JRA あまりの強さに「凄いね、馬なりでありえない」M.デムーロも大絶賛、「7馬身差」超大物が衝撃のデビュー! 注目2歳は武豊アルナシームだけじゃない
7月に入り、6月に始まった2歳新馬戦もはや一ヶ月が経過したが、各地で期待馬が続々とデビュー。伝説の新馬戦になると噂されたダノンスコーピオン、今年のダービー馬シャフリヤールの近親アルナシームも武豊騎手を背に鮮烈なデビュー勝ちを飾った。
いずれも前評判の高かった馬が期待に応えて勝利を挙げたが、先週の土曜福島でもまた1頭、新たなスター候補が登場した。
それは福島5Rの2歳新馬でデビューしたウィリン(牝2、美浦・林徹厩舎)である。
同馬はG1・6勝馬モーリスを世に送り出したスクリーンヒーロー産駒で、母の父はG1・3勝馬マンハッタンカフェという血統。M.デムーロ騎手を背に鮮烈なデビュー勝ちを飾った。
「一歩目が遅かったが、二の脚が速い。小さいけれどバランスのいい馬。すごいね。馬なりでありえないよ。折り合いも大丈夫だから、距離が延びてもいい」
レース後のデムーロ騎手のコメントからも驚きが伝わるように、これまで多くの名馬に跨って来た名手ですら、その圧倒的な勝ちっぷりには衝撃を受けたようだ。
13頭立てで行われた芝1200mのレース。2枠2番のウィリンはスタートで後手を踏んだものの、二の脚の速さですぐにリカバー。内から先頭を奪うとそのままマイペースの一人旅を決める。
終始楽な手応えで最終コーナーを回ると、懸命に追いすがるライバルを尻目に、後続との差は広がるばかり。最後まで一発もムチを入れられることなく、馬なりで2着馬に7馬身の差をつけて押し切ってしまった。
「函館のアルナシーム、小倉のフィデルに注目が集まっていましたが、ウィリンの勝ち方も凄かったですよ。スプリント戦で7馬身差というのは、よほどスピードで抜けた存在でもなければ難しいです。それも馬なりでしたから、まるで追い切りでも見ているかのようなレースでした。
騎乗したデムーロ騎手が『ありえない』と言っているくらいですからね。今のところは気性も大人しく、折り合いに問題もなさそうです。次走はマイルで見てみたい馬です。次走でも圧勝するようなら、クラシック候補も夢ではないでしょう」(競馬記者)
血統的にもスプリント色が強い訳ではないため、おそらく距離延長も問題ないだろう。デムーロ騎手が太鼓判を押したのも分かる話である。
思い起こせば、クラシックを沸かせた「無敗の二冠馬」ミホノブルボンは中京の芝1000m、「幻の三冠馬」といわれたフジキセキも新潟の芝1200mでデビューした馬。ウィリン陣営もまだ距離についてはまだまだ試行錯誤の段階といえる。
ひとつ気になる点があるとすれば、418キロでデビューしたように小柄なことか。
だが、リスグラシューやラッキーライラック、グランアレグリアのように、デビュー時から古馬となって大幅に体重を増やして本格化した例もある。
ウィリンは夏の新馬でありがちな一介の早熟馬で終わるのか、それとも来年のクラシックを期待される超大物となるのか。
デムーロ騎手も舌を巻いた超大物の次走は見逃し厳禁だ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。