JRA【スプリンターズS(G1)展望】叩かれ「上昇」レシステンシアVS春秋スプリント王狙うダノンスマッシュ!逃げ馬揃った秋のG1開幕戦は「激流」必至!?
10月3日には、中山競馬場で秋のG1開幕戦、スプリンターズS(G1)が行われる。グランアレグリアが直線一気の末脚を披露してから1年。今年は先行力が魅力のあの牝馬が中心となりそうだ。
2年前の阪神JF(G1)でレコード勝ちを収めたレシステンシア(牝4歳、栗東・松下武士厩舎)が充実の4歳秋を迎えようとしている。
2歳女王に輝いた後、3歳春は桜花賞(G1)とNHKマイルC(G1)で1番人気を裏切る2着。昨秋はマイルCS(G1)で古馬に挑んだが8着に敗れ、4歳となった今年はスプリント路線に矛先を向けてきた。
今年初戦は、久々に距離を短縮し臨んだ阪急杯(G3)。阪神芝1400mのコースレコードとなる1分19秒2をマークし、逃げ切り勝ちを収めた。
続く高松宮記念(G1)は初のスプリント戦。18頭立ての16番枠から先行馬を前に見る形で中団外目につけると、直線ではダノンスマッシュ、インディチャンプと3頭の争い。最後はダノンスマッシュにクビ差及ばなかったが、スプリンターとしての適性は十分見せた。
その後は再び距離を延ばしヴィクトリアマイル(G1)でグランアレグリアに挑んだが、ここでも大外18番枠と枠順に恵まれず。武豊騎手を背に外目3番手の好位にとりつき、いい形で最後の直線を迎えたが、速い時計が出る馬場で切れ負けする形の6着に沈んだ。
そして前走は2度目のスプリント戦となったセントウルS(G2)。2番手の内で先行し、直線早めに先頭に立つと、ピクシーナイトの急襲をクビ差しのいで重賞4勝目を挙げた。
逃げ馬がそろった今回はハナ争い激化が予想され、人気を背負う分、無理に出していかないだろう。4~5番手からの競馬が濃厚か。秋初戦を勝利で飾り、充実ぶりが光る今なら、ある程度前目の位置につければ好勝負をしてくれるだろう。
陣営は一度使っての上積みを強調していて、前走以上のパフォーマンスを期待できそう。高松宮記念をクビ差で逃した半年前の悔しさを晴らすときがきた。
そのレシステンシアを高松宮記念で破ったのがダノンスマッシュ(牡6歳、栗東・安田隆行厩舎)だ。
4年前の朝日杯FS(G1)5着に始まり、G1ではなかなか勝てず。昨年のこのレースで2着に敗れたときには、デビューからG1の連敗は「8」に伸びていた。
ところが、昨年12月の香港スプリント(G1)で地元の快速馬たちを蹴散らすと、続く高松宮記念も中団から差し切ってG1を2連勝。それまでの勝負弱い姿は消え去っていた。
春2戦目は再び香港に遠征。高松宮記念から中3週でチェアマンズスプリントプライズ(G1)に臨んだが、ここは6着に敗れた。もともと休み明けの方が高いパフォーマンスを発揮できるタイプで、中3週での海外遠征はさすがに堪えたか。
そういう意味で、今回は十分間隔を空ける5か月ぶりのぶっつけでG1・3勝目を狙いにきた。これまでで最も長いレース間隔にはなるが、8月下旬に帰厩後は坂路で追い切りを重ねており、心配は無用だろう。
1週前には栗東の坂路で4F50秒0の1番時計をマーク。安田隆調教師も「文句なしの調教」と好感触をつかんでおり、13年の父ロードカナロアと同じ春秋スプリント制覇を見据える。
古馬2頭の間に割って入る筆頭候補はピクシーナイト(牡3歳、栗東・音無秀孝厩舎)だろう。
今年1月のシンザン記念(G3)を逃げ切ったものの、NHKマイルCで12着に敗れたように、本来の適性はスプリンター寄りとみられる。実際、夏以降はスプリント路線に専念し、CBC賞(G3)とセントウルSで古馬相手に2着とその適性を示した。
デビューから手綱を取る福永祐一騎手は、「来年(2022年)はすごい馬になっているかもしれない」と、その将来性を高く評価している。その期待をいい意味で裏切って、一足早くスプリント界の頂点に立つ可能性は十分あるだろう。
ただし、気になるのは前走から中2週というやや詰まったローテーションだ。同じく中2週で臨んだ3走前のNHKマイルCが案外な結果だっただけに、間隔は空けた方がいいタイプかもしれない。
レース展開のカギを握るのは、やはり逃げ馬の存在だろう。今年はモズスーパーフレア(牝6歳、栗東・音無秀孝厩舎)、ビアンフェ(セ4歳、栗東・中竹和也厩舎)に加え、メイケイエール(牝3歳、栗東・武英智厩舎)の出方にも注目が集まる。
昨年の高松宮記念を繰り上がりで優勝したモズスーパーフレア。その後は勝利こそないが、前走の北九州記念(G3)では、実質トップハンデの56.5kgを背負って3着とまだまだ衰えていないところを証明した。
得意の中山を舞台に、松若風馬騎手と今度こそ先頭でゴールを駆け抜けたい。
1年前に、そのモズスーパーフレアに執拗に絡んでいき、共倒れという結果を招いたビアンフェ。昨年はゲート入りを嫌がり、発走が大きく遅れる原因を作ったことでも話題を振りまいた。
その後はセン馬となり、休養明け初戦のオーシャンS(G3)で3着に好走。さらに、函館SS(G3)では自らハイラップを刻んで逃げ切り勝ちを収めた。今年は大人になった姿を見せることができるか。
昨年乱ペースを生んだ2頭を抑えてハナに立つならメイケイエールしかいない。
前走のキーンランドC(G3)は1番人気に支持されたが7着に沈み、G1以外では初黒星を喫した。二の脚を使ってハナを奪うまでは想定内。ペースも決して速くなかったが、直線並びかけられるとあっさり失速してしまった。それでも1着馬との差は0秒3と大きく負けたわけではない。
「代打の神様」池添謙一騎手に乗り替わっての走りに改めて注目が集まる。日本人騎手で唯一じゃじゃ馬オルフェーヴルの背中を知る池添騎手。メイケイエールに初めて跨がった1週前追い切りで「難しい女の子」と評しながらも、「任されたジョッキーとして応えたい気持ちはある」と意気込みも見せた。
レースをかき乱して終わるのか、それとも人気落ちでの激走はあるか。人気馬以上にその走りは注目を浴びる。
ジャンダルム(牡6歳、栗東・池江泰寿厩舎)は、スプリント路線に転向した近2走で善戦。スタートを決めて、流れに乗ることができれば面白い存在だ。クリノガウディー(牡5歳、栗東・藤沢則雄厩舎)は、休み明けで臨んだ前走のセントウルSで3着。叩き良化型で、上積みが期待される。
この他には、昨年最後方から3着に追い込んだアウィルアウェイ(牝5歳、栗東・高野友和厩舎)。今年もハイペース必至でチャンスは十分あるだろう。今夏のCBC賞をレコード勝ちしたファストフォース(牡5歳、栗東・西村真幸厩舎)は目下の充実ぶりが光る。
秋のスプリント王に輝くのは果たしてどの馬か。スプリンターズSは10月3日の15時40分に発走予定となっている。