JRA京都新聞杯(G2)レッドジェネシス快勝で日本ダービー(G1)へ前進! レッド軍団“最後の砦”が片目“失明”でデビュー断たれた兄の無念晴らす
8日、中京競馬場では京都新聞杯(G2)が行われ、3番人気のレッドジェネシス(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)が優勝。今月30日の日本ダービー(G1)出走に大きく前進した。
もし中2週でゲートインを果たせば、同馬を所有する東京サラブレッドクラブ(TC)にとって19年のレッドジェニアル以来、2年ぶり通算5頭目のダービー出走となる。
「『レッド軍団』として知られる東京TCは、これまで通算4頭をダービーに送り込んでいます。しかし、13年レッドレイヴン(12着)、14年レッドリヴェール(12着)、16年レッドエルディスト(9着)、そして19年レッドジェニアル(8着)と結果は出ていません。賞金を加算したことで、2年ぶりの出走が近づき、陣営もホッと肩をなでおろしているのではないでしょうか。
今年のレッド軍団の3歳世代は非常に好調で、朝日杯FS(G1)3着馬のレッドベルオーブが皐月賞(G1)8着からダービーを目指していました。しかし、右脚の骨折が判明し、脱落してしまいました。さらに先週の青葉賞(G2)に出走したレッドヴェロシティは3着に好走しましたが、(2着馬までに与えられる)優先出走権にはクビ差届かず。それだけにレッドジェネシスに対する期待は大きかったはずです」(競馬誌ライター)
歯車がかみ合えば、ダービー3頭出しの可能性もあった東京TC。レッドジェネシスは、レッドベルオーブとレッドヴェロシティの思いも背負って、ダービーに向かうことになりそうだ。
父がディープインパクト、母の父がストームキャットという、いわゆる黄金配合を持つレッドジェネシス。デビュー前からクラブの期待はかなり大きかったという。
「レッドジェネシスは、この世代3番目の総額7000万円(一口17.5万円)で募集されました。1歳当時からその動きはひときわ目立っており、先行募集で満口(400口)に達しました。
また、クラブとしては1歳上の全兄のこともあって、この馬に対する思い入れはより強いかもしれませんね」(同)
レッドジェネシスの母リュズキナはアイルランド生まれの良血で、未出走のままオーストラリアで繁殖入り。現地で2頭を出産後に日本に導入された。そして3頭目の産駒として17年に生まれたのが後にイルブリオと名付けられた牡駒。レッドジェネシスの1歳上の兄である。
レッドジェネシスと同じくディープインパクトを父に持ち東京TCからレッドジェネシスよりも高い総額8000万円(一口20万円)で募集されていた。しかし、申し込み直前に募集中止となり、当初はその理由も明かされていなかった。
詳細が判明したのは数か月後。右目に角膜内皮炎を患い、失明と診断される可能性が高いことが募集中止の原因だった。日本の競馬界では、失明した馬は競走馬登録すらできないため、募集中止は必然の出来事だったのだ。
そして、その年の10月に東京TCのホームページ上にあるコラムが掲載された。そこに書かれていたのは、イルブリオがフランスに渡り、名門パスカル・バリー厩舎が預かるというニュースだった。
片目の“失明”で日本のターフに立てなかった兄の分も……。レッドジェネシスは3週間後、晴れ舞台で躍動することはできるだろうか。(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。