有馬記念(G1)クロノジェネシス「オグリキャップ超え」新記録の違和感!? 最低記録ゴールドシップが「翌年」倍増……JRAがぶら下げた「60万円分の純金」とは
いよいよ明日27日に迫った今年最後の競馬、有馬記念(G1)。今の競馬は「女の時代」。
今年のファン投票1位も昨年のアーモンドアイに続き、牝馬のクロノジェネシスだった。
しかし、このクロノジェネシスが獲得した21万4472票がちょっとした話題になっていることをご存知だろうか。1989年にオグリキャップが獲得した19万7682票を大きく更新する歴代1位となっているからだ。
オグリキャップが現役だった当日とは異なり、今はJRAの公式サイトを通じてインターネットで簡単に投票できる時代。最高記録更新は歴史の必然と言えるかもしれない。だが、それでもオグリキャップはディープインパクトやウオッカという“高波”を乗り越え、1989年から最多記録を守り続けてきたのだ。
確かに昨年の秋華賞(G1)、今年の宝塚記念(G1)を制したクロノジェネシスは文句なしの名牝だ。ただ、それでもディープインパクトやウオッカ、そして競馬の代名詞といえるアイドルホース・オグリキャップの記録を破ったことに違和感を持ったファンも少なくなかったのではないだろうか。
一体、今年のファン投票で何が起こったのだろうか。
「大前提として、今年は有効投票総数が昨年の約158万票を100万票以上も上回る、約263万票だったことが挙げられます。
その背景として、新型コロナウイルスが多くの娯楽やスポーツイベントに影響を及ぼす中、無観客ながら安定した開催を続け、ネットで気軽に参戦できる競馬が大きく注目されたことがあります。
ただ、それ以上に大きかったのがアーモンドアイとコントレイル、デアリングタクトが激突し『世紀の一戦』と呼ばれた今年のジャパンC(G1)が、有馬記念のファン投票募集期間と重なって開催されたことではないでしょうか。
競馬誌やスポーツ新聞などだけでなく、バラエティー番組やNHKなどでも紹介されるなど、多くの人がジャパンCを通じて競馬に触れたことで、有馬記念への興味に繋がったのだと思います」(競馬記者)
確かに、異様な注目を集めた今年のジャパンCの馬券は272億円を売り上げ、昨年よりも100億円近い爆上がりとなっている。これが“導火線”となって、有馬記念のファン投票へ繋がったというわけだ。
一方、別の記者は「異なった視点」からファン投票の票数増加を指摘している。
「ネットで投票できるようになったとはいえ、様々な娯楽で溢れ返っている昨今の競馬熱と、“オグリブーム”の頃の競馬熱と比較するのは酷でしょうね。
毎年注目される有馬記念のファン投票1位ですが、実はあのオルフェーヴルでも2013年に8万1198票と、1位が10万票を超えた1980年以降で最低の数字となるなど、不名誉な記録を持っていました。
それを更新してしまったのが、翌2014年のゴールドシップの6万6796票。そこで2年連続の最低記録更新を重く見たJRAは、翌2015年から例年の豪華賞品に加えて”特賞”として『1人が投票できるMAXである10頭に投票した人だけ』を対象に、抽選で60万円分の純金を使用した”純金馬像”まで用意しました」(別の記者)
その結果、翌2016年に再びファン投票1位に輝いたゴールドシップの獲得票は12万981とほぼ倍増。以降も毎年安定して10万票を超えるようになり、JRAによっても一安心といったところだろうか。
ちなみに、今年は抽選で60名に三重「霜ふり本舗」の松坂牛ロースステーキが特賞となっていた。自分が有馬記念に出てほしいと思う馬だけに投票するのが、本来のファン投票の姿だが、ひと手間かけるだけで抽選のチャンスを得られるのなら……。
その結果、投票が安易な有名馬に票が集中するのは道理といえるのかもしれない。