受け継いだ「覇王の血」  “元祖イケメンホース”トウカイテイオーの不屈すぎる馬生と「奇跡」

トウカイテイオー 帝王 栄光の蹄跡(関西テレビ)

 元内閣総理大臣・小泉純一郎氏の次男で、自民党の小泉進次郎衆議院議員がここ数年注目を集めている。圧倒的なキャラクターとオーラを持っていた「覇王」の息子な上、甘いマスクとなれば期待を集めるのも当然である。

 競馬に話を変えるのは無理やりかもしれないが、この親子と似た関係性を持った競走馬父子が、かつて存在した。父は「皇帝」と称され、史上初の無敗で3冠(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)を制し、最終的にG1・7勝(歴代最多タイ)を達成したシンボリルドルフ。そして、そのルドルフの初年度産駒であり、G1を4勝したトウカイテイオーである。

1990年~91年、「皇帝の子」として期待を集める1頭であったトウカイテイオーは、デビューから連戦連勝。3戦目から6戦目までの単勝オッズは「1.3、1.2、2.1、1.6」と圧倒的な支持を集め勝利している。5戦目と6戦目は皐月賞・日本ダービーのクラシック2冠競走であり、その大舞台でもまったく危なげなく勝って、父に続く無敗の2冠を達成した。父子2代で無敗の2冠というのは、ルドルフ→テイオー以外にいまだ存在していない。とんでもない記録のはずなのだが、涼しい顔でやってのけるあたりがやはり”王”の名に相応しいといったところか。

 ただ、ケガもなくクラシックを走りきったルドルフとは違い、トウカイテイオーはここから、度重なる故障に悩まされることとなる。

 日本ダービーを3馬身差で圧勝したものの、レース後に骨折が判明し3冠目の菊花賞は断念。翌年復帰を目指し、リハビリと調整に時間を費やすこととなってしまった。

 翌年に復帰したトウカイテイオーは、大阪杯を騎手が追うまでもなく完勝。完全復活を示すとともに、当時長距離戦線において絶対的な強さを誇ったメジロマックイーンと天皇賞春で対決する道を選ぶ。このレースは日本中の注目を集め、新聞には「世紀の対決」という文字がおどった。

 結果は、メジロマックイーンが連覇を果たす圧勝。1番人気だったトウカイテイオーは5着に惨敗するとともに、またしても骨折が判明。休養せざるを得なくなった。

 復帰戦は、その年の天皇賞・秋だったが、ハイペースに付き合ったのがあだとなり7着。いよいよテイオーにも暗雲が立ち込めたかのように思えてならなかった。

 だが、次戦のジャパンカップで、その想像は簡単に裏切られることとなる。10.0倍という生涯最低オッズながらも、トウカイテイオーは外国馬ナチュラリズムとの競り合いを制して勝利。しかも、イギリス二冠牝馬のユーザーフレンドリー、全豪年度代表馬のレッツイロープなど「史上最強メンバー」と称された国際競走での勝利によって、トウカイテイオーは再び日本競馬の頂点に君臨することになった。

 だが、ファン投票ダントツの1位で臨んだ有馬記念では、体調不良もあってか終始後方で生涯最低の11着。年明けには左中臀筋を痛めた上、またしても骨折が判明。テイオーはその後、レースから遠ざかることとなる。

 復帰したのは、前年以来、364日ぶりの有馬記念だった。ウイニングチケット、ビワハヤヒデなどの新世代、その年のジャパンカップを勝利していたレガシーワールドなど一流馬そろい踏みの中で、陣営はトウカイテイオーに不安を抱いていたそうだ。1年ぶりのレースでは、まともにレースをこなすことすら難しい場合もある。

 ただ、トウカイテイオーは自分がレースに出る日をわかっているかのように、当日になって光り輝く馬体に変貌。またがった瞬間、鞍上も勝利を確信したという。

 レースは、ねばるビワハヤヒデを押さえ込んでトウカイテイオーの勝利。ほぼ1年ぶり、しかもG1レースでの勝利は、競馬に関わるあらゆる人間の度肝を抜いた。この364日ぶりのG1勝利は、いまだにJRA記録である。想像を絶する「奇跡の復活」に、当日の中山競馬場は興奮のるつぼと化した。

 翌年も現役の予定だったが、やはり骨折が判明し、ついに引退。東京競馬場で引退式の後に種牡馬となる。

 長いたてがみ、細くまっすぐ伸びた額の流星と顔立ち、しなやかな馬体は極めて高い評価を受けており、現在でもネットで「元祖イケメンホース」といわれている。「強すぎて退屈」とすらいわれた父・ルドルフとは違い、テイオーは常に自身の故障と戦いながら不屈の闘志を燃やした馬として、多大なる人気を集めた。父と同じく顕彰馬となり、殿堂入りしたのも当然である。

 そして、ルドルフ→テイオーに続く”3代目”を産むことは最後まで叶わぬまま、25歳でこの世を去った。今は天国で、まぎれもなく”最強の親子”が再会しているかもしれない。

 ちなみに、競馬ゲーム『ウイニングポストシリーズ』(コーエーテクモゲームス)では、スーパーホース(架空の競走馬)の1頭に「サードステージ」がおり、トウカイテイオーの仔として登場する。競馬ファンとしても、特別な血のつながりを夢見ずにはいられない存在であることを示す、いい例である。

GJ 編集部

真剣勝負の裏にある真実に切り込むニュースサイト「GJ」の編集部です。これまで作成した記事は10000本以上。競馬歴10年超えの情報通が業界の「しがらみ」を取り払った「本音」や「真実」にも臆することなく、他のサイトとは一線を画したニュース、サービス提供を行っています。

真剣勝負の真実に切り込むニュースサイト「GJ」

Twitter:@GJ_koushiki

Instagram:@goraku.horse.racing0505

関連記事

競馬最新記事

人気記事ランキング 23:30更新

競馬

総合

重賞レース特集
GJ編集部イチオシ記事
SNS