JRA川田将雅「ルメール王朝」に一矢……武豊、岡部幸雄ら3名だけが名を連ねるMVJを超える「騎手最高の栄誉」とは
コントレイルとデアリングタクトによる無敗三冠、そしてアーモンドアイによる前人未到の芝9冠……記録ずくめだった2020年だが「誰の年」だったかと述べると、間違いなく「C.ルメール・イヤー」だったといえるだろう。
自身2度目の200勝超えとなる204勝に加え、G1・8勝は自己最多、そしてJRA最多記録タイと内容も充実。賞金王は言わずもがな、45億3913万円は2位を10億円以上突き放した断トツの成績だ。
昨年は「牝馬」が、古馬の牡馬混合・芝G1で10戦9勝という永久不滅級の記録を作った。その原動力がアーモンドアイとグランアレグリアという2頭の女王の手綱を執ったルメール騎手であり、牡馬にとって最後の砦となった天皇賞・春(G1)をフィエールマンで勝ったのも、このフランス人ジョッキーだ。
また、昨秋はG1で1番人気が7連勝と本命党を歓喜させたが、その内5勝がルメール騎手。「ルメールを買っていれば問題ない――」ファンをそんな思考停止にさせるほど、昨年のルメール騎手は絶対的な存在だったと述べても過言ではないだろう。
そんな昨年の結果を受けて4日、JRA(日本中央競馬会)は調教師、騎手部門各賞を発表。ルメール騎手は史上初の4年連続となるMVJ(Most Valuable Jockey)を獲得し、まさに“ルメール王朝”の最盛期を印象付けた。
そんなルメール騎手に一矢報いた男がいる。リーディング2位の川田将雅騎手だ。
ちょうど1年前の1月27日に行われた『2019年度JRA賞』の授賞式で「今年こそはルメールさんに勝って、この壇上のセンターに立ちたい」と誓いを立てた川田騎手は開幕ダッシュに成功。だが、4年連続リーディングジョッキーの猛追に春のG1シーズン半ばで、あっさり首位を奪われると、最後は37勝差をつけられて2位に甘んじた。
しかし、年間167勝は自己最多だった一昨年の152勝をさらに更新する記録。川田騎手自身も確実に前進している。そして、意外に大きかったのが「勝率」でルメール騎手を上回り、最高勝率のタイトルを手にしたことだ。
実は、ジョッキーの年間表彰にはMVJを超える騎手最高の栄誉が存在する。最多勝利、最高勝率、最多賞金獲得の全ての部門を受賞した際に同時に表彰される「騎手大賞」である。
「MVJが勝利数、勝率、獲得賞金、年間騎乗回数ごとに順位付けして、その得点の総合得点により受賞者を決定することに対して、騎手大賞は年間騎乗回数を除く全部門で1位になっている必要があります。
その難易度は言わずもがな。過去に騎手大賞を獲得したのは岡部幸雄さん(2回)と武豊騎手(9回)、そして4年連続MVJのルメール騎手でさえ、過去に1度しか獲得したことがありません。そういった意味で、川田騎手の最高勝率獲得の意味は小さくないと思いますね」(競馬記者)
昨年、勝率2割5分を超えたのは2人だけ。他の騎手は2割にさえ届いていない以上、このフィールドでルメール騎手と戦えるのは現状、川田騎手しかいない。
「Happy new year to you all ! Thank you for your support .May 2021 make all your dreams come true .(あけましておめでとうございます! いつも応援ありがとう。2021年はみなさんのすべての夢が叶いますように)」
先日、自身のインスタグラムを更新し、ファンにそう挨拶したルメール騎手。果たして、ルメール騎手の「すべての夢」は叶うのか。川田騎手との“最後の砦”を巡る攻防が激しさを増しそうだ。