問われるJRA賞「最優秀」の定義。「ファン投票1位」クリソベリルは何故、最優秀ダートホースを逃したのか。記者投票の「主催競走の固執」にナンセンスの声も
先日、JRA(日本中央競馬会)が2020年度の各JRA賞を発表。史上最多の芝G1・9冠を達成したアーモンドアイが年度代表馬に選出された他、無敗の三冠馬コントレイル、デアリングタクトなど、昨年の競馬の主役たちが改めてスポットを浴びた。
その一方で、競馬の最大手ポータルサイト『netkeiba.com』が「netkeiba大賞2020」を開催。各JRA賞が記者投票であることに対して、こちらは競馬ファンの“声”を反映したものとなる。
2020年は2頭の無敗三冠が誕生し、グランアレグリアがマイル以下のG1を3勝するなど、選出という点では「非常にわかりやすい一年」だったといえるだろう。実際に4日に行われた「netkeiba大賞」の中間発表では、年度代表馬のアーモンドアイを含め、ほぼすべてがJRA賞と合致している。
そんな中、唯一異なったのが最優秀ダート馬(ホース)だ。
「netkeiba大賞」による4日の中間発表で2687票を集めて首位に立っているのは、昨年のJRA最優秀ダートホースにも選出されたクリソベリル。以下、チュウワウィザード(1996票)、オメガパフューム(1967票)の3つ巴となっているが、投票期間は7日までだった。最終発表はまだだが、投票数の差的にもクリソベリルの首位はほぼ当確といえるだろう。
一方、6日に発表されたJRA賞で最優秀ダートホースに選出されたのは、186票を集めたチュウワウィザード。こちらは85票の2位クリソベリルにダブルスコアをつける圧勝で、オメガパフュームに至ってはわずか2票に留まっている。
述べるまでもなく、立場こそ違えど記者もファンも同じく競馬を愛する人々。昔とは違い、インターネットが普及し、競馬と強く結びついている昨今、記者とファンの知識量に大きな差はないはずだ。
では一体なぜ、このような乖離(かいり)が生まれてしまったのだろうか。
ファンが選んだクリソベリルと、記者が選んだチュウワウィザードの2020年における直接対決の勝敗は、前者の2勝1敗。直近の対決となったチャンピオンズC(G1)ではチュウワウィザードが勝利したものの、クリソベリルの主戦・川田将雅騎手が「今の具合でよくここまで」と語った通り、状態が本物でなかったことは明らかのようだ。
つまり「どちらが強いのか」という点においては、現状ではクリソベリルに軍配が上がりそうだ。他の部門と同じく、ファンが「最優秀」に選ぶのも当然と言えるだろう。
一方、そんなクリソベリルの倍以上の票をチュウワウィザードに投じた記者たちにとっての「最優秀」とは何なのだろうか。そこには、これが「JRA賞」であることが大きな影響を与えているという。