福永祐一「壁騎乗」でタイトルホルダー惨敗……元JRA安藤勝己氏「タメて相手を待つような競馬が合ってない」惨敗にトドメを刺したのはもう一人の刺客
あまりにも不本意な結果だった。
秋の3日間開催も最終日となった20日、中山競馬場で行われた菊花賞トライアル・セントライト記念(G2)は、9番人気アサマノイタズラが優勝。今回が初騎乗だった田辺裕信騎手の好騎乗も光った。
「まさか勝ち切ってくれるとは。ちょっとビックリしました。ゴーサイン出してからの反応すごくよくて、正直、余裕残しの今日だったので、いい形で本番にいけると思います」
レース後に田辺騎手の口から出たのは、パートナーの勝利に驚くコメント。鮮やかな勝利に導きながらも、ここまでの走りは本人も想定外だったのだろう。
そんなアサマノイタズラならぬ“タナベノイタズラ”の前に、よもやの惨敗を喫してしまったのが1番人気タイトルホルダー(牡3、美浦・栗田徹厩舎)だ。弥生賞(G2)を勝利に導いた横山武史騎手とのコンビで挑むも13着に敗れた。
日本ダービー(G1)では力及ばず6着に敗れたとはいえ、セントライト記念に出走していたメンバーでの実績は最上位。弥生賞と皐月賞(G1)で好走した中山の舞台で大誤算が待っていた。
「マークされる立場で厳しい展開でした。直線も進路がありませんでした」
そう振り返ったのは横山武騎手。コメントでも触れているように、大きく響いたのは勝負所で進路をなくしてしまった誤算である。2着のソーヴァリアントと同じような位置取りだけに、不利がなければここまでの惨敗とならなかったのではないか。
14頭立てで行われた芝2200mのレース。ワールドリバイバルが先手を主張してハナに立ち、タイトルホルダーは2番手からの追走。ここまではこれまでのレースぶりとほぼ同様で、あとは進路が開くのを待つだけだった。
しかし、好事魔多しとはまさにこういうこと。隊列が落ち着きそうなレース展開をぶち壊したのが、福永祐一騎手のルペルカーリア。前半600mを過ぎた辺りで外目を進出して2番手までポジションを押し上げると、タイトルホルダーを交わして内へ入り込む。この時点ですでに“伏線” は張られていた。
その後もタイトルホルダーの横山武騎手は、先行争いに巻き込まれるのを嫌ったのか、積極的に動くことはなかった。いや、むしろすでに動けるだけのスペースが前になかったともいえる。
それでもここまで溜めた脚を炸裂さえできれば、チャンスはまだ残されている。最後の直線に入って、進路を確保できればゴーサインを出すだけ。一呼吸、二呼吸置いて、前が開くのをひたすら待ち続けたものの、最後までVロードを見つけることができなかった。