、有観客開催の実施が予定されていた。しかし、8日に「全国規模での新型コロナウイルスの感染拡大傾向が顕著」という理由から、無観客開催が継続されることになった。
岩手競馬、ばんえい競馬などではすでに有観客開催が実施されており、今のところ大きな問題は発生していない。これは主催者が細心の注意を払った感染防止策を徹底しているおかげだろう。
また、10日に盛岡競馬場で有観客にて交流重賞・クラスターC(G3)が行われた。マテラスカイで同レースを制した武豊騎手は「久しぶりのお客さんの前のレースだったので、馬の方は落ち着いていたんですが、僕が緊張しました」と冗談交じりにコメントした。
それに続けて「お客さんに見に来ていただいてこその競馬かなということを改めて実感しました。今日は久しぶりにファンの皆さんの前でレースができて嬉しかったです」と話していることから、ファンのみならず騎手にとっても有観客開催の喜びが伝わってくる。
1日も早い有観客での開催再開が待ち望まれるが、こればかりは新型コロナウイルスの状況次第となるだろう。万全の状態で再開する日を楽しみにしたい。
その一方、世界の競馬でも秋のビッグレースの動向が明らかになってきた。
まず、フランスで10月に開催を予定している凱旋門賞(G1)は無観客での開催となりそうだ。フランス政府がパリ近郊での5000人以上集まるイベントの禁止を、10月末まで延長すると発表したことが大きく影響している。12日にイギリスの『Racing Post』が報道した内容によると、まだ検討段階とのことだが無観客での開催が濃厚だろう。
これと対照的なのが、9月にアメリカのチャーチルダウンズ競馬場で行われるケンタッキーダービー(G1)だ。アメリカの『bloodhorse.com』によると、観客を2万3000人以下に抑えて開催するというのだ。
大勢の観客を入れるにあたって、新型コロナウイルスの感染防止策は取られるのだが、約2万人の観客を動員するということには驚きだ。例年、10万人以上の観客が入るレースということ考えれば、5分の1以下の観客に限定することになるが、大人数であることに変わりはない。
また、アメリカの3大スポーツのうち、現在シーズン中のMLB(野球)とNBA(バスケットボール)は無観客で開催中。その状況下で、競馬が大観衆を入れて開催するのである。
「もし、ケンタッキーダービーが原因で新型コロナウイルスの感染拡大するようなことが発生してしまうと、その余波は日本にも影響を及ぼすはずです。JRAでも、有観客開催まであと一歩のところまで来ていますが、それが白紙になってもおかしくないかもしれませんね」(競馬記者)
ケンタッキーダービーは例年5月に開催されるが、今年は新型コロナウイルスの影響で9月に延期になっている。この経緯を考えると、主催者が有観客での開催にこだわるのも納得できる。
ぜひとも無事に開催を終えて、ケンタッキーダービーが大観衆を入れての成功例として世界に発信されることを願うばかりだ。