JRA「幻のダービー馬」といわれた府中のレコードホルダーが種牡馬を引退! 現役時代はあのオーナーにG1初勝利をプレゼント
2日、2010年のNHKマイルC(G1)を鮮やかな直線一気で優勝したダノンシャンティ(牡13歳)が、種牡馬生活に別れを告げたことがわかった。同馬を繋養しているビッグレッドファームがホームページで発表した。今後は1日に移動した「NPO法人ホーストラスト北海道」で余生を過ごすことになりそうだ。
ダノンシャンティは2008年のセレクトセール出身で、ダノンの冠名で知られるダノックスが2750万円で落札した馬である。
同馬は2009年11月の京都でデビュー戦を好位から抜け出して勝利。2戦目のラジオNIKKEI杯(G3・当時は阪神)を3着、3戦目の共同通信杯(G3)を2着と惜敗した。素質の高さを見せながらも勝ち切れない競馬が続いたが、飛躍のきっかけとなったのは安藤勝己騎手(現在は競馬評論家)との出会いだった。
初コンビとなった毎日杯(G3)にはルーラーシップ、リルダヴァルなどの良血馬がいたこともあり3番人気での出走。前残りのスローの展開を、異次元ともいえる切れ味で差し切って初重賞勝ちを決めた。
この鮮烈な勝利を評価され、次走のNHKマイルC(G1)では1番人気の支持を集めた。18頭のフルゲートで争われた3歳マイル王決定戦を、直線16番手の後方待機策から大外一気で差し切り勝ち。G1の大舞台で大胆な騎乗を見せた名手の手綱捌きも見事だったとはいえ、他馬が止まって見えるかのような強烈な切れもまた、見る者に強烈なインパクトを残した。
勝ち時計の1分31秒4は、前年の優勝馬ジョーカプチーノが更新したレコードの1分32秒4を1秒も上回る好時計。あれから10年経過した現在でも燦然と輝いている。それまでG1レースを勝てなかったダノックスにとっても、これが嬉しいG1初優勝を手に入れた瞬間だった。
そして変則二冠を目指すべく、日本ダービー(G1)への出走を予定していたが、前日に右後脚の骨折が判明したためにあえなく出走取消となってしまった。同年暮れの有馬記念で復帰するも9着と精彩を欠いた。
11年の京都記念(G2)と大阪杯(G2・当時)をいずれも4着に敗れた後、安田記念に向けて調整されていたが、右前浅屈腱炎を発症したこともあって復帰が難航。最終的に現役引退となり、2012年より種牡馬となった。
「13歳とまだ若い内での引退は残念な気がしますね。種牡馬としては芝の重賞を勝ったスマートオーディン、ダートで活躍したサイタスリーレッドを出すなど、父であるフジキセキと同じく芝ダート兼用で持ち味を発揮していました。
父の後継としての期待も高かった馬ですが、同じくフジキセキ産駒のイスラボニータも種牡馬入りしていますからね。のんびりと余生を過ごしてもらいたいです」(競馬記者)
また、種牡馬生活は終えたとはいえ、ダノンシャンティの産駒は来年も生まれる予定であることは朗報だ。
この中から「幻のダービー馬」といわれた父の無念を晴らすニューヒーローが現れることに期待したい。