JRA新潟・直線1000m「史上最多勝」元騎手の秘蔵っ子がアイビスサマーダッシュ(G3)で開眼!? 母からスピード、父から直線競馬適性で魅力十分

 25日、新潟競馬場では第21回アイビスサマーダッシュ(G3)が行われる。

 舞台はJRAで唯一となる芝の直線1000mのいわゆる“千直”。その距離と独特の形態から“巧者”が生まれやすいコースである。今年の出走馬の中では、コース成績7戦4勝のライオンボスが歴代でも屈指の“千直巧者”といえるだろう。

 騎手にも同じことがいえる。代表的なのが、今年調教師に転身した西田雄一郎(コース通算21勝)と村田一誠(同22勝)の元騎手2人だ。現役時代にこのコースで好成績を残し、「ミスター千直」と呼ばれた。

 その2人を上回る勝利数を挙げている騎手(元騎手)が2人いる。通算25勝で並ぶのが現役最年長の柴田善臣騎手と中舘英二現調教師である。

 騎手時代の中舘調教師は追い込みのヒシアマゾンと、大逃げのツインターボという個性的な2頭の主戦騎手のイメージが強い。ベテランの域に達してからは主戦場をローカルに移し、年間100勝超えを何と6度も達成している。

 そんな中舘調教師が騎手時代に得意としていたコースの一つが新潟の直線1000mだった。人気薄での好走も多く、回収率も高い。ただし、アイビスSDには縁がなく、9回騎乗して3着が1度あるだけだ。

 15年に騎手を引退し、厩舎を開業した中舘調教師。トレーナーとして約6年間でJRA通算134勝を挙げている。そのうちの2勝(7戦)が“千直”で挙げたものだが、アイビスSDには管理馬を出走させたことがなかった。

 騎手時代に9戦全敗を喫したこのレースに、中舘調教師が初めて送り込むのは3歳牝馬のオールアットワンスだ。

 キャリアまだ5戦というオールアットワンスは、昨年7月に福島でデビュー戦勝利。続くカンナS(OP)でもそのスピードを生かして2連勝を飾った。その後は3着、5着、3着と勝ち切れていないが、すべて1着馬とは0秒2差以内と堅実に走っている。

 今回は初の距離短縮となるが、スタートセンスの良さと51kgという斤量も手伝って上位人気が見込まれている。

「デビュー当初は逃げ馬になるとみられていましたが、ここ2走は中団に控える競馬で崩れずに走っています。今回は軽い斤量を生かして、思い切って逃げる手もあるかもしれません。騎手としてこのコースを熟知していた中舘調教師ですから、どんな策を練ってくるのか楽しみですね。

最終追い切りでもいい動きを見せていて、勝負気配が漂います。血統的にも、この舞台で才能が開花するかもしれませんよ」(競馬誌ライター)

 初めての1000m、そして直線競馬を迎えるオールアットワンス。母シュプリームギフトは函館SS(G3)2着など、スプリント路線で活躍した快速馬で、近親馬もほとんどが1200~1400mが守備範囲だ。

 一方、父のマクフィは現役時代にイギリスの2000ギニーとフランスのジャック・ル・マロワ賞というマイルG1を2勝したマイラーだった。注目は、その2勝がどちらも直線コースが舞台だったことだろう。

 母系からはスプリンターとしての血、父からは「直線競馬」の血をそれぞれ受け継いでいれば、自身初の「千直」で大駆けがあっても全く不思議はない。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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